どうもさぼです。
尿素窒素などの小分子物質の透析効率を上げる方法については
透析効率を上げる方法(内部リンク)で説明しました。
しかし、小分子物質の除去効率だけを上げても、良い透析とは言えません。
長期合併症を予防するためには大分子物質の除去が必要不可欠になってきます。
今回は長期合併症を予防するための、大分子物質の除去効率を上げる方法を考えていきます。
※
ちなみに小分子物質・大分子物質と分子量による違いで分けていますが、明確なボーダーラインはなく、便宜上、透析において区別するために使われているものだと思ってください。
これと混同してしまいがちなのが、「低分子量たんぱく質」という言葉です。
低分子量たんぱく質というのはAlb(分子量66000)より小さい分子量のたんぱく質であり、
紛らわしいのでこのブログでは使いません。
分子量小さい→小分子物質、分子量大きい→大分子物質で区別してください。
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目次 [閉じる]
必ずおさえておきたい重要な大分子物質3つ
合併症予防するうえで、重要な大分子は以下の3つです。
名前:分子量
β2MG:11800
α1MG:33000
Alb:66000
他にも大分子はたくさんありますが、今回は省略。
このβ2MG、α1MG、Albの3つは、
今後本格的に広まってくるだろうオンラインHDFのフィルターの選定や管理で、かなり重要になってくるので、分子量とともに名前だけはしっかりと覚えて欲しいです。
β2MG、α1MGの除去目標、Alb漏出の必要性
はじめにおさえておきたいのが、
β2MG、α1MG、Albの中で1つだけ仲間外れがいるということです。
それは、
Alb(アルブミン)です。
β2MG、α1MGの場合は悪いやつなので「除去」という言葉を使います。
一方、Albの場合は、グレーゾーンなんです。良いとこも悪いとこもあるので「漏出」という言葉が使われています。
Albは身体に必要な重要な栄養源となるたんぱく質でもあり、尿毒素とくっつき尿毒素結合型たんぱく質として存在しているものもあります。
Albは栄養状態に直接関係しているから、良い悪いの割合としたら、良い割合が高い。
なので、本当はできるだけ身体から出ていってほしくないニュアンスがあるから「漏出」という言葉が用いられる。
という自分なりの解釈・考察をしてみました。
ここでエビデンス(科学的根拠)を用いた説明もしていきます。
実はこれらの大分子物質は目標値があります。
β2MGだけはガイドラインに明確に定義されています。
・最大間隔透析前血清 β2-MG濃度が 30 mg/L 未満を達成できるように透析条件を設定することを推奨する.
・最大間隔透析前血清 β2-MG濃度 25 mg/L を達成できるように透析条件を設定することが望ましい.
引用:水口 潤 他.維持血液透析ガイドライン:血液透析処方.日本透析医学会雑誌.46巻7号.2013(PDFダウンロード)
推奨はβ2-MG濃度30 mg/Lだけど、できたら20 mg/L以下がいい。
目標は30 mg/Lってことで解釈していいと思います。
もう少し専門的な雑誌にいいのがあったので、引用しつつ、かみ砕いて要約していきます。
3つくらい重要なものをピックアップして紹介します。
β2MGとα1MGの目標値が載ってました。
① 目標値 β2MGの除去率:80%。α1MGの除去率35%
前述のβ2-MGとα1-MGの除去目標値を求めると,Alb漏出量の増加は避けられない.
解釈→α1MG程の大分子物質だけを除去するのは膜の製造上難しく、Albもどうしても抜けてしまう。
②Alb漏出の意義・必要性
HDF中のAlb漏出(3~6g/回)は,酸化したAlbを排除してAlbの再生を促し,Albの回転速度を上げることで意義がある。
→Albは全く抜けないよりも、ある程度抜けたほうが良い。加えて、注意点として、Alb漏出量の許可範囲はそれぞれであるので、患者の栄養状態を総合的に判断するべき。と自分なら追記したい。
③タンパク結合型尿毒素の存在
ある程度以上のAlb漏出(3g/回~)はタンパク結合型尿毒素の除去効率を上げることに貢献する.
→タンパク質結合型尿毒素の除去のためにもアルブミン漏出は必要不可欠。
[引用・参考文献]
櫻井 健治.②中・大分子溶質の除去(合併症対策).Clinical Engineering 2016.10.適正透析の実際透析の実際 Vol.27 No.10.811.2016年
以上3点から、Alb漏出の必要性が分かったかと思います。
結論はAlbはできるだけ抜けてほしくないけど、ある程度抜けた方がいいということですね。
中・大分子物質の透析効率を上げる方法
さぁ、やっときました。実際の方法です。
方法はHD(血液透析)とOHDF(オンラインHDF)でいくらか違いがあるので
HDのみの場合を(HD)
OHDFのみの場合を(OHDF)
HD・OHDF両方の場合を(HD・OHDF) とします。
①血流量を上げる(HD・OHDF)
最近のダイアライザーではβ2MGのクリアランスが高いものが多く、
β2MG(少しはα1MGも)ぐらいまでの物質は「拡散」や「内部濾過」で除去できる。
※内部濾過とは透水性が高い高性能なダイアライザーにおいて、除水とは関係なしに、HDでもダイアライザー内部でHDFのような濾過を起こすものである。
②補液量を上げる(OHDF)
補液量を上げることで限外濾過量を上げて、大分子尿毒素を除去する。
HDFの仕組みは補液した分、限外濾過をかけれるので、補液量を上げれば、もちろん限外濾過量を上げることができる。
③性能が良いダイアライザーに変える(HD・OHDF)
具体的に言うと孔径(ポアサイズ)が大きいダイアライザーに変えるということです。
孔径が広いと限外濾過するときに効率よくβ2MG、α1MG等の大分子物質が除去できます。
以上、ざっくりと3つ紹介しました。
ここで注意しなければならないのは、前述したようにβ2MG、α1MG等の大分子物質が除去できるということは、それに比例してAlbも抜けてしまうということです。
なので、
大分子物質の除去効率を上げる場合は、
必ず患者さんの栄養状態(Alb等)の評価をしてから慎重に行ってください。
HD、OHDF関わらず、Albは身体にとって重要な栄養タンパク質なので、
血液検査で毎回確認することを推奨します。
まとめ
・大分子物質の除去目標
β2MG:11800 除去目標 除去率80%
α1MG:33000 除去目標 除去率35%
Alb:66000は抜けてほしくない物質だが、実はある程度抜けたほうがいい。
その程度は患者のAlb値・栄養状態による。
・大分子物質の透析効率を上げる方法
①血流量を上げる(HD・OHDF)
②補液量を上げる(OHDF)
③性能が良い(孔径が大きい)ダイアライザーに変える
以上です。
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