おい、なんのコントだ
アルセウス救済党の動向を追っていたら、思いがけずアルド家の屋敷に辿り着いた――
これは偶然か。
もしくはなにかしら意味があるのか。
いったいなにが起きているんだ……?
僕は近くに小岩を見つけ、そこに身を潜めることにした。
幸い、構成員にはまだ見つかっていない様子。
張り込みは継続できる。
「……どうだゲーガ。結果のほどは」
屋敷の入り口から、新たな人物が姿を現した。
奴も同じくアルセウス救済党の構成員のようだな。灰色のローブを目深に被っている。
ゲーガと呼ばれた構成員は、ひょいと肩を竦めて答える。
「確認はできてない。やはり剣聖の気配察知能力は段違いだね」
「剣聖……アリオス・マクバか」
「ああ。すこし近づいただけで気づかれた。あれはもはや化け物の類……信じられぬ強さだ」
「ふむ……。ヴァニタスロアを倒した実力は本物か」
構成員のひとりが額を抱える。
「……同志Aは本当に
「ああ。それは間違いないのだが……」
――む?
僕が人造人間を確保……だって?
馬鹿な。
人造人間って、まさかエムのことか? あの純粋な奴隷が?
嘘だろ?
たしかに彼女は自分の出自を知らなかったが、それ以外は普通の人間となんら変わりなかったのに……
「……こうなれば四の五の言っていられないな。我が実験のためにも、人造人間は取り返さねばならん。ただいまより、ラスタール村に向かうとしよう」
悪名高いアルド家。
アルセウス救済党。
そして人造人間という言葉。
正直、わからないことだらけだ。
だがひとつだけ言えるのは――奴らをこのまま放ってはおけないことだ。
スキル《チートコード操作》発動。
選ぶ能力は《攻撃力アップ(小)》。
アルド家の屋敷が近くにある以上、派手な能力は選べないからね。
僕はそのまま疾駆し、剣を抜き。
淵源流、一の型。
冥府ノ一閃。
瞬時にして構成員の背後に回り込んだ僕は、その背中を切り払う。
「…………!」
声もなく倒れる構成員のひとり。
念のためチートコード操作で奴の体力を確認するが、もう立ち上がることはできないようだ。
もちろん、殺してはいない。
有益な情報を持っていそうなので、ここは身柄確保を優先すべきだろう。
ダドリーとの一戦から、我ながら淵源流に磨きがかかったように思う。
「な……なんだ……!」
「馬鹿な、剣聖アリオス・マクバ……!?」
目を見開く残りの構成員に向かって、僕はふうと息をつく。
「一応言っておくけど、僕は剣聖じゃないぞ。マクバ家からは完全に縁を切った」
「黙れこの野郎! おまえは剣聖だっ!!」
唾を飛ばして叫ぶゲーガ。
「…………」
なんだ、誉められてるのか煽られてるのか。
よくわからん。
――まあなんにしても、やることはひとつだ。
ラスタール村を襲うと言っていた以上、こいつらを野放しにはできない。すぐさま無力化すべきだろう。
「……戦う前に、一応聞いておきたい」
僕は油断なく構えながら、構成員たちに問いかける。
「おまえらの目的はなんだ。アルド家との繋がりでもあるのかよ」
「ふん! どうしても聞きたかったら、私を倒してからにするんだな!」
またしても騒ぎ立てるゲーガに、もうひとりの構成員が真顔で突っ込む。
「……おい、万一負けても教えるなよ?」
「はっ、そうだった」
おい、なんのコントだ。
なんとも気が削がれてしまったが、ここで油断してはなるまい。
「たぁっ!」
「せええいっ!」
二人の構成員が剣を持って突進してくる。
かなりのスピードだ。
かつてユウヤがアルセウス救済党を強者と称していたが、それもあながち間違ってはいない。
スキル《チートコード操作》発動。
選択する能力は《吸収》。
近くにいる敵の攻撃をまるごと自身に吸い寄せる能力だ。
「なっ……!」
その能力も
――いまだ。
チートコード操作発動。
無敵時間(極小)。
約5秒間は敵の攻撃をいっさい受け付けない、まさに常人離れした力だ。
カキン、と。
無敵時間に僕を攻撃した二人の剣が、見えない壁に阻まれたかのように弾かれる。
「なっ……!」
「なんだこれ……!」
こうなってはもはや絶好の的。
僕は剣を振り払い、瞬時にして二人の構成員を無力化した。
「わ、訳がわからない……っ!!」
倒れる寸前、ゲーガがそう呟いていた。
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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