おい、スケールがでかすぎるんだが。
さて、色々あったが、僕とウィーンは無事ラスタール村に到着した。
幸いなことに、もう夜も遅い。
村人にすれ違うこともなく、僕たちはまっすぐギルドに着くことができた。
ちなみにレイだけは呼び出しておいたので、ギルドに同席している。
「アルセウス救済党の連中を……三人も……」
ギルドマスターのアルトロは、目を丸くして僕たちを出迎えた。
「信じられん……。難敵とされている者を、こうも容易く拘束するとは……」
「いえいえ、今回の功労者は僕じゃないですよ。そこにいる
「《ウィーン》デゴザイマス。アリオス様ノ眷属デス」
自己紹介をしながらくるくる胴体を回転させる古代兵器。
さっきから奇妙な仕草をする奴だな。
「け、眷属……」
わけがわからないといったふうに肩を竦めるアルトロ。
「アリオス殿よ。ワシは夢でも見ているのだろうか。このウィーンとやら、およそ人間には見えんのだが」
「そうですね……。古代兵器みたいです」
「こ、古代兵器……」
「ハイ。過去、女神ディエス様ニ仕エサセテイタダキマシタ」
「め、女神ディエス……。もうやめてくれい……。老人の頭にはきついぞい……」
ばたっ。
そう言いながら倒れたアルトロに、
「ゴ老体ィー!! オ気ヲ確カニー!!」
と駆け寄るウィーン。
「また騒がしそうな仲間が増えたようね……」
その脇で、レイが半笑いを浮かべているのだった。
★
そんな賑やかな一幕も瞬く間に終わり。
僕達はようやく、本題について話すこととなった。
ちなみに現在の謎は以下の通りである。
・アルセウス救済党がなぜかエムを取り戻そうとしていたこと。
・アルド家とアルセウス救済党になんらかの関わりがありそうなこと。
細かい謎は他にもあるが、本筋はこんなところだろう。僕もまさか、このタイミングでアルセウス救済党と戦うことになるとは想像していなかった。
ちなみにエムの件は、アルトロにだけは相談済みだ。
ギルドに所属する者として、さすがにギルドマスターには隠しておくわけにいかなかったからな。
「そういえば……アルトロさん」
あることを思い出した僕は、ギルドマスターに視線を向ける。
「先日、僕とユウヤさんたちで構成員を拘束しましたよね。あのあと取り調べをすると聞いていましたが……どうなったんですか?」
「ふむ……それがのう……」
アルトロは答えづらそうに顎をさすると、やや歯切れの悪い口調で言った。
「――逃げられたそうじゃ。逃亡に関する一切の痕跡もなく、忽然とな」
「え……!? 逃げられたって……」
「大衆の混乱を招きかねないため、ごく一部の者にしか知らされておらんようでな。その上で聞いてほしいのじゃが」
アルトロは腕を組むと、難しそうな顔で続ける。
「当然のごとく、構成員は牢獄に閉じこめておったよ。きたる取り調べに備えてな。じゃが――奴らは急に姿を消した。それも、監視員の目の前でな」
嘘だろ。
王国の監視が杜撰とか、そんなレベルじゃないだろ。
しっかり監視をして、その上で逃げられたってことかよ。
「むろん、これは大事件じゃ。極秘裏に捜索チームが結成され、裏で捜しておる。じゃが……依然、見つからないようでの」
そりゃそうだよな。
拘束していたはずのテロリストが忽然と姿を消したなんて、相当な大事件である。
おいそれと広められる話ではない。
「――タブンソレハ、《
黙りこくった一同に向けて、ウィーンが言葉を発する。
「皆様モ見タコトアリマセンカ? 謎ノ波動ヲ放ツ、漆黒ノ宝石ヲ」
漆黒の宝石。
その言葉を聞いて、僕ははっとする。
「ウィーン。これか?」
懐から
かつてアルセウス救済党が使っていた、魔物を瞬間移動させる宝石だ。
――瞬間移動。
まさか。
「ソウデス。ソレノコトデス」
ウィーンの音声に、やや嫌悪の色が混じる。
「ソレダケハヨク覚エテイマス。ソレコソガ、二千年前ノ混乱ヲ招イタトイッテモ過言デハアリマセン」
二千年前の混乱……
女神ディエスも同じようなことを言ってたな。
なんだ。
話が想像以上に大きくなってきたぞ。
「アルセウス救済党ハ恐ラク、影石ノ加護ヲ受ケテイマス。強イノハソノタメデショウ。……マア、アリオス様ハソイツラデサエ翻弄シテマシタガ」
……なるほど。
さらに謎が増えてしまったが、すこしだけ判明したこともあるな。
漆黒の宝石、改め、
それがどんなものかはまだ不明だが、アルセウス救済党はその力を借りている。連中の強さはそれが理由であると……
「アルトロさん……その、ひとつだけお願いがあるんですが」
そう申し出た僕に、アルトロはふっと笑みを浮かべる。
「ふふ、わかっておるよ。言わずともよい」
「はは……バレましたか」
「ほっほっほ。それでこそ《真の剣聖》じゃよ」
まあ、そんな高尚なもんじゃないけどな。
奴隷エムを放っておくわけにはいかないし、なによりアルセウス救済党をこのまま野放しにはできない。僕が解決するのは無理だと思うが、すこしくらいは貢献したい。
「……よかろう。非公式にはなるが、ラスタール村のギルドマスターとして、正式にアリオス殿に依頼する。この事件を、どうか解決に導いておくれ」
「ええ……もちろんです」
決意を込めて頷く僕だった。
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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