デジタル庁構想 不信の払拭が先決だ

2020年9月26日 08時01分
 菅政権がデジタル庁創設の動きを本格化させている。デジタル化の遅れが行政効率の足かせになっている点は否定できない。ただ情報管理をめぐる懸念は極めて強く、国民の不信払拭(ふっしょく)が先決だ。
 デジタル庁は、各省庁や自治体がバラバラにシステムを構築していたデジタル情報網の一元化が最大の目標だ。蓄積した情報をまとめて管理・運用し、行政の効率化を促す。年内に具体策をまとめ年明けの国会に関連法案を提出、来年度の創設を目指す。
 国連の調査によると、世界の電子政府ランキング(二〇二〇年)で日本は十四位だ。首位のデンマークや二位の韓国に大きく水をあけられている。国はこの差が現金給付をめぐる混乱につながったとみており、デジタル化推進を急加速させる直接の動機となったのは間違いないだろう。
 現金給付では、マイナンバーカードの取得率の低さが給付遅れの一因になったとされる。だが、なぜ国民はマイナンバーカードの取得に消極的なのか。国は改めてその理由を認識すべきだ。
 多くの国民は個人情報を行政に把握されることに大きな抵抗を感じている。国が目指す銀行口座とマイナンバーカードのひも付けが実現すれば、所得や購入履歴など詳細な情報が一元的に把握される可能性がある。
 情報漏えいの恐れも常に付きまとう。NTTドコモやゆうちょ銀行では現在、電子決済をめぐる大規模な不正出金問題が起きている。さらに高齢者を中心にデジタルが苦手な人々が生活上の不利益を被る懸念もある。
 新たな組織を立ち上げる前に、電子情報の保護の強化策や、国民を誰一人置き去りにしない具体的な方策を根幹から議論すべきではないのか。
 菅政権はデジタル化推進をテコに、省庁の縦割り行政の弊害にもメスを入れる構えだ。
 その姿勢は妥当だとしても、時限とはいえ新組織の設置は省益拡大の温床になり得る。権限をめぐる各省庁の綱引きの揚げ句、妥協的な組織ができるのであれば論外である。人事や予算、組織のあり方について、国民の立場に立ったリーダーシップを強く求めたい。
 デジタル技術の推進は確実に暮らしの利便性を高めるはずだ。ただ、その前に山積する課題と直接向き合う必要がある。不信が拭えないままでの船出は決して許されない。

関連キーワード

PR情報