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 死者・行方不明者63人を出した御嶽山(おんたけさん)(長野、岐阜県境)の噴火から、あすで6年になる。当日は好天の土曜日で、山頂付近には多くの登山客がいた。

 戦後最悪となった火山災害の後、気象庁は全国の観測体制を強化した。それでもなお、現在の知見や技術で噴火を正確に予知するのは難しい。

 日本は111の活火山がある世界有数の火山国だ。噴火のリスクを正しく認識し、考えられる手当てをあらかじめ講じておくことで、少しでも被害の軽減につなげたい。

 御嶽山は最も低い「警戒レベル1」で噴火した。犠牲者の遺族らは、火山性地震が頻発していたのに気象庁がレベルを引き上げなかった落ち度があるなどとして、国などを相手に賠償を求める訴訟を起こしている。

 この噴火後、気象庁が重点的に常時監視する火山は50に広がり、監視カメラや地震計が増設された。前兆をとらえ、得られた情報を地元にすみやかに提供・共有するとともに、突然の噴火にも備え、日ごろから意識の涵養(かんよう)に努める必要がある。

 15年の活火山法の改正で、常時監視対象の火山周辺の190市町村に、噴火時の情報伝達体制や避難計画づくりが義務づけられた。しかしこれまでに策定を終えたのは7割にとどまる。作業を急ぎ、火山防災の向上に努めなければならない。

 火山災害火砕流や溶岩流、噴石など多岐にわたるが、影響が広範囲に及ぶのが降灰だ。

 政府の中央防災会議の作業部会はことし3月、富士山が大規模噴火した場合の火山灰による首都圏の被害予測を公表した。富士山の最後の噴火は1707(宝永4)年で、以来300年以上沈黙している。

 作業部会はこのときと同程度の噴火を想定。最悪の場合、降灰は西南西の風に乗って東京都心を直撃し、7都県に影響が広がる。その量は東日本大震災で出た廃棄物の約10倍にのぼり、首都圏ではインフラ機能が低下し、鉄道が運休、道路は走行不能になるという。

 検討すべき事項は多岐にわたる。例えば、住民に避難所などへの移動を呼びかけるか、それとも自宅にとどまることを推奨し、救援物資を届けるか。その場合どんな方法をとるか。医療機関の支援、灰の処分場所の確保、首都機能をバックアップする態勢の整備――。政府あげての取り組みが欠かせない。程度の差はあれ、他の火山についても同様の作業が求められる。

 火山は、景勝地や温泉、豊かな土壌などの恵みをもたらす存在でもある。個性に富むそれぞれの火山の観測を深めることを通じて、共存の道を探りたい。

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