おい、それのどこが救済だよ
僕は自身の両手を見下ろす。
すこしだけ透けているな。
それに加えて、視界がちょっとぼやけている。
思念体……というやつだろうか。
いまの僕は、かつて
まあ、さすがにさっきのは離れ業だったからな。
僕の肉体までは転移できなかったのかもしれない。
いまの僕は、俗に言う思念体。
意識と肉体を切り離した存在だ。
――ま、それでも充分だろう。
あいつを倒すことができればな。
「アリオス・マクバ……! どうやってここに……!?」
アルセウス救済党のトップ3――ジャック・イレーグは真っ青な顔で後ずさっている。
僕は警戒心をなくさぬまま、低い声で言った。
「いや……いちかばちかでスキルを使ったらこうなった」
「いちかばちかで!? 影石も使わずに!? どう考えてもおかしいだろ!!」
いやいやいや。
自分だって思念体を飛ばしてきたくせに、なにを驚いているんだか。
驚くといえば、この場所も驚愕の一言である。
「……なるほどな。これじゃ、いくら捜しても本拠地が見つからないはずだ……」
ジャック・イレーグを起点にして、僕が転移してきたこの場所は。
「アルセウス王国の王城……まさかおまえたち、こんなところにいたとはな」
レイはさっき、アルセウス救済党とレイファー第一王子との関係を匂わせていた。
もし仮に王国側がアルセウス救済党と裏で結託していたとするならば……これは尋常ならざる事態だ。
国がテロ組織と手を取り合っていたことが知られれば、パニックどころの話ではない。
それに……
僕は気づいてしまったんだ。
部屋のそこかしこに大きなポッドが置かれており、そのなかに女の子が入っている。緑色の液体に包まれているが、呼吸の心配はないようで、すやすやと穏やかに眠りこけている。
これぞ、連中の言っていた
「さあ、いい加減、詳しく教えてもらおうか」
厳しい目つきで問いかける僕。
「おまえたち……この国で、いったいなにをしようとしている」
「ふん。決まっているだろうが。まさしく我らの党名通り――アルセウス王国を救済するためよ!!」
「は……?」
「おまえも痛感したのではないか? この国の人間は腐っている。富と名声に溺れ、自身のためならば他者を傷つけることも厭わない。古き良きアルセウス国家は――遠い過去のものとなってしまった」
「…………」
僕は瞳を閉じ、これまでの人生を思い出す。
外れスキル所持者というだけで迫害してきた人々。
みずからの利害を優先し、血縁者すら追い出した父親。
自分の欲のために暴れまわった元孤児。
そして……僕がダドリーを倒したことで、手のひらを返したように歓声をあげてきた一般人たち。
僕はゆっくり目を開けると、否定も肯定もせず、静かに問いかける。
「……だから、おまえたちが変えようってのかよ。アルセウス王国を
「その通り。さもなくば、我が国はたちまちのうちに周辺諸国に呑み込まれることとなろう」
……ありえない。
飛躍しすぎである。
「だが、よく考えたらアリオスよ。おまえも国の被害者ではないか。家族に追放され、さぞ苦しい思いをしたのだろう?」
「…………」
「実力は充分。どうだ、ぜひ我が党に――」
「結構だ」
奴の誘い文句を、僕はきっぱり断った。
「たしかに苦しい思いはしてきたよ。だけど……それと同時に、僕は多くの人に恵まれてきた。レイにカヤ、メアリー……みんなの想いまでをも踏みにじることはできない」
スキル《チートコード操作》発動。
火属性魔法の全使用。
僕は右手に魔力をこめながら、決然とジャックに叫んだ。
「おまえたちのそれは救済活動じゃない。ただのテロ行為だ。全力で……止めさせてもらう!!」
「ふん。青二才が……生意気な口を……!」
ジャックは全身に闇色のオーラを携えながら、血走った瞳で構える。
「アルセウス救済党が三番手……ジャック・イレーグ。我が強さにとくとひれ伏すがよいわ!!」
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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