真の剣聖となれ
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戦いは佳境に入っていた。
僕が《吸収》でみんなの防御に徹しつつ、レイやカヤたちに攻撃役を担ってもらう。
……途中でリオンがヴァニタスロアに吹き飛ばされた気がするが、うん、あれは見なかったことにしておこう。
仮にも剣聖だからね、問題ないだろう。
あの奇襲のせいで、大事な攻撃チャンスを失った。
自分でも性格の悪さを自覚しつつ、あのときだけは《吸収》を解除させてもらった。
「うぅ……」
壁にもたれたまま、ダドリーの隣で気を失う剣聖リオン。
最初から期待はしていないが、戦力としては数えられないだろう。
ヴァニタスロアは、僕たちだけで倒すしかない。
「ウガァァァァァァァァァア!!」
真紅の瞳を尖らせ、怒りの
そのまま全身をしならせ、無数の黒炎を放ってくる。もちろん《吸収》を使っているので、そのすべてが僕に襲いかかってくる。
「アリオスっ!」
心配そうにレイが叫んでくるが、これしき問題ない。
宝剣レバーティで炎の対処をしつつ、僕は能力のひとつ《対象の体力の可視化》を使用する。
そして一番近くにいたラッセンに向けて、叫び声を発した。
「ラッセン! 左足! 左足を狙ってくれ!」
「アリオス様のためにィーーー! ぬんっ!」
ラッセンは突進をしつつ、背負った大剣を剛胆に振り払う。
C級冒険者とはいえ、攻撃力4倍となった大剣の威力は馬鹿にできないはず。
「ギャアアアアアアッ!」
ヴァニタスロアは悲鳴をあげて仰け反る。さらに攻撃チャンスだ。
「また怯んだ……?」
「さっきから怯みが連発してますけど……アリオスさんはこうなることがわかってるような……」
それぞれに呟くユウヤとカヤに向けて、僕は再び声を張る。
「二人とも、今度は右足を! お願いします!」
「りょ、了解!」
「いきます!」
今度は二人でヴァニタスロアの右足を斬りつける。さすがBランクとAランクの冒険者だけあって、隙のない身のこなしだ。
――ズドン、と。
右足のゲージを切らしたヴァニタスロアが、その場に崩れ落ちる。
いまだ!
僕はすべての黒炎を消滅させると、ヴァニタスロアに向けて疾駆する。
「アリオス!」
その隣に並ぶのはレイ。
ずっと僕に付き添ってくれたお姫様にして幼馴染みだ。
「私もいく! だから――!」
「ああ。頼む!!」
「うん!」
レイは右腕を光らせ、ヴァニタスロアに向けて聖魔法を敢行。
いくつもの光の筋が、天空からヴァニタスロアを襲う。強化しているのはあくまで攻撃力なので、大きなダメージにはならない。だがそれでも、起きあがろうとするヴァニタスロアの動きを封じるに一役買ってくれた。
「おおおおおおおっ!」
走りながら、僕は意識のすべてを剣に集中する。
なんだろう。
またほのかな温もりに包まれたような。僕の隣で初代剣聖ファルアスが応援してくれているような。
――真の剣聖となれ、アリオス。
脳裏に聞こえてきたその言葉に、僕はまた新たな境地に至った気がした。
淵源流、一の型。
真・神速ノ一閃。
僕のありったけの力が、ヴァニタスロアに刻まれた。
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