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（藤堂）俺のことを思って書いてみてくれないか？
実は…　出征することになったんだ。
（鉄男）えっ？
歌って心の支えになるだろ？
もし　村野と古山が作った曲と共に行けたらこんなに心強いことはない。
（裕一）うっ！　んん～！
あれ？　大将　おはよう。　早いね。
う～ん　邪魔！　んん…。
なあ　裕一…。
うん？　何？
俺…　もう一回　書いでもいいか？
えっ？　えっ？
♪～
♪「泣いて　生まれて　響く命」
♪「きっと嬉しくて　笑っているんだ」
♪「僕らはきっと　出逢うでしょう」
♪「手を引き　背を押し　出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って　ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を　超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで　響くはエール」
♪「朝も昼も夜もずっと　そこにある」
♪「暗闇にほら響け　一番星」
♪「愛する人よ親愛なる友よ」
♪「星影に響くはエール」
あっ　お義兄さんですか？　あの…村野鉄男が新しい詞を書いてくれました。
是非　武田さんに見て頂きたいんですけど。
はい…　はい　分かりました。
ありがとうございます。よろしくお願いします。　失礼します。
（音）次は　採用されるといいね。よし…。
いや…　三羽ガラスでやるって決めたからね　絶対にかなえたい。
うん。
よし！　よしよし　よしよし　よしよし！
（智彦）入ります！・（武田）入れ。
お待たせしました。
この度は　再度の機会を頂き本当にありがとうございます。
最初に申し上げます。
今回の詞も　武田さんの期待にはお応えできてないかもしれません。
馬という言葉も一度しか出てきません。
（武田）じゃあ　なぜ来たんです？
今回の歌詞は恩師にささげるつもりで書きました。
先生は　もうすぐ戦地に行かれます。
奥さんと小さな息子さん残してお国のために旅立ちます。
私は　これまで…戦いに行く人の心というものを想像したことがありませんでした。
ですが　今回は　少しでもその心に近づきたいと願いながら祈りながら　この歌詞を書きました。
はあ…。
これでいきましょう。
大将…。
ありがとうございます！
♪～
（久志）♪「あゝあの顔で　あの声で」
♪「手柄頼むと　妻や子が」
♪「ちぎれる程に　振った旗」
♪「遠い雲間に」
♪「また浮ぶ」行ってまいります！
ばんざ～い！（一同）ばんざ～い！ばんざ～い！　ばんざ～い！
♪～
♪「あゝあの山も　この川も」
♪「赤い忠義の　血がにじむ」
♪「故国まで届け　暁に」
♪「あげる興亜の　この凱歌」先生…。
どうかご無事で。
♪「あゝあの顔で」
昭和１５年　「暁に祈る」が公開され大ヒット。
ついに福島三羽ガラスが世に出たのです！
（保）いらっしゃい。どうも。
ごめん　打ち合わせ長引いた。ううん　全然。
（恵）新曲の打ち合わせ？３人とも　すっかり売れっ子ね。
おでん屋も　そろそろ　しまいかな。
寂しくなるな～。
（保）あっ　そういえば「暁に祈る」の映画　見てきたよ。
あっ　本当ですか！？それとさ…気のせいかもしれないんだけどもしかして　久志君…。
あっ…。
♪「ちぎれる程に　振った」
やっぱり…。フフフフ。
でも本当に　いい曲よね。私　あの歌詞　好きよ。
鉄男さん　苦労した甲斐があったわね。ありがとうございます。
今や　兵隊の見送りといえば「暁」だもんな。
出征には欠かせない一曲だ。
やや感傷的ではありますが…出征をしたら生きては帰らないという覚悟を感じさせる。
国民の戦意を高揚させるすばらしい歌詞だと思います。
これ　歌詞。うん！
（克子）お願いいたします。（晴恵）はい。お願い。
お願いいたします。はい。　お願いいたします。
（薫）はい。お願いいたします。
（吟）お願いいたします。
ねえ　関内さん　「暁に祈る」って妹さんのご主人が作曲されたんですって？
ああ…　はい。すごい！
「露営の歌」も作ってるんですってよ！古山裕一さん。
へえ～　すごい！（克子）「露営の歌」も「暁に祈る」も忠君愛国の精神にあふれたすばらしい曲です！
義弟さんは　ご立派だわ～。
婦人会の曲も作ってもらったらどうでしょう？
婦人会の曲？　いいですね！ねえ？　関内さん。
あっ…　お茶　いれてきますね。
関内さん？
はい。　続けますよ。はい！
お願いします。
（岩城）違うわ！ここは　こうちゅうて言うとるだら！
（五郎）はい！
（光子）でも…　随分　手慣れてきたわよね？
（梅）最初に比べればね。うん！
あの…　ここは　これで大丈夫ですよね？はあ？
あっ…　いや…。
これで合っとる。
よかった。
岩城さん　五郎ちゃんのこと気に入っとるみたい。
随分　仕事も早うなったし仕上がりだって丁寧だし。
もう　そろそろ　いいんじゃない？
いかん！　甘やかすのは本人のためにならんから。
お～　怖っ。　フフッ。
♪～
まだ　やっとったの？
（五郎）うん。とにかく体にたたき込みてえんだ。
目　つぶってでもできるようにならねえと。
そんなにできとったら岩城さん超えちゃいそう。
ちょっと　やってみりん。えっ？
目　つむって。
頑張りんね。
丸井と申します。はい。
この度はニュース歌謡という企画のご相談に伺いました。
ニュース歌謡ですか？はい。
戦果の盛り上がりを歌で伝えるラジオ番組です。
国民の士気が上がるような曲を是非！先生の得意分野ですよね？
い…　いや…　得意かどうかは。
またまた　ご謙遜を！愛国歌謡といえば古山裕一でしょう。
いえいえ　僕は　もう　ただ頂いた仕事を精いっぱい頑張るだけです。
いやいや…　もう　先生以外考えられません。　お願いします。
拝見します。
♪～
♪「雪のふる夜はたのしいペチカ」
♪「ペチカ燃えろよ　お話しましょ」
♪「むかしむかしよ　燃えろよ　ペチカ」
発表会？（弘哉）はい。
目標があった方がやる気も増すと思うんです。
ああ…　確かに。
やろうか　発表会！
（子どもたち）やった～！（笑い声）
音先生も歌ってくれませんか？えっ？　私が？
はい。発表会で？はい。
（シズ子）先生の歌　聴きたい！（佐智子）私も聴きたい！
（澄子）私も聴きたい！（節子）聴きたい！
え～？（華）お母さん　やろうよ。
え～？
え～？　先生の歌　聴きたい！先生の歌　聴きたい！聴きたい！
聴きたいよね？え～？
え～？やってほしい～！
へえ～　やったらいいじゃん。生徒たちも絶対に喜ぶよ。
でも　声が出るかどうか。お母さんの歌　聴きたい！
うん。　お父さんもお母さんの歌　聴きたいな。
え～？
頑張るか！おおっ！
やった！　お母さんの歌　楽しみ！楽しみだね～。
華　お母さんの歌ね　すばらしいんだよ。
お父さん　聴いたことあるの？そりゃ　もちろんあるよ！
お父さんだもん！　羨ましいでしょ。
ずるい～。ずるくない。
華も早く聴きたい！聴きたいね。　早く。
楽しみだ。　楽しみだ。早く。　早く。
昭和１６年１２月　太平洋戦争が開戦したのはこの数日後のことでした。
楽しみだね　お母さんの歌。