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ダイアライザーの選定方法

投稿日:2017年10月18日 更新日:

ダイアライザーの選定方法

 

さぼ
どうもさぼ(@ce_sabo)です。

 

僕は血液浄化専属のCEとして、「患者に適したダイアライザーとはなにか?」常日頃、考えています。

 

今回はダイアライザーの選定するときに、必要な知識、見るべきデータや症状などについて、例を挙げながら分かりやすく、説明していこうと思います。

注意

ダイアライザーの選定については「絶対」はありません。

例)「この患者さんにはこの膜が絶対合っている!」「この膜以外考えられない!」などです。

各透析施設ごとにルールや判断基準もあると思います。

施設で用意できるダイアライザーの種類も限られていますからね。

参考程度で見てもらっても良いかもしれません。

 

今回は血液透析に使うダイアライザーについて書きます。

オンラインHDF用のヘモダイアフィルターについては近々書く予定です。

 

 

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ダイアライザー選択の際に見るべき情報・データ

 

①血液流量(以下QB)、シャント機能

 

QBはダイアライザーの能力を最大限に発揮するための重要な要素であるのは下記記事で述べました。

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結論から先に言うと、「QBをある程度とれないと、膜面積が大きいダイアライザーや性能が高いダイアライザーを選択してもあまり効率よく透析を行えない。」ということです。

逆にQBをある程度とれるなら、膜面積もどんどん上げていってもいいということになります。

 

具体例① 導入期でシャントがまだ未発達の患者さん

 

見るべきデータ:シャント作成後2~3ヶ月

シャントが未発達なのでQB150とか180が限界だったたとします。

そういう患者さんには、膜面積1.3とか1.5㎡かつ、性能が低めなダイアライザーを選択します。

性能が低めなのが選択されるのは、不均衡症候群の予防にもなります。

 

具体例② 透析導入後数年が経ち、血管発達が良い若い患者さん

 

見るべきデータ:シャント機能が良好で設定QBが300、栄養状態も良い

このような患者さんには、膜面積2.5㎡、でAlbもある程度抜ける高性能ダイアライザーを選択します。

 

以上をざっくりとまとめると

QB低め、シャント機能小、シャント未発達 → 膜面積2.0㎡以下

QB高め、シャント機能大 → 膜面積2.0㎡以上

※かなりおおざっぱに分けました。2.0㎡というのはあくまでも目安です。

 

このように考えるといいと思います。

 

②症状(痒み、ムズムズ、関節痛など)

 

症状は患者さんによって様々で、症状の有無・程度・頻度はみんな違います。

それ故に一人一人の症状を把握し、ダイアライザーの選択するのはとても難しいです。

 

これに対して、僕の施設では透析前の問診だけでなく、実際に症状に関するアンケートを定期的に患者さん全員にやってもらい、症状の把握に努めています。

 

中でも特に多かったのは「痒み、ムズムズ、関節痛」です。

 

これらはいずれも、尿毒素物質の中でも大物質であるβ2MGやα1MGの蓄積によって起こるものだとされています。

 

いい表があったので引用させてもらいます。見やすくするため、自分で作り直しました。

 

各種合併症と治療目標

 

[引用・一部改変]

1)土田健司.オンラインHDFの基礎と臨床:透析患者の予後と合併症の改善を目指して.メディカ出版.2017.33

 

上の図でいう掻痒症=痒み、骨関節症=関節痛、RLS=ムズムズ と置き換えれば見やすいです。

ちなみにRLSというのは、レストレスレッグス症候群、日本名だとムズムズ脚症候群という合併症の一つです。

RLSの症状で、足がムズムズして落ち着かないという特徴的なものがあります。

 

上のグラフからこれらの症状を改善するためには、β2MGの除去率は3つすべての症状で70~80%以上 α1MGの除去率は痒みで20%以上、骨関節痛で30%以上、RLSで 35%以上必要と読み取れます。

 

この目標値は僕らが見てもかなり難しい値です。

(2020年追記)

これらの目標値は透析条件、フィルターの選定次第で十分に可能です。

しかし、HDではα1MGなどの中~大分子物質の除去が期待できず、オンラインHDFの方が達成しやすいです。

 

また、「痒み」だけに焦点をあてると、ダイアライザーの中でも機能分類Sである「PMMA膜」は痒み改善に効果的だとされています。実際に研究もいくつも見ました。

現在、PMMA膜は東レ・メディカル社でのみ取り扱っており、「フィルトライザーNF」というの商品名です。興味があったら検討してみてください。

[参考サイト] 東レ・メディカル社 フィルトライザーNF

 

