おい、変なランクをつけるな
「ガアアアアアアッ!」
僕の眼前で、巨大な獣――ファングボーンが
さすがは指定Cの魔物。
その迫力は伊達ではない。
「ブルオオオオオオアッ!!」
再び叫声をあげると、ファングボーンは土煙をあげながら突進を敢行。
それはまさしく猪突猛進。
かなりのスピードだ。
さすがにダドリーには劣るものの、あの巨体に体当たりされたらさぞ痛いだろう。
こういうときは――アレの出番だな。
僕はスキル《チートコード操作》発動。
選ぶ能力は《無敵時間(極小)》。
「アリオスさん! 危ない!」
Aランク冒険者のカヤが叫んでくる。
だが問題ない。
この能力の効果は、以前、弱い魔物で実証済みだ。
「グルアアア――ァ?」
僕にぶつかったファングボーンが、きょとんと両目を見開く。
ま、さすがに驚くよな。
文字通りファングボーンのすべてを使った攻撃が、僕にまったく通じていないのだから。
いまの僕は傷ひとつ負っていない。
痛みも感じていない。
ただただ静かに、焦りを滲ませるファングボーンを観察していた。
「さて、そろそろいくぞ」
僕は剣を抜き、攻撃の体勢に入る。
このスキルの持続時間はもって5秒。再使用には3分のクールタイムが必要となる。……どういう原理かはわかりかねるが、これがこの一週間、僕の導き出した結論だ。
「淵源流、一の型、冥府ノ一閃」
「ウグアアアアアアッ!」
僕の繰り出す剣技に、ファングホーンはなすすべもなく倒れた。
「……あの、アリオスさん?」
「はい?」
「な、なんか、また強くなってませんか? あの決闘の時とはもう比べ物にならないような……」
「はは……そうですかね」
まあ、あのときから強力なスキルを二つも習得したからね。
新たな境地に達したことは間違いないだろう。
……とはいえ、真の剣聖は
あの初代剣聖のように、いかに強くとも謙虚に進んでいくべきだと思う。ダドリーに勝ったからといって、それで慢心するつもりは毛頭ない。
「僕なんてまだまだですよ。もっともっと……強くならないと」
「
「そうですね。5秒だけいっさいダメージを受け付けない力を得たので」
「なにそれやばい!!」
カヤが大きく目を見開く。
「はぁ……敵わないですね、もう……」
呆れ気味に額に手をやるカヤ。
だって本当のことだ、仕方ない。
――ダドリー・クレイスとの決闘から一週間。
僕は順調にギルドの依頼をこなしていた。ランクは相変わらずDのままだが、謎の信頼度によって、Cランクの依頼までなら受けられるようになっていた。
今回、指定Cのファングボーンと戦っていたのもそれが理由だ。
そして《たぶんいらないけど念のため》という理由でカヤもついてきた。
本当に謎の信頼度である。
ギルドマスターのアルトロも、
「アリオス殿ならどんな依頼でも達成できると思うがのう」
と言っていた。
これも買いかぶりすぎである。
まあ、それでもBランクの依頼を僕に振ることはさすがに難しかったようだ。
実力の問題ではなく、本部の都合的に。
「アリオスさん、これなら近いうちCランクへの昇格もあるんじゃないですか? というより、Sランクより上の存在になるかも……」
「Sランクより上……?」
「規格外ってことです。まさにアリオスさんにぴったりの言葉ですね!」
「や、やめてください……」
なんだよランク《規格外》って。
もはや常軌を逸しているじゃないか。
僕はコホンと咳払いをかますと、ファングホーンの死体を見下ろして言った。
「……ともあれ、こいつを処理したら帰りましょう。もう日が暮れますし」
「そうですね。私としては、もっと二人の時間を楽しんでもいいですが」
「なに言ってんですか、もう……」
僕はため息まじりに呟く。
そうしてファングボーンの死体に歩み寄ろうとした――その瞬間。
「…………む」
僕はぴたりと動きを止める。
そして視線だけを後ろに向け、
「どうしました――って……」
カヤも遅れて謎の気配に気づいたらしい。表情を引き締め、僕と同じ方向に目を向ける。
(アリオスさん。なにか……いますね)
(ええ。悪意は感じませんが……いったいなんでしょうか……)
もしかしてアルセウス救済党の手の者か。
いや、だったら悪意がないのはおかしい。僕の立場だったら恨まれていて当然のはず。
じゃあ、この気配はいったい……
「たす……けて……」
――ドサッ。
奇妙な音が聞こえたのはそのときだった。
いまのはなんだ。
もしかしなくても、「助けて」と言っていたような……
僕はカヤと目を合わせると、警戒しつつ気配の方向に進む。
「あっ……これは……」
カヤが大きく見開いた。
痩せ細った少女が、草むらのなかに倒れていたからだ。
「この子は……奴隷……?」
カヤが小さな声でそう言った。
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