おい、懐かしい悲鳴だな
――――――
完了。完了。
女神ディエスからスキル《原理破壊》を授かりました。
受け取りますか?
――――――
いきなり視界に浮かび上がった文字列に、僕は思いっきり目を見開く。
――原理破壊。
なんだこれは。
あからさまに危険な香りがプンプンするのだが。
「アリオス様? どうしましたか?」
「い、いや。なんでもない」
きょとんとするエムに、僕は首を振って応じる。
なんだかよくわからないが、あの女神ディエスから授かったものならば、危険なものではあるまい。
僕は心のなかで「受け取る」と念じると、再び視界に別のメッセージが表示された。
――――――
受諾。受諾。
女神より下記の能力を授かりました。
《原理破壊一覧》
・飛翔
・転移
――――――
「な、んだこれは……!?」
飛翔。
転移。
ネーミングからして、どちらもかなり強力そうだぞ。
どちらも現代の魔法では再現不可能な領域。
まさに常識をことごとく超越した能力である。
――――――
下記に女神からの伝言を記載します。
――《原理破壊》は使用場所から半径5メートルのみ適用されます――
――もちろん、その範囲はスキルが鍛えられるたびに広まります――
――こちらの能力は《紅石》を入手することで増やすことができます。私が各所に遺しましたので、ぜひお手に取りください――
以上
――――――
なるほど。
つまり紅石を手に入れることで、僕はまた強くなれるということか。
チートコード操作と組み合わせれば、なんとも信じられない効果を発揮するに違いあるまい。
「はっはっは! なに黙り込んでやがる! 俺様の強さに恐れをなしたかよ!!」
僕の沈黙をどう受け取ったか、ダドリーが誇らしげに笑う。
かなりテンションが高いな。
もう自分の勝ちを確信しているような。
「アリオス様。だ、大丈夫ですか?」
エムが僕の手を握りしめる。
「あの人、態度はあれですけど、かなり強そうですよ? スキルを二つも持ってるっていうし……」
「いや、大丈夫だ。僕もいま、二つ目のスキルを手に入れた」
「……え?」
「おい、そこの女! たしか《エム》って呼ばれてたな! 俺がアリオスに勝ったら、お……おお、俺んとこに来いよ!」
「え。嫌です」
「へっ」
素で即答したエムに、ダドリーががっくりと肩を落とす。
「て、ててててめぇアリオス許さねえ! この俺様を怒らせやがって!」
「いや、僕はなにも言ってないんだが……」
さっきからうるさい奴である。
しかもいまのはあいつの自爆だろうに。
……ま、そんなことはいい。
早速、スキル《原理破壊》を使用してみよう。
「いくぞ! スキル発動! 攻撃力アップ(小)――」
ダドリーがそう叫んだのと同時に、僕も新たなスキル《原理破壊》を発動した。
と、その瞬間。
世界の色が――変わった。
魔導具によってほのかに照らされていた風景が、濃紺の青色に変色する。
あらゆる物が、人が、青色に染め上げられていく。
――まるで、この空間においてのみ
僕の周囲の周囲5メートルだけが、完全なる別世界に移り変わった。
「な、ななな、なんだこれはぁ!?」
慌てふためく白銀の剣聖。
ま、これはさすがに驚くよな。
僕だって仰天している真っ最中だ。
……さて、女神の助言から推察すると、青色に変色した部分だけが《原理破壊》されているんだろう。
この範囲外には能力が適用されないわけだ。
「……飛翔」
僕がそう呟くと、ゆっくりと身体が浮くのを感じた。
むろん、空を飛ぶのは初めてだ。
だけど、なにをどうすれば動けるのか、なんとなく理解することができた。
ふわり、と。
僕は一瞬にして、アルド家の屋敷を見下ろせるまでの高度まで浮遊する。
ちなみに、高度に関しては制限がないようだな。
「お、おいおいおい! なんでおまえ、飛んでんだよッ!!」
「いや。こういうスキルがあるようでな」
「ざっけんな! そんなスキル聞いたことねえぞ!」
ダドリーが叫んでいる間に、僕はもうひとつの能力を試してみる。
「転移」
そう唱えた瞬間、視界が急に移り変わった。
さっきまで空高く飛んでいたはずが、一瞬にしてダドリーとの距離を詰めている。
「な……っ!?」
こうなればもう、隙だらけどころの話ではない。
「淵源流、一の型。真・神速ノ一閃」
「ウボァァァァァァァアア!! くっそぉぉぉお、覚えてやがれーッ!!」
懐かしい悲鳴を響かせながら、ダドリーは飛んでいって星になった。
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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