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「おまえの親父さん――藤咲勇輝2等空佐もな、実は配属初日に大遅刻したんだよ。それで当時の飛行隊長が、遅刻した理由を訊いてみたら、『ブルーインパルスの飛行訓練に見惚れてしまって遅れてしまった!』って言ったんだ。娘のおまえも、まったく同じことを言ったから、思わず笑ってしまったんだよ」
実桜はびっくり仰天した。まさか勇輝も同じ理由で遅刻していたなんて、聞かされるまで知らなかったからだ。血は争えないというのは、まさにこのことを言うのだろう。嬉しいやら恥ずかしいやら、とても複雑な心境である。
「それでみんなの飛行訓練はどうだったんだ? 時間も忘れて夢中になるくらいなんだから、すごかったんだろう?」
「はい! もちろんです! レターエイトは見ていてハラハラしましたし、ボントンロールとか、スタークロスとかの、編隊課目はうわーってなりました! 5番機のアクロバットも迫力があって、もう最後まで目が離せませんでした! さすがブルーインパルスって感じです!」
実桜は身振り手振りを交えながら一気に喋った。実桜の頬は上気していて、大きな瞳は嬉々と輝いている。
ブルーインパルスの素晴らしさは一言では語り尽くせない。隊長が「分かった分かった」と止めなかったら、きっと実桜は1日中喋り続けていただろう。
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