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「すっ……すみません……熱が入りすぎました……」
苦笑いする隊長を見た実桜は、一気に恥ずかしくなった。大好きなブルーインパルスの話題になると、実桜は周囲が引いてしまうほど、それはもう熱く語ってしまうのだ。
隊長は苦笑しているけれど、まんざらではなさそうである。自分が率いる部隊を、べた褒めされたのだから、誰だって嬉しくなるだろう。
「親父さんから聞いたんだが――藤咲は5番機パイロットに憧れているそうだな」
「はい。父さんの自慢を聞いているうちに、いつの間にか憧れるようになっていたんです。だから一緒にデュアルソロを飛びたくて、6番機パイロットに志願しました。でも――わたしがブルーインパルスを目指したのは、彼への憧れだけじゃありません。父さんが飛んでいた空を飛びたくて、わたしはブルーインパルスのパイロットを目指したんです」
「そうか……。藤咲2佐の娘のおまえなら――神矢の心の傷を癒やせるかもしれんな」
「えっ……? それはどういう意味ですか? 確か神矢って5番機の――」
「ああ、いや……なんでもない。ただの独り言だから忘れてくれ」
気になる謎を残して椅子から立ち上がった隊長は、実桜に逞しい右手を差し出した。
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