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日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 作者:アサヒ

第一章: 初めましてとご挨拶

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16話: Больно

前話のきゅうりが好評で、作者は大満足です(*´ω`*)


✳︎この物語はフィクションんです。実在の人物や団体、法律等とは関係ありません。

 今俺は、海の上に仰向けでぷかぷか浮きながら、ゆっくりと流されている最中だ。

 なんだろう、今日は縦より横になっている時間の方が長い気がする。

 ……………縦になるってなんだよ。


 時刻は午後三時。

 海の家での昼食を挟んで、少しビーチバレーをした後、暑いからとまた海に入った。

 ただ今回は浅瀬では無く、そこそこ沖まで出てきている。

 午前はチーナが怖がって行けなかったのだが、海に慣れてきたのだろう。


 暑い日差しを受けながら冷たい海水を背中に浴びるのは、とても気持ちいい。


 少し離れたところで、クラスメート達がワーワーはしゃいでいる声が聞こえる。


 バナナボートに乗ったり落ちたりする者、浮き輪に捕まって波を感じる者、楽しみ方はまちまちだ。


 そして、俺の近くにはまたも総司が浮いている。

 否、流されているフリをしてさりげなく近づいたのだ。



 海の中において俺は無敵。



 さあ、いまこそ復讐s……


「ヨリー!」

「鏡くん清水くん!やっほ〜」


「ん、鏡だと?………あぁ、いたのか」



 ………………バレた。


 お前なんやねん。危険が迫ったら自動でフェロモンでも出るんか?ミツバチか?


 そういやいつもやられっぱなしで、対抗出来た記憶がない気がする。

 腹立つなぁおい。


 心中で毒づきながら呼びかけられた方を見ると、アヒルの浮きを抱いたチーナと、逞しくも泳ぎの秋本がこちらに近づいてきていた。


 上手く隙をついて集団から抜け出したのだろう。

 クラス集団が気付いた様子はなく、変わらず騒いでいる。


 「チーナちゃんが鏡くんと遊びたいみたいだから来たんだ。もう2人とも!せっかく集まったのに別行動はよくないよ」

 「あんな事あって一緒に遊べるかよ」

 「ごめんってぇ」


 両手を合わせて謝る秋本。


 そんな風に秋本と立ち(泳ぎ)話していると、会話が切れたタイミングでチーナが話しかけてきた。


『すごいねヨリ!海!広くて深い!』


 すごく興奮している。

 初めこそ陸から離れることに少し怯えていたが、今はとても楽しんでいるようだ。

 とはいえ、それでも大きく表情に現れているわけではないが、まぁ俺には分かる。


 嬉しそうに話しながらアヒルに顔を埋めるチーナ。

 ビニールでできた黄色いアヒルの肌に頬ずりしつつ、水の感触を味わうかのように頬が緩んでいる。



 ………………可愛いなおい。

 そのまま黒猫パンケ◯キ歌ってみ?



 それはともかくとして、楽しんでいるようで何よりだ。

 俺も思わず口元が綻ぶ。

 来る前はどうなることかと心配したが、杞憂だったな。


『子供かよ。あんまりはしゃいで、クラゲに刺されたりすんなよ?』

『クラゲ?刺されたらどうなるの?』

『めちゃくちゃ痛くて、最悪溺れる』


 それを聞いて、こわ〜っと言った感じのチーナ。


「クラゲなんて、気をつけてどうこうなるもんなのか?」


 そこへ、総司が仰向けのまま近づいてきて、会話に加わってきた。

 こいつ、さらっと器用な泳ぎするな………。

 て言うか、なんでクラゲの話って分かったん?


