コロナ禍を機に、自宅などで仕事をするテレワークが広がっている。経験した人たちからは、時間を有効に使えるといった肯定的な評価や、今後も続けたいという声が聞かれる。同時に、働く時間が長くなりがちなどの問題も見えてきた。
テレワークはこれまで、多様な働き方の選択肢の一つという位置づけだった。しかしコロナ禍のもとでは、望むか否かにかかわらず、より多くの働き手が直面する課題となった。
働き手の不利益になったり、働く人たちの間で格差が生じたりすることのないよう注意し、労使双方が利点を実感できる制度へ育てなければならない。
東京商工会議所が会員企業を対象に行った調査では、テレワークの実施率は緊急事態宣言の前後で26%から67%に増えた。宣言解除後も続ける企業が少なくない。
一方、連合の調査では、テレワークをした人の半数以上が通常の勤務より長時間労働になることがあったと回答。残業や休日労働を申告しないことがあった人は65%に上った。
通信費などの費用について勤め先から補助がないとする人や、私物のパソコンやスマートフォンを使っているという人も目につく。
こうした課題を洗い出し、テレワークの普及・定着につなげようと、厚生労働省は先月、有識者検討会を立ち上げた。約2万社を対象に実態を調べ、新たなルール整備の必要性などを検討するという。
2年前に改定した指針にはすでに、労働時間の適正な管理の必要性や、長時間労働を防ぐためのメール送付の抑制などの方策が示されている。指針に不十分な点はないか、実態を踏まえて検討してほしい。
4月からは同一労働同一賃金のルールを強化する法律が大企業に適用になった。だが、非正規雇用の人たちの中には、テレワークを希望しても認めてもらえないという声がある。非正規であることを理由に認めないのなら、法律が禁じる不合理な待遇差に当たる可能性がある。
厚労省は経済団体などを通じて、非正規雇用の人も含め、雇用維持への配慮やテレワークなどの活用促進を要請している。周知徹底を求めたい。
紙ベースの書類確認や押印が必要な業務慣行の見直し、なかなか導入が進まない中小企業への支援も課題だ。
業種や職種によっては、テレワークになじまない仕事や、やりたくても出来ない人たちもいる。長期化も予想されるコロナ禍のもとで、感染を防ぎながらどんな働き方ができるのか。模索を続ける必要がある。
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