おい、これは予想してなかったぞ
「すや……すや……」
思いっきり食べたあと、エムは倒れ込むようにして熟睡に入った。
その際も、
「ふかふかのベッド……気持ちいい……」
とか言ってたっけ。
いつも
問題は――むしろこのあとだ。
僕は居間のテーブルでレイと向かい合い、今後について話し合っていた。
ちなみにメアリーはキッチンで皿洗い中だ。
「うーん……やっぱ難しいと思う。この一帯はレイファー兄様が管轄を任されてるんだけど、その兄様が、奴隷制度を是としている以上は……」
難しい顔で呟くレイミラに、僕はため息で応じる。
「やっぱり無理か……。どうにかしてあげたいけど」
「私のほうで兄様にかけあうよ。エムちゃんの惨状を伝えれば、多少は融通が利くかもしれないし」
「すまない。よろしく頼むよ」
一時的に保護するだけならともかく、本格的に匿うとなれば、単なる犯罪行為になりかねない。
そうならないためにも、早急にレイに動いてもらう必要があるだろう。いくらエムを匿いたいとはいえ、余計なリスクを背負っても仕方ない。
「ううう……あああ……」
ふと、エムの大きな寝言がここまで響いてきた。
「ユ、ユーフェアス様……。どうかお許しを……どうかみんなの命だけは……ううううううっ……!」
「…………」
いったいどんな夢を見てるのか。
正直想像したくもないが、それだけの迫害を受けてきたんだろう。
あのまま、彼女を放っておくわけにはいかないよな……
と。
「…………ッ」
僕はふいに視線を尖らせ、背後に視線を向ける。
この気配。
この悪意。
まさか……
「ア、アリオス? どうかしたの?」
きょとんとした表情で問いかけるレイに、僕は「しっ」と人差し指をたてる。
「……
「なにかって……まさかアルド家のスパイってわけじゃ……」
「わからない。ともかく気をつけてくれ。なにかあったらギルドへ」
「う、うん。任せて。アリオスも……気をつけてね」
不安そうに僕の手を握るレイに、僕はふっと微笑みかける。
そしてそのまま家を飛び出し、気配の位置を探るべく動き出す。
「……っと」
相手もなかなかの察知能力を持っているようだ。
僕の動きを察してか、一気に遠ざかろうとしている。
気配的に、かなり遠方に身を潜めていると思ったんだけどな。
それでも気づかれたってことは、相手も相当の手練れである可能性がある。
――この動き……単なるスパイじゃなさそうだな。
僕もいままで以上に身を引き締める必要がありそうだ。
だが、相手がいかに得体の知れない連中といえど、伝説に残る
気配を消して追いかける僕に、奴らはまったく気づいていないようだ。
物陰に隠れながら近寄っていく僕に、連中は気づく様子もない。
あともうすこしだ。
もうすこしで奴らの姿が見える……!
そうして数秒後、連中の姿を目視した僕は、思わず変な声を出しそうになった。
――灰ローブを頭まで被っているあの格好。
忘れるはずもない。
アルセウス救済党――その構成員たちだ。
いったいなぜ。
僕に仕返しをしにきたのか。
それにしては妙なタイミングだが……
「どうだ……アリオスの奴、追ってきているか」
「いや。気配を感じない。さすがに我々のスピードにはついて来られないだろう」
「……それもそうか。戻って状況を伝えよう」
走りながらヒソヒソ話をする構成員たち。
内容が丸聞こえだが、僕はひとまず泳がせることにした。
あいつらは《戻る》って言ってたからな。
このまま行かせておけば、以前のようにアジトが見つかる可能性が高い。ひとまず行かせておこう。
そう判断し、追跡すること数十分。
構成員たちが辿りついたその場所に、僕はまたしても唖然とせざるをえなかった。
アルド家の屋敷だったからだ。
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