気候危機が深刻化しつつあるいま、コロナ禍からの経済回復に際しては脱炭素を心がけねばならない。菅首相は就任会見で「脱炭素社会の実現」に取り組む意向を示した。その覚悟が問われる。
今月初め、地球温暖化防止にもつながる復興をめざそうと、オンライン形式の閣僚級会議が開かれた。日本政府が呼びかけ、96カ国が参加した。
日本が温暖化問題で前面に出るのは、23年前に京都であった国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)以来だ。今回の会議を機に世界の脱炭素化をリードするには、自らの取り組みの強化が欠かせない。
だが、安倍前政権が気候危機対策に腰を据えて取り組んできたとはいいがたい。
たとえば今春、温室効果ガス削減の国別目標を据え置くことを決めた。国連が各国に目標の強化を求めたのに対し、主要排出国の中では日本が真っ先に拒む姿勢を示したことに失望の声が上がった。また、石炭火力発電に固執するあまり、脱石炭をめぐる政策も欧州などに大きく先行されている。
安倍前政権の継承をうたう菅氏が、温暖化対策の消極姿勢まで引き継ぐようでは困る。
すでに各地で異常気象や自然災害が相次ぎ、気候危機は現実のものとなりつつある。生命や財産が脅かされる状態を放置していては、いずれ社会や経済に大きな打撃となるだろう。
だからこそ世界は、「今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」というパリ協定の目標達成に向け、社会や経済の脱炭素化を急いでいる。排出量が世界最大の中国も「2060年までの実質ゼロ」をめざすことを表明した。
いま、コロナ禍からの復興を対策強化の好機にすべきだとの意識が各国に広がっている。
日本では経済活動の停滞で総発電量が落ちたことなどで、再生可能エネルギーの割合が20%を超え、30年度の政府目標に達する水準だという。これが一時的なものとならぬよう、気候危機対策を加速させるべきだ。
幸い、安倍前政権の最終盤には、政府の姿勢にわずかに変化の兆しが見えた。経済産業省が7月、石炭火力について、輸出支援の厳格化や国内にある効率の悪い旧式の発電所の削減を決めたのは、その一例だ。
霞が関に芽生えた動きを本格的な政策転換につなげるには、政治がリーダーシップを発揮する必要がある。
折しも、さまざまな政策の土台となる地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画が見直される。菅政権がいかに本気かを示す絶好の機会である。
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