9月22日、2020年シーズンの今季途中、MPモータースポーツからF2選手権に参戦していた松下信治が、ロシア・ソチのレースを目前に控えた22日に突然チームから離脱したことが明らかになった。

 シーズン前半は予想外の不振に苦しんでいた松下だったが、第6戦スペインのレース1で優勝を飾り、復調をアピールしたばかりだった。チームを離れ、日本への帰国途中にある松下にチーム離脱の経緯、そして今後について聞いた。

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──先ほど、パリに着いたばかりということですが。

松下信治(以下:松下):はい。パリ経由でこれから日本に帰るところです。数日前にオランダでチームと話し合って、その後、イタリアのアパートを引き払ってきました。

──今回、このような形で急に離脱することになってしまいましたが、シーズン途中でシートを失うことになった経緯を話して頂けますか。

松下:ひと言で言えば、スパ・フランコルシャンのレース1でクラッシュして、マシンを全損させてしまった。その修理費が全額はとても払えない。それでチームとしては僕の代わりに資金を持ち込めるドライバーを乗せざるをえないと。プライベートチームなのでそのお金がないと、レース活動自体が続けられないということです。仕方がないです……。

──スパのクラッシュがチームメイトとの同士討ちだったということも、影響があったのではないか。そんな見方も日本では出ています。

松下:いや、それはまったくないですね。あの事故の時点であれは純粋にレーシングインシデントだったということでチームも納得してます。純粋にお金の問題です。あのクラッシュでエンジンを全損していました。それは保険が下りないらしく、加えて、マシン後部が全部壊れてしまったので、他にもクラッチやギヤボックスなども破損していました。後ろからぶつかっていなければ、こんなことにはならなかったと思います。

──日本に帰国して、今後の予定は決まっているのでしょうか。

松下:まだ具体的なことは何も決まっていないです。お世話になったスポンサーさんへの挨拶まわりやレース関係者にお会いして、ベストな体制で来シーズンを迎えたいと思ってます。

──今シーズンの途中から日本のレースに参戦する可能性はあるのでしょうか?

松下:いまのところは未定ですが、その可能性は低いです。

──2021年の来シーズン、日本で走ることになってもフォーミュラにこだわりたい?

松下:そうですね。スーパーGTに乗らないということではもちろんないですが、できればフォーミュラに乗りたいです。ただ、来シーズンはDTMが実質的に消滅してしまう。そうなると、そこであぶれたドライバーが日本に来ることは十分予想できる。椅子取りゲームになってくると思うので状況は厳しくなるでしょうね。

──今後のレース活動は国内に限定するのですか?

松下:そういうふうには決めていないです。可能性はすごく小さくなってしまいましたが、F1に行きたいという気持ちはいまも変わりません。これまで応援してくれた人たちのためにも、その気持ちは持ち続けるつもりです。F1に行くという気持ちをぶれずに持ち続けたことが、これまで決して平坦じゃなかった僕のレースキャリアの支えになっていましたから。