おい、強いってレベルじゃないだろ
アルド家の屋敷からラスタール村までには、そこそこの距離がある。
さっきは僕ひとりだけだったから、ものの数十分で到着できた。
けれど――三人もの大人を抱えている現在においては、そうはいかず。
これは……魔物の群れか。
このまま駆け抜けることは難しそうだな。
正面突破で戦うしかない。
僕は構成員を地面に降ろすと、油断なき視線を近隣の草むらに向ける。
――と。
「アリオス様……サスガ、トンデモナイ気配察知力デスネ……」
ウィーンが無機質な音声を響かせる。
なんだろう。
生物ではないから感情が伝わりにくいが、《呆れ》のニュアンスを感じるぞ。
僕は一瞬だけウィーンを見やると、すぐに視線を戻す。
「……決まってるだろう。アルセウス救済党の構成員を抱えている以上、なにが起きるかわからないしな」
最悪、構成員の仲間どもが襲ってくる可能性もなくはない。
ま、そんな気配はどこにも感じないし、大丈夫だと思うけどね。
「……サスガハ剣聖様。ファルアス様ガ見込マレタ方デス」
「だから僕は剣聖じゃないって……」
このやり取り、何度目だよ。
「……トモアレ、ココハアリオス様ノ
「そうか……まあ、頼めるならお願いしようか」
古代兵器の強さは伝承に語り継がれているものの、ウィーンの戦闘力はまだわからないしな。ここは彼(?)の実力を確認しておきたい。
「チョット失敬」
ウィーンは丁寧に二人の構成員を地面に横たえる。
その際、意外に綺麗好きなのか、構成員の肩についた雑草をパッパッと払っている。鉄棒で。
「……サテ、イキマスカ。起動起動。戦闘モード」
ウィーンがそう呟いた瞬間――彼の外見に変化が訪れた。
丸っこく可愛らしかったボディは、見る見るうちに変貌を遂げ、さながら人のような体型となる。
まさに戦闘モードと形容するにふさわしい外見へと変化した。
「フフ……イキマスヨ。カワイイ子猫チャンタチ」
瞬間。
ドドドドドドドドッ!!
というすさまじい轟音とともに、ウィーンの両手から高速でなにかが吐き出された。
――あれは、金属製の弾か。
しかも魔法で強化しているっぽいな。
一発当たっただけでも痛そうな金属の弾を、ウィーンは超高速で何発も発射している。
当然、音が馬鹿でかい。
「お、おい!?」
いやいやいや。
強いってレベルじゃないだろ。
やりすぎだ。明らかに。
「フハハハハ!! 私ハ他ニモ変身ヲ残シテイルノデスヨ!! ソノ意味ガワカリマスカ!?」
高らかに笑いながらド派手に攻撃するウィーンは、……うん。悪役にしか見えなかった。
数秒後。
完全に荒れ地と化してしまったその一帯に、生き残っている魔物は一匹もいなかった。
まあ、気配の正体はホワイトウルフの群れだったんだけどな。
Bランク冒険者でも苦戦する魔物を一瞬で蹴散らすとは……
やばすぎるぞ。
この古代兵器。
「フゥ、終ワリマシタ」
胴体を謎に回転させながら呟くウィーン。
「アレ? ドウシマシタカ、アリオス様」
「……すまないが、今後は僕が認めたときだけ戦ってほしい。毎回毎回これをやられたら、事件になりかねないぞ……」
「アラ? ソウデスカ?」
ウィーンが右手を顎(?)部分にあてがう。
「一応、私ハアリオス様ノ眷属デスカラネ。アリオス様ヨリハ強クナッテイナイハズデス」
「そ、そんなわけないだろ?」
たしかに《チートコード操作》は強力だが、さすがにこれほどは……
「余計なお世辞はいらない。おまえは自分の強さを自覚しろ」
「……エッ」
なんでそこで呆れてるんだ。
「ワ、ワカリマシタ。アリオス様ノ仰セノママニ」
ウィーンはそこで体型を元に戻すと、再び二人の構成員を鉄棒に載せる。
「ツカヌコトヲ聞キマスガ、アリオス様、戦闘後ニ驚カレタリ呆レラレタリシタコトアリマセンカ?」
「ん? ああ……そういえば何度かあるな」
「……ソノ方々ノ驚キヨウガ目二浮カブヨウデスヨ……」
なぜかため息っぽいものを吐き出すウィーンだった。
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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