「一応、クラゲ避け効果のある日焼け止めもあるらしいけど、日本じゃなかなか見ないな」

『何て言ってる?』

『クラゲ超怖くって帰りたいってさ。あ、こいつ総司な』


 そんな大した事ない会話をしばらく続ける。

 降り注ぐ太陽、冷たい海水、和やかな会話。


 悪くない。来年は少人数で遊びに来るのも良いかもな。





 そう………思った時だった。





 「больно(ボーリナ)!!!」




 突然、今までに無いほどの声でチーナが叫んだ。


 "痛い" …………と。




 まじかよ………クラゲか。




 チーナの叫び声を聞いて驚く秋本。

 クラスの連中や周りの海水浴客にも聞こえたのか、一斉に注目が集まる。


「なんだなんだ!?」

「溺れてるの?」


 っとにわかに辺りがざわつきだした。


 恐らく盆あたりから湧き出すアンドンクラゲ。

 あれに刺されると………かなり痛い。


 電撃が走ったような激痛とそのショックで溺れかけてしまうことも多い。


 実際、チーナは完全に混乱してしまい、浮きから手を離して暴れていた。

 むやみやたらに手を振り回し、必死に沈まないようにしているが、痛みとパニックのせいで逆効果になっている。


「ヨリ!ごぼっ……ヨリ!」

「チーナちゃん落ち着いて!」



 水を吸い込みながらもがくチーナに、すぐ近くにいた秋本が手を差し伸べようとする。

 だが、それはまずい。


 「近づいたらだめだ秋本!抱きつかれたら二次被害だ!」

 「じゃあどうしたら……」


 泣きそうな顔をする秋本が言うが早いか、その横を一瞬で通りぬけ、俺はチーナの横に回る。


『すまんチーナ、少し触るぞ』


 一応そう断ってから、彼女の正面方向から右手を背中に回し、グイッと引き寄せ頭を海水から出す。

 チーナはまだ暴れているが、彼女程度の力で抜けだされる事はまず無い。

 これで呼吸は大丈夫。後は………


「総司!!」

「タオルとライフセーバーだな!」


 俺が伝えるより早く総司は意図を理解し、言い終わると同時に陸に泳ぎ出す。

 こういうところ、奴は察しがいい。

 まったく、この頭の良さをもっと有意義に使えばいいのに。


「秋本も、クラスの連中連れて陸に戻れ!」

「わ、わかった………って、はやっ!」


 近くにまだクラゲがいるかもしれないため、秋本にそう指示して俺も陸に向かう。


 右腕でチーナが呼吸できるように固定しつつ、左手と足で水をかく。

 普段の、重い装備をつけ浮きにくい筋肉ダルマを運ぶ訓練に比べれば、チーナ1人くらい造作もない。


 流石に総司にはどんどん距離を離されるが、後ろで同じく陸に向かい始めたクラスメート達が追いついてくる気配は皆無。


『痛い………ヨリ、ごめん………』

『大丈夫だ問題ない。動かなくていいから息だけしてろ』


 少し落ち着いたチーナが、まだ痛そうに言葉を絞り出したので、安心させるために声をかける。


 実際、痛みに耐えながら自分で泳がせるより、俺がこうして運んだ方がよっぽど速い。

 いや、海慣れしていないチーナなら、万全の状態でもこの方が速いだろう。

 日頃の訓練………活きるもんだな。


 クラスメート集団から距離を離しつつ、順調に浜に近づき、程なくして上陸。


 波打ち際にチーナを座らせ、様子を見ると、左の足首に細長くミミズ腫れが出来ていた。


 まだ少し触手も残っているな……。


 よく見ると傷口に細いヒモのような物………触手が付着している。

 その触手に付いている刺胞を刺激しないよう、ピチャピチャと海水で優しく洗っていると、


「伊織、連れて来たぞ」


 タオルを持った総司が若い男性を連れて来た。

 黄色と赤の目立つ服装………ライフセーバーだ。


「大丈夫ですか?傷口見せてください」


 心配げに声をかけて来たその男性に場所を開けつつ、タオルを使って軽く触手を除去する。

 それを見た男性は、「慣れてるんですね」っと少し感心した様子だった。


 まあ、シーズンオフの遠泳とかで、経験あるんで………。

 なんなら自分で自分の処置をしたことすらある。


 とは言っても、流石にライフセーバーの方がそのあたりは詳しいので、見てもらった方が俺も安心だ。


 ひとしきり様子を見て、男性は安心したように口を開いた。


「アンドンですね。とりあえず大丈夫だと思います。後は冷やして、不安なら病院を受診してください」

「そうですか。よかった」


 それなら後遺症や傷跡が残る事も無いだろう。

 タチの悪い奴じゃなくて良かった。


 ひとまず安心して、去っていくライフセーバーの男性に礼を言う。


 その後、少しの間そこでチーナを休ませていると、



「大丈夫かクリス!」



 ようやく海から上がった佐々木が呼びかけて来た。

 血相が変わっているのは、心配のせいか急いで泳いだ息切れか。

 見ると、他のクラスメートも同様の様子で上陸している。


 真っ赤な顔でどしどしと近付いてくる佐々木。

 変に騒がれても面倒だから、ひとまず問題ないことを伝えよう。


 そう思って口を開きかけたが、その前に俺の魂胆は打ち砕かれた。





「鏡てめぇ!!! クリスに何をしたんだ!!!!!」






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く↑ろ↓ね↑こ↓とパンケ◯キつくる♪

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