おい、外れスキルだと思われていた《チートコード操作》が化け物すぎるんだが
★
「ん……?」
気づいたとき、僕は真っ白の空間にいた。
周囲にはなにもない。
ただ虚無の空間が広がっているだけ――
「ここは……どこだ……?」
知らず知らずのうちにそう呟く。
僕はさっきまでヴァニタスロアと戦っていたはず。みんなと共闘して、トドメの一撃を決めて、それで……
「アリオス」
背後から女性の声が聞こえた。
その声は――僕が想像していたものと同じで。
「女神様……ですか」
「はい。……ヴァニタスロアが倒れたことで、すこしだけ力を取り戻したようです」
振り向くと、そこにはやはり女神ディエス。
かつて《映像》で見たときと変わらない、この世のものとは思えぬ美しさを持つ女性だった。
そして。
「――よくやったぞ。真の剣聖、アリオス・マクバよ」
続いて現れるのは、やはり見覚えのある男。たくましい身体つきに尋常ならざる風格を持った、マクバ流の創始者。
初代剣聖、ファルアス・マクバだった。
「ふふ、こうして直に会うのは初めてだな。会いたかったぞ。我が子孫よ」
「ご先祖様……」
なんだろう。
リオンなどよりも、圧倒的な優しさを感じる声音だった。
「ご……ご先祖様か」
ファルアスはむず痒そうに後頭部を掻く。
「そう固くならなくていいさ。長い時間が経ったとはいえ、血の繋がりのある者同士。気楽に呼んでくれや」
「気楽に……」
うーん、さすがにそれこそ恐れ多いような。
だって初代剣聖だぞ?
リオンをはるかに超越した、それこそ伝説の人物だ。
「ふふ、あなたのそういうところ、オルガントにそっくりですね」
「ええい、あの女好きと一緒にするな!」
優しく呟く女神に、突っ込みをいれるファルアス。
オルガント……というのは初代国王か。
会話内容がとてつもなく壮大だな。
改めて、僕の場違い感が伝わるというか。
「っとと、そんな下らねえ話をしてる時間はないんだよ」
ファルアスはふいに表情を改めると、僕に右腕を差し出した。
「よく頑張ってくれた。おまえこそ俺の誇りの子孫で――真の剣聖だ」
「はは……ありがとうございます」
苦笑を浮かべつつ、握手に応じる僕。
「でもあいつを倒せたのは僕だけの力じゃありません。レイにカヤさん、ユウヤさんにラッセンさんもいたからですよ」
「おう。その謙虚さがあれば、おまえさんはまだまだ強くなれる。いまよりも……ずっとな」
いまよりも、ずっと。
そうだな。
正直、チートコード操作というスキルはまだまだ伸びしろがある気がする。
むしろ現在の能力は序の口にすぎないような。
そんな予感がするんだよな。
ほんと、外れスキルだと思われていたのに、化け物すぎるんだが。
「でも……あなたたちは大丈夫なんですか? なにか僕に託そうとしているように思えましたが」
「そうだな。ちょうどその話をしようと思ってたところだ」
ファルアスは表情を引き締めると、厳かに告げた。
「アリオス。おまえにはさらに強くなってほしい。きたる災厄に備えてな」
「災厄……」
穏やかじゃない言葉だな。
「俺たちがこうして思念体だけ残せているのも、災厄に備えてのことだ。ま、《転生術》の劣化版みてえなもんさ」
「はは……すごいですね。スケールが大きすぎて……いきなりは理解できないですが」
「まあ、無理もないでしょう」
女神ディエスが薄く微笑む。
「
「ええ……わかりました」
僕が静かに頷くと、女神とファルアスの身体が唐突に薄れ始めた。
「もう……時間ですか」
「はは。すまねえな。そう長くは持たねえんだ」
ファルアスは申し訳なさそうに苦笑を浮かべると、力強く僕の肩に手を置いた。
「――嬉しかったぜ。俺の子孫に、おまえさんのような有望な男がいてよ」
「ファルアスさん……」
「頼む。おまえさんなら、きっと――」
そこまで言いかけて、女神とファルアスは姿を消した。
★
「…………」
視界が元に戻る。
真っ白だった景色が、見覚えのあるバトルアリーナ会場に戻っていく。
あの二人が言っていたように、ヴァニタスロアは無事倒せたようだ。会場のほとんどを埋め尽くす形で突っ伏している。
レイも、カヤも、ユウヤも、ラッセンも。
みんな無事のようだ。
さすがに疲れているようだが、重傷を負った者はひとりもいない。
――勝った。
僕たちは勝ったんだ。
パチパチパチ、と。
どこからか拍手が聞こえた。
そこからはもの凄い勢いで拍手が拡散されていき、会場一帯が大きな音で埋め尽くされる。
ヴァニタスロアとの戦いはそんなに時間がかからなかったからな。まだ多くの観客が残っていたんだ。
「うおー!! すっげえ!」
「きゃーアリオス様ー! ありがとう!」
「助かったぞー!!」
「かっこよかったよー!!」
いまとなっては、ほとんどの観客が僕の強さを認めてくれたようだ。投げかけられる声が、さっきとは全然違う。
――みんなを守れてよかった。
すこしは頑張った甲斐があるというものである。
だがそんな僕の感慨を、一瞬にして吹き飛ばす奴がいた。
「素晴らしい! さすがは私の息子だ! やはりおまえこそマクバ家にふさわしい、私はわかっていたぞ!!」
剣聖リオン・マクバだった。
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