③血液データ

 

透析患者さんは血液検査は月2回定期で血液検査を受けます。

数ある検査項目の中から、特に注意して見るべきものをピックアップしていきます。

 

・BUN(尿素窒素)

BUNに関しては前値・高値から求めるBUN除去率を見ます。

また、Kt/VもBUNのクリアランスから求めます。

 

BUNの除去率・Kt/Vを見ることによって「透析量は十分か(ちゃんと透析できているか)」が分かります

 

除去率、Kt/Vが低めの人を毎回ピックアップして、膜面積を上げたり、性能の良いダイアライザーに変更できるか検討します。

 

Kt/Vを見るときは注意点があります。

こちらの記事も是非目を通してください↓

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BUN除去率を見るときは、BUN前値が高いほど除去率は高くなるので、前値も考慮して見る必要があります

 

 

・β2MG(ベータ2-ミクログロブリン)

前述した症状「痒み、ムズムズ、関節痛」の原因物質です。分子量は11800。

β2MG濃度が予後に直結することも研究で証明されています。

日本透析医学会のガイドラインでは、透析前β2MG濃度が30 mg/L未満を推奨しています2)

 

β2MGが30 mg/Lを超えていたら、今使っているものよりももっと高性能なダイアライザー・膜面積が大きいダイアライザーを検討します。

また、現行のダイアライザーでは拡散でβ2MGも十分に除去できるのでQBを上げるのも大事です。

 

・アルブミン(Alb)

透析患者さんなら基準値は 3.5 g/L以上くらいです。

Albは総蛋白質で2/3を占めると言われています。(残りは1/3はグロブリン)

特殊な病態ではない限り、少ないと低栄養気味、多いと栄養状態良好と考えてよし。

Alb値も生命予後に直結する報告があります。

Alb値が高め、いわゆる栄養状態が良い人の方が予後が良いです。

なので、Albが低い人は必ず見つけ出し、適切なダイアライザー選定が必要です。

 

Albが低く栄養状態が低下している方には、バクスター社製 特定積層型H12ヘモダイアライザーが検討します。

このダイアライザーはダイアライザー内で起こる内部濾過がほとんど起きなくて、Alb・アミノ酸の漏出を最小限に抑えることができます。

また、炎症性サイトカインも除去でき、PVP・BPAフリーで生体適合性にも良いという優れもの。

栄養面・生体適合性からしてみると良いダイアライザーですが、効率面で考えるとかなり落ちるのでやはり定期的な評価が必要です。

 

[参考サイト] バクスター株式会社 H12ヘモダイアライザー(積層型透析器)

 

 

・その他 見るべき検査項目

クレアチニン(Cr)、カリウム(K)、ヘモグロビン(Hb)、リン(P)、カルシウム(Ca)、α1MG、CRP ...etc

全て大事ですね。中でもリンの管理が難しいです。

※検査データは必ず現在の1点のみを見るのではなく、前後の比較をしてください。

 

④年齢

 

年齢は結構大事で、高齢な方ほど、シャント機能が小さく、低栄養気味な方が多いです。

中にはシャントもしっかりしていて、栄養状態が良い人もいます。

よってこれは、補足的なデータとしてみた方がいいかもしれません。

 

⑤ドライウェイト(DW)

 

目標体重です。何を見るかというと「DWの推移」を見ます。

過去と比べて減っている傾向か、増えている傾向かです。

DWは心胸比・hANP・血圧などによって決まりますが、

これは実は栄養状態とも関連が強いんです。

過去から推移をみて、明らかにDWがずっと減っている患者さんは、Albが低値で栄養状態が悪くなっている。ということが予想されます。

そういう場合は、ダイアライザーを積層型に変えたり、膜面積を減らしたり、よりAlbが抜けにくいダイアライザーに変えるのを検討します。

 

まとめ

 

・ダイアライザー選択の際に見るべき情報・データは

①血液流量(QB)、シャント機能

②症状(痒み、ムズムズ、関節痛など)

③血液データ 最低限3つ

BUN(尿素窒素)、β2MG、・アルブミン(Alb)

④年齢

⑤ドライウェイト(DW)

 

以上です。

ダイアライザーはこれらのデータを見て、総合的に選定することが必要です。

この記事がダイアライザー選定の参考になれば幸いです。

 

 

Reference

1)土田健司.オンラインHDFの基礎と臨床:透析患者の予後と合併症の改善を目指して.メディカ出版.2017.33

2)一般社団法人 日本透析医学会 維持血液透析ガイドライン:血液透析処方.透析会誌 46 (7):587〜632,2013

 

 

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