おい、不思議な道具を確保したぞ
決着は一瞬でついた。
あれほど威勢の良かった男たちは、立ち上がる気配もない。
地面に横たわったまま、「ぅぅぅぅぅう……」と呻いているのみ。
まあ、当然のごとく致命傷は与えていない。
前述の通り、こいつらから聞き出したいことは山ほどあるからな。
「え……えっ?」
メアリーが素っ頓狂な声をあげる。
「お、終わったんですか? こんな一瞬で?」
「ははは……そうだな。どうやら、思っていたほどは強くなかったようだ」
「そ、そんなことないと思いますけど……。私、さらわれたときなにも見えなかったですし……」
「そうなのか?」
まあ、とはいえメアリーは戦闘に関しては素人。こいつらの動きが見えなかったのも無理はない。
この男たちは、せいぜいがDランク冒険者くらいの強さじゃないかな。たぶん。
「……さて」
そんな話をしている場合じゃない。いまはやるべきことがあるはずだ。
「アルセウス救済党……たしかそんなこと言ってたよな」
アルセウス救済党。
それすなわち、国内で暗躍する過激派組織だ。独自の考え方で《王国のありかた》を説いており、敵性勢力には暴力さえ厭わない。
ときどき大規模な事件を起こして、大きなニュースになることもある。
そのアルセウス救済党がこいつら――か。
ありえない話ではない。
実際にも、アルセウス救済党の構成員はローブを身にまとっていると聞いたことがある。
「くそ……化け物め……!」
構成員のひとりが憎々しげな声を発する。怒りのこもった瞳で睨みつけてくるものの、残念ながら身体はボロボロなまま。立ち上がることもできず、全身をぷるぷる震わせている。
「よくよく考えれば、貴様ら、どうやって侵入してきたのだ……! 部外者には立ち入れぬ仕様になっているはずだ……!」
「ああ。それなら入り口を叩き割ってきた。手荒なことをしてしまったが……そこはまあ、お互い様だろう」
「叩き割っただと……! 馬鹿な!」
構成員がぎょっと目を見開く。
「万一に備えて、入り口には幾重にも防御魔法を張っていたはずだ! いかに
「そんなこと言われてもな……」
実際にも、攻撃力アップ(小)で破壊できたわけだし。それ以外の小細工は一切ない。
「……まあ、そんなことより」
僕は剣の切っ先を構成員らに向け、意識して声のトーンを落とす。
「貴様らが不穏な動きをしていることはとうに掴んでいる。これ以上痛い目に遭いたくなくば――話してもらおうか」
「く、くっ……!」
「なんという気迫……!」
構成員たちが青ざめた表情で後ずさる。尻餅をついたままだから、情けないことこの上ない。
「くそ……! かくなる上は……!」
構成員のひとりが懐から漆黒の宝石を取り出す。心なしか、先日手に入れた《真紅の宝石》とどことなく似ていた。
「ぬ……」
僕は目を見開く。
宝石から発せられるおぞましい気配。宝石そのものが邪悪な波動を発し、なにかを呼び寄せているような……
「…………!」
「アリオス様!!」
メアリーが叫ぶより数秒前に、僕は気づいていた。
さっきまでなにもなかった空間に、突如としてホワイトウルフが出現するのを。
「させるかッ!!」
僕は咄嗟に駆け出し、出現したホワイトウルフを倒す。
と同時に構成員たちにも攻撃し、ひとまず気絶させた。このまま放っておいたらまた厄介なことを起こしそうだからな。いったん拘束すべきだと考えた。
もちろん、漆黒の宝石はしっかりと確保する。
やはり、魔物の大量発生はこいつらが噛んでいたようだ。
と。
「アリオス君! 無事かい!?」
ちょうどいいタイミングで、ユウヤが駆けつけてくれた。たったいまホワイトウルフとの戦闘が終わったらしい。身体の各所に傷はあるが、ひとまず無事そうだ。
「……って、あれ? もう終わってる?」
「はい。……すみませんユウヤさん、冒険者の方々をここに呼べないでしょうか。あいつらを拘束して――色々と情報を引き出す必要がありそうです」
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