おい、いきなりダイブするな
さて。
ラスタール村に到着した僕たちは、ギルドマスターのアルトロから手厚い出迎えを受けた。
アルセウス救済党の件は彼の耳にも入っていたようだな。
僕たちの帰還を目撃するや、老体とは思えぬスピードで出迎えてくれた。
ラスタール村の住人としてワシも鼻が高い。
お主こそ真の剣聖じゃ。
などなど……
ちなみにだが、ギルドからの正式な報酬は明日になるらしい。まあ仕方ないよな。そもそも事件そのものがイレギュラーだったうえに、夜も遅い。
僕は
ちなみに家というのはレイの母の実家だ。当人はすでに亡くなってしまっているが、取り壊さず、そのままにしているらしい。きっと村人なりの配慮だろう。
「ふぅ……」
僕はベッドの端に座りながら、今日のことを考えていた。
ホワイトウルフ。
アルセウス救済党の構成員たち。
実に多くの戦闘があったが、その過程で、通常ありえない物を手に入れた。
それが――いま僕が片手に持っている《漆黒の宝石》。
構成員たちは、これをもって魔物たちを召喚していた。なにもなかった空間から、転移でもさせてきたかのように。
まさに常軌を逸した力を持っているという他ない。
こんなもの、いったいどこから入手したのだろう。
そして……常軌を逸した力でいえば、気になるのはそれだけじゃない。
――――――
使用可能なチートコード一覧
・攻撃力アップ(小)
・火属性魔法の全使用
・対象の体力の可視化
★対象の攻撃力書き換え(小)
――――――
対象の攻撃力書き換え(小)。
先の戦闘の後に手に入れた能力だ。
能力名からなんとなく意味を察してしまうが……もしその通りだとしたら、これも常識を飛び抜けた力と言う他ない。
実際に試してみたいところだが、もちろん、いまは使うときではない。トラブルが起きたら困るからね。
とりあえず今夜はゆっくり身体を休め――
「隙ありっ!」
「…………」
られないようだ。
ベッドにダイブしてきたレイを、僕は軽々と避ける。幸か不幸か、淵源流はこんなところでも役に立つようだ。
「むー」
不満そうに唇を尖らせるレイ。
「アリオスー。なんで避けるのよぅ」
「そりゃ避けるだろ……」
ぶつかったら痛いし。
「…………じー」
そのまま獲物を狙う魔物のように視線を研ぎ澄ますレイ。
そして。
「えいやっ!」
またも飛びかかるレイを、僕はさっと避ける。
「てい!」
ささっ。
「やぁ!」
さささっ。
「はぁ……はぁ……。もう。本気出さないでよぅ」
「自分は本気出しといてよく言うよ……」
これはまあ、アレだな。
彼女お得意の《くすぐり》攻撃だ。
昔はよくやられたもんだが、時が経つにつれ、僕が避けることが多くなっていた。まあ、それだけ身体能力に差が出てきたってことだ。
……そうだ。
「レイ。いまの僕は護衛候補としてではなく、単にマクバ家を追放された身。つまり昔よりは自由な行動ができるようになってるってことだ」
「……うん? それが?」
きょとんとするレイに、僕は悪い笑顔を浮かべる。
「ふふ。つまり、やり返しても父上から怒られないってことさ」
淵源流。
一の型。
神速のくすぐり。
「え、あっ……。あははははははっ! やめて、ちょ、あははははははは!」
涙混じりに笑い転げるレイ。
「お二人とも、ご飯できましたよー。……って」
そこをメアリーに見られた。
「な、なにしてるんですか二人とも……」
いい歳した大人のくすぐり合戦。
しがらみのない田舎暮らしならではの一幕だった。
ちなみにメアリーの料理は相変わらず絶品だった。
食べれば食べるほどご飯が進むというか。しかも僕の好みを覚えていてくれたらしく、僕の好むメニューが多く振る舞われた。
これで《お金はいらない》とは、僕はどれだけ恵まれているんだ。
いずれは、メアリーにも喜んでもらえるようにお金を溜めないとな。そのためにも、ギルドの依頼を積極的にこなしていく必要があるだろう。
そんな、騒がしくものどかな一夜は、瞬く間に過ぎていった。
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