おい、みっともなさすぎるんだが
★
――終わった。
僕は諦観の感情とともに、剣を鞘に収める。
アルセウス救済党の二人。
そして元剣聖リオン・マクバ。
両者とも、地面に突っ伏したまま動かない。
もちろん今回は《拘束》が目的なので、殺しまではしていない。だが足に大きなダメージを与えておいたので、たとえ意識が戻ったとしてもすぐには動けまい。
戦いの決着はついた。
あとは――
「ひいッ!!」
僕に睨まれたユーフェアス・アルドが、真っ青な表情で椅子から転げ落ちる。
「や、やややめんかおまえたち! ワシを誰だと思っておる!!」
最後は喚き散らすのみか。
とんだ大物領主である。
「く、くそ! こんなときに他のアルセウス救済党はなにをしておるのだ! ま、守れ! ワシを守るのだ!」
「――残念ながら、構成員はほぼ全滅しましたわ」
ふいに、聞き覚えのある声が部屋中に響きわたった。
視線を向ければ、やはり見覚えのある人物――レイミラ・リィ・アルセウスの姿が。
たぶん、意図しているんだろうな。
さっきまで目深に被っていたはずの帽子を外し、姿形を明らかにしているのは。
「な、なななななななな!?」
今度こそユーフェアスは死にそうな顔をする。
「レ、レイミラ王女殿下!! な、なんで、こんなところに……!」
「あら。あなたが知る必要はありませんわ」
気づけば、レイの他にも、カヤ、ユウヤ、そしてウィーンまでがいる。
みんな無事だったようだな。
特にウィーンは見たことのない形状をしている。新しい《バトルモード》でも披露したんだろうか。遠目から見ても強そうだ。
「屋敷内にいる構成員は、私たちであらかた制圧しました。ユーフェアス・アルド。あなたを守る者はここにはいません」
「な、な……!!」
ユーフェアスがモタモタしている間に、レイは僕に小さく耳打ちしてきた。
(アリオス。エムちゃんの奴隷紋は……?)
(ああ。心配するな。問題ない)
抜け目のないお嬢様だ。
素直に感心する。
奴隷紋というのは、相手との《契約》がなくなった時点で消滅する。
エムはさっきユーフェアスから解放の言付けをもらったので、じきに奴隷紋は解消されるだろう。
ま、このままユーフェアスを拘束したとしても、エムが奴隷紋を抱えたままじゃ可哀想だからな。そのあたりの配慮だろう。
(よかった……。ありがと、アリオス)
(いや。君のほうこそ無事で良かった)
短いやり取りを済ませた後、レイは再びユーフェアスに向き直る。
こういう場面は彼女のほうが秀でてそうだしな。
「……で、ユーフェアスさん?」
「ひ、ひいッ! な、なななななんでしょうか!?」
レイの威圧に、ユーフェアスはもはや威厳の欠片もない。
「……はぁ」
さすがに呆れたんだろう。
エムの小さなため息が聞こえた。
「いい加減、教えてくれませんこと? あなたがアルセウス救済党と結託したのは、多くの女性と関係を持つためだった。じゃ、アルセウス救済党の目的はなにかしら?」
「い、いえ! 存じ上げません!」
「……では、質問を変えようかしら。あなたはなぜ、
「は……?」
今度は僕が目を見開く番だった。
レイファー第一王子。
あの抜け目なさそうな王子の名が、ここで出てくるか……
「な、ななな、なにを仰ってるのか……私にはわかりませぬ……」
「……本当に?」
「は、はひっ! もちろんでございます!!」
ユーフェアスは知らぬ存ぜぬを貫くが、表情に思いっきり答えが出ている。
大物領主といえど、動揺してるんだろうな。
と。
「――そこだ!!」
僕はふいにある予感を感じ取り、瞬間的に火属性魔法を発動する。
初級魔法、ファイアランス。
僕の放った魔法が、なにもない空間に向かっていく。
火力的には心許ないが、牽制には充分だろう。
「ぬおっ……! 馬鹿な、なぜ気づかれた……!!」
突如として現れたのは、アルセウス救済党の構成員。
いや。
かつての女神のように身体が透けていることから、あれも思念体か。
さっきまでまったく気配を感じなかったことから、たったいま部屋に潜入してきたと思われる。
「アリオス・マクバ……! 貴様の気配察知能力は、いったいどうなっている……!?」
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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