おい、すごいことが起きたぞ
「アリオス・マクバ……! 貴様の気配察知能力は、いったいどうなっている……!?」
アルセウス救済党の言葉に、僕は肩を竦める他なかった。
「あんたも人のことは言えないと思うけどな。思念体だけを飛ばす異能……それも影石とやらの力ってところか?」
「ふん……」
僕の《原理破壊》のスキル取得のきっかけとなった、謎の紅石。
そしてアルセウス救済党の用いる影石。
両者については不明なことが多すぎる。いずれ時が許せば、女神に聞いておきたいものであるが。
だが、事ここに及んで、ひとつだけ判明したことがあった。
「……どうやら、事件そのものはまだまだ終わってないみたいだな」
ユーフェアス・アルド。
彼を捕らえたことにより、一連の事件はひとまずの決着を迎えた。
だが、そもそもの黒幕――アルセウス救済党の謎は残るばかり。
遠方から思念体を飛ばしてくるくらいだし、勢力としてはまだ元気がありそうだよな。
「ええ。残念ながら、まだ安心はできなさそうですね」
そう言いながら歩み寄ってきたのは、Aランクの冒険者――カヤ・ルーティスだ。
「特に幹部の3人について、まだまだ行方がわかっていません。この屋敷内でも捜しましたが……どうやらいないようですね」
「幹部メンバー3人……ですか」
「はい」
カヤいわく。
アルセウス救済党における絶対的存在――党首マヌーザ・バイレンス。
二番手と呼ばれる《同志A》。
そして三番手に君臨するジャック・イレーグ。
この3人が、アルセウス救済党におけるトップ3を飾っているようだ。
奴らの本拠地も不明だという。
結局、ここの屋敷も本拠地ではなかったみたいだしな。
ちなみに、同志Aだけ名前が判明していないらしい。
ギルドや王国軍が総出でかかっても身元すら判明しないとは、なかなかのやり手であると言わざるをえないだろう。
「だけど、ここにきて、事態は一気に収束に向かいそうだね」
そう言ったのはBランク冒険者のユウヤ・アルゼン。
「思念体だっけ? 普通じゃない姿みたいだけど……トップ3のジャック・イレーグがこの場に現れてくれたようだ」
なるほど。
わざわざ思念体を飛ばしてくるくらいだから、そこそこ地位の高い人物かもしれないとは思ったが……まさかトップ3のお出ましとはな。
色々手間が省けて助かるよ。
「ジャック・イレーグ……! 思い出しました……!」
ふいにエムが一歩前に進み出す。
「教えてください! あなたたちはなにを企んでいるんですか!? どうして私なんかを――人間でも道具にもなりきれない、こんな私を――なんで生み出したんですか!!」
「エムちゃん……」
レイやカヤが悲しそうな表情でエムを見つめる。
「…………」
たった一体、ウィーンだけは同情っぽい感情を覗かせていたのが印象的だった。
「ふん。どうもこうもない。私はただ、後始末をしにきただけさ」
「後始末だって……?」
悪びれる様子もないジャックに、僕は知らず知らずのうちに怒りを覚える。
「ああ。余計なことを喋られると困るんでね。そこの領主を口封じにきたのさ」
――なるほど。
思念体であっても、魔力やスキルの介入はできるのか。
いま思い返せば、女神も時を止めたり共闘してくれたもんな。
となれば、やることはひとつだ。
……成功するかはわからないが。
「悪いが、こいつには取り調べという重要な役割がある。始末するならその後にしてくれないか」
そう言いながら剣を構える僕に、ジャックはふっと嘲笑する。
「はっ、馬鹿め。先ほどの妨害は二度と通用せんぞ?」
「いや。いまからそちらへ行かせてもらう」
「……は?」
スキル発動。原理破壊。
選ぶ能力はもちろん転移。
青色の広がりが、僕の半径5メートルに展開される。そこの範囲内にはもちろんジャックも含まれる。
転移先は――いまジャックのいる場所。
ジャックの思念体を通じて、奴のいる場所に転移するという離れ技だ。
我ながらトンデモ理論だが、失敗したところでデメリットがあるわけじゃない。試す価値くらいはあるはず……
と。
僕の意識が一瞬だけ遠のき、そして我に返ったときには、まったく見知らぬ場所にいた。
「ア、アリオス・マクバ……!?」
そこには、思念体ではない本物のジャック・イレーグがいた。
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