おい、勝てるわけがない
「く、くそ……!」
アルセウス救済党の男は、歯ぎしりしながらも戦闘の構えを取る。
状況は絶望的だ。
なんか知らんがべらぼうに強くなっているカヤ・ルーティス。
そして正体不明の
しかも、相手はそれだけじゃないようだ。
Bランク冒険者のユウヤ・アルゼン。
加えて、目深に帽子を被った謎の女性。名前は
BランクとDランク。
本来ならば取るに足らぬ相手だ。
だが、二人ともアリオスによって強化されている可能性がある。
それを思えば、絶望的としか言いようのない状況だ。
「フフフフ……」
ウィーンと呼ばれた屑鉄が、不気味な笑い声をあげる。
「ドウ料理サレタイデスカ? 子猫チャンタチ」
「ぐっ……おのれ! 見くびるなよ!」
男は剣の切っ先をウィーンに向け、大きな叫声をあげる。
「我ら気高きアルセウス救済党! 貴様らのような薄汚いゴミどもに、負ける謂われはない!!」
「フーン、ソウイウコトイウンデスネ」
「当たり前だ! 貴様らのようなポンコツに生きている価値はない! そのまま死ね!!」
「モウ怒リマシタ。《バトルモード2》デ戦イマス」
言うなり、ウィーンは丸っこい身体を高速でぐるぐる回転させる。
ウィンウィンウィンウィン……
回転は刻一刻と早くなっていき、次第に輝きを帯び始める。ウィーンがまわるたび、その輝きが光度を増していく……
そして数秒後には、ウィーンはまったく別の姿形になっていた。
丸っこかった体型は、完全な人型に。
図体もかなりのものだ。軽く大人二人分の大きさはあるのではなかろうか。
顔部分は紅い目のようなものが二つ。口は見当たらないが、すらっと長い鼻状のようなものはある。
両の拳はごつごつと盛り上がっており、あれに殴られたが最期、正気を保てる自信がない。
「な……んだ、あれは」
気づいたとき、男は数歩下がっていた。
逃げてはいけない。
そうとわかっていても、本能的に逃げてしまう自分がいた。
「バトルモード2……ソノ昔、女神様トモ何度カ肩ヲ並ベマシタ」
「女神……だと……?」
「エエ……コノモードデ、女神様カラコノ能力ヲ授カリマシタカラ」
言いながら、ウィーンが右手を突き出す。
その手の平には、紅い宝石が組み込まれていた。漆黒の輝きを放つ《影石》とはまた別の、《紅石》と呼ばれる宝石……
「あ……それって」
Aランク冒険者のカヤが素っ頓狂な声を発する。
「私、見たことある。ジャイアントオークを倒したとき、アリオスさんが手に入れたものじゃない」
「……ソウデスカ。アリオス様ハモウ、コレヲ持ッテイルノデスネ」
「うん。たしか二つ持ってるって……」
「フフ……女神様モ粋ナコトヲスル。……アリオス様ハ《チートコード操作》トハ別二、新タナスキルヲ手二入レルデショウネ」
ウィーンはそう言うと、手の平の紅石をほのかに輝かせる。
「チナミ二私ノ《
――まずい。
男は本能的に自身の危機を感じ取った。
もしあれが《影石》と対をなす《紅石》であれば、理を超えた力を発揮してくる可能性が高い。早急に逃げなければ――
だが、その願いは叶わなかった。
「ぐほっ……!」
突如として目前に現れたウィーンの拳が、男の肩にのめり込んだからだ。
「馬鹿な……! なぜ!?」
いったいなにをされたのだ。
訳がわからないまま殴られたぞ。
スピードを高める能力か。
いや、それとも違うような……
「空間超越デス」
そんな声と同時に、男の頭上に再びウィーンの拳が現れた。
ウィーンの立ち位置はまったく変わっていないにも関わらず。
あいつの攻撃だけが、空間を超越して襲ってきている――!?
「ぐぼぁぁあああ!」
駄目だ。
勝てない。
勝てるわけがない。
意識が途切れる瞬間まで、男は完全に勝負を諦めた。
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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