第9話
俺はとりあえず短剣スキルを見ていく。
……短剣術に合わせて解放されたジョブが、盗賊、暗殺者なので短剣スキルもそれに合わせたものが多いな。
「どれがいいかとか分かるか?」
「んー、わかんない!」
サリアはにこーっと無邪気に笑う。
……アドバイザーのあまりの無能っぷりに嘆きたくはなるが、ゲームの攻略情報をはじめから調べたって面白くはない。
この、
【盗賊:ぬすむが使用可能。またステータス補正あり】
【暗殺者:気配遮断が使用可能。またステータス補正あり】
これが新しく開放されたジョブか。
こちらは、最初から解放されているジョブとはまた違うのだろうか? そこまで大きな差はないようだが。
「わぁ! 盗賊と暗殺者もでたんだ!」
「珍しいのか?」
「珍しいっていうか、どっちもステータスとレベルが高くないと出ないって聞いたことがあるよ!」
……ジョブの解放条件にはステータスも関係するのか。
もしかしたらスキルにも同様の条件があるのかもしれない。
アイテムを盗むスキルは、ゲーマーとしては結構魅力的だ。
ゲームによっては【盗む】でしか盗めないアイテムとかもあるからな。
すべてのジョブがステータスへの補正も加えてくれるようだな。
俺はジョブを2つつけられるので、いずれはどちらもつけたいが……どうしようか。
次に俺はスキルを確認していく。
状態異常攻撃が多いな。毒、麻痺、眠り、か。……これらの状態異常攻撃はゲームによって因りけりなんだよな。
「サリア、状態異常攻撃って強いのか?」
参考程度に聞いてみる。この世界は普通のゲームと違って、セーブ&ロードがない。
試して弱くてもロードできない。
俺が聞くと、サリアはにこーっとわらった。
「わかんない!」
「そうか」
仕方ない。スキルは試してみるしかないだろう。
どれにするかの前に、俺はジョブを再確認する。
「サリア、盗賊の盗むでレア武器とか盗めると思うか? あるいは聞いたことあるか?」
「わかんない! 聞いたことはあるけど保証はできないかな?」
そうだよな。
他の迷宮でたくさん盗めたとしても、この迷宮で盗めるとも限らないからな。
無難に暗殺者にしておこうかね。
盗賊と迷ったのだが、現状盗むがそこまで強いかどうか分からない。
どの魔物がどんなレアアイテムを持っているか分からないからな。
この迷宮の攻略情報があり、例えばゴブリンから低確率でレア装備が入手できるとか分かっているのなら、盗賊を試すのだが、分からない以上純粋に強そうな暗殺者のほうがいいだろう。
気配遮断を使えば、より魔物への奇襲もうまくなるだろうしな。
暗殺者はほぼ確定として、スキルをずらりと眺めていた。
共通スキル的な感じで獲得できる中に、非常に優秀なものがあった。
【鑑定:魔物の情報を確認できる。弱点、ドロップアイテム、盗めるアイテムなどが判明する。また所持しているアイテムの情報、宝箱の中身が分かる】
……これは一枠を使ってでも取りたいスキルだ。
ただ、今ではない。
魔物から迷宮ポイントが稼げなくなったところで、このゲームは詰みだ。
ゲームが詰まないように、戦闘能力を重視してスキルやジョブを選択していく必要がある。
もちろん、魔物から絶対にレア装備が盗めるというのなら、鑑定、盗賊を選択する価値はある。
……ただ、分からないからな。その二つを選択していきなり詰む、ということはないだろうが、伸びが期待できない可能性もある。
もちろんロマンはあるんだけどな……。
悩んだ末、俺は【暗殺者】、【パラライズダガー】の獲得を行った。
「やったね! これでまた強くなるね!」
「そう、だな」
あとは麻痺がどの程度魔物に通ってくれるかだ。ボスモンスターにまで通るとは思っていないが、雑魚狩りが楽になればいいなと思っていた。
「そういえば、ボスモンスターっているのか?」
「いるよ! ボスモンスターは10階層にいるね! もしかしたら、この迷宮はそれで終わりかもしれないし、頑張ろうね!」
「10階層、か」
とりあえずの目標は10階層の攻略だな。
早速ジョブとスキルを試したかった俺だが、体が重たかった。
……そりゃあそうか。
俺は足と腕に感じる倦怠感に顔をしかめる。
俺は不登校気味の高校生でロクに運動なんてしていないからな。
いきなりあんだけ動けば、そりゃあ体も疲れるというものだ。
「そうだ、プロテインでも飲んでおくか」
「プロテイン?」
「ああ、筋肉をつけるための飲み物って感じだ。生身の身体も鍛えないと強くなれないんだろ?」
「そうだね! それは大事だね! プロテイン飲んだほうがいいよ!」
なるべくわかりやすく伝えると、サリアは納得した様子で頷いた。
ほとんど家に帰ってこない親父の趣味が筋トレなので家にはたくさんのプロテインがある。
サリアとともに俺は階段を上って自宅へと戻ってきた。
今日も誰も帰っていないようだな。まあ、親父は海外出張で、妹は兄が大嫌いなので春休みになっても帰省することはない。
まあ親父が家にいれば一応戻っては来るんだけどな。
俺はひとまずプロテインを飲むため、粉を探す。賞味期限は……大丈夫だな。結構持つんだな。俺はプロテインを取り出し、牛乳で溶かして飲む。
ココア味のもので非常に飲みやすい。それを飲んでいると、サリアがジーっと見てくる。
「私も飲んでみたい!」
「分かったよ……」
サリアが飲めるように小さなカップを探してそこに注いだ。
……なんか、ペットでも飼っている気分だ。
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