12.「どうぞお座りください」と勧める表現
13.「静かにしてもらえますか」とお願いする表現
14.「少々お待ちください」と伝える表現
15.「必ず~してね」と依頼する表現
16. wantを使わずに希望を伝える表現
17. You want to…の意外な使い方
18.「頑張って」と励ます表現
19. OKの使い方には注意が必要
20. 意外と使わないShall I…?
21. ルールについて尋ねるAre you allowed to…?
会社に海外からのお客様が来た、あるいは海外の人が家に遊びに来たとします。
部屋に入って着席を勧める「どうぞお座りください」は英語でどう言えばよいのでしょうか。
「どうぞお座りください」を英語で言うとしたら、多くの人が思い浮かべるのは「座る=sit down」と「~してください=please」を組み合わせた、
Please sit down.
だと思います。
でも、この表現は失礼になることもあると言われています。
なぜPlease sit down.は失礼になるのでしょうか?
「座る」という意味のsit downにpleaseを付けて、丁寧に思えますが、これは「座る」という行為を相手に求める行為なのです。
声の調子や言い方、表情などによっては強制的に響くことがあり、こう言われると命令されたように感じる人がいるかもしれません。
では、ネイティブは使わないかというと、実際には親しい友人などに対して使うことはあります。
しかし、初対面の相手やビジネスの場面では、もっと丁寧な表現を選ぶ方がよいでしょう。
相手に失礼のない丁寧な表現として最もよく使われるのは、
Please have a seat.(どうぞお座りください)
です。
相手に直接的に「座ってください」と言うのではなく「(よろしくければ)どうぞお掛けください」と着席を勧めるニュアンスが出ます。
先日、病院に行ったのですが、そのときも診察室に入ると、この表現で着席を勧められました。
会社で海外からのお客様をもてなす場合にはPlease have a seat.が失礼にならず、丁寧でよいと思います。
Please have a seat.と似ている表現に、
Please take a seat.(どうぞ座ってください)
があります。
これはどちらかというと「座ってください」というお願いを少し丁寧にした感じで、インフォーマルな表現です。
カフェやフレンドリーなサービスのレストランでは、店に入ると店員さんに、
Take a seat. I’ll be with you in a minute.(座ってください。すぐに注文をうかがいます)
のように言われることがあります。
似た表現に、
Grab a seat.(座ってください)
というのもあります。
とてもカジュアルな表現ですが、かしこまらないサービスの店ではよく耳にします。
そのほか、
Please be seated.(お座りください)
もありますが、これは多くの人に向かって言う「ご着席ください」のようなニュアンスです。
言い方としてはフォーマルで丁寧ですが、「座ってください」と指示する表現です。
周りの人がうるさくて迷惑だという場合に、どのように注意すればよいでしょうか。
難しい問題ですね。
まず、Shut up.(黙りなさい)は個人的に絶対に使わない方がよいと思います。
丁寧に「静かにしてもらえますか」とお願いするフレーズを紹介します。
夜の長距離フライトで、後ろの席の乗客の話し声が気になるとします。
他の乗客も寝ている時間なのに、うるさくて眠れません。
そこで「静かにしてもらえますか」とお願いする表現を考えてみましょう。
Please be quiet.(静かにしてください)
でももちろん通じますが、もう少し丁寧に言うとどうなるでしょうか。
形容詞quiet(静かな)を使うなら、
Could/Would you please be quiet?(静かにしてもらえますか?)
と言えます。
Could you…?は可能かどうかを尋ねる、Would you…?は意思を尋ねるという細かい違いはありますが、この状況ではどちらでも大丈夫だと思います。
「話すのをやめてもらえますか」と言いたいなら、
・Would you please stop talking?(お話をやめていただけますか?)
・Would you mind not talking?(お話をやめていただいてかまいませんか?)
が丁寧な表現になります。
どのフレーズを使うにしても、まずExcuse me.(すみません)から始めるとよいでしょう。
また、ただ「静かにしてもらえますか」というだけでなく、静かにしてもらいたい理由を付け加えるのもよいでしょう。
例えば、
I’m trying to get some sleep.(寝ようとしているのです)
と言えば、うるさくて眠れないというニュアンスを感じ取ってもらえるはずです。
「静かにしてもらえますか」は、実は形容詞quietを使わずに言うことも多いのです。
直接的な響きが抜けて、やわらかい感じになるフレーズがkeep…downです。
英英辞典で意味を調べてみると、
to make something stay at a low level; to avoid increasing something(何かのレベルを低く抑えておく;何かを増やすのを避ける)
となっています。
この表現を使って、
・Would you mind keeping it down?(声を下げていただいてかまいませんか?)
・Would you please keep it down a bit?(少し声を下げていただけませんか?)
・Could you keep it down?(声を下げていただけますか?)
・Keep it down, please.(声を下げてください)
などが定番の表現です。
代名詞itは騒音やうるさい声を指し、「話すのをやめてください」ではなく「音量を下げてください」というニュアンスになります。
具体的に、
・Would you keep the noise down?(音を下げていただけますか?)
・Could you please keep your voice (s) down?(声を下げていただけますか?)
と言ってもかまいません。
さらに、a bit / a littleをつけると「ちょっと、少し」という控えめなニュアンスが出ます。
もっと簡単に「やめてもらえますか」は3語で表すことができます。
それは、
Would/Do you mind?
です。
具体的に「~してください」「~しないでください」というのではなく、「やめていただけますか」「やめてもらえますか」の一言だけ言って、相手に気付いてもらう感じです。
これらの「静かにしてもらえますか」というフレーズを人から言われてしまったときにはOh, sorry.(あっ、すみません)と答えればOKです。
以前、日本で歯科に予約の電話を入れたときのこと。
症状を伝え、予約希望日を伝えると「お待ちください」と言われ、保留にされました。
こんなふうに、ビジネスの電話でも相手に待ってもらいたいときに「少々お待ちください」と保留にするのは珍しいことではありません。
でも、私はここでちょっと落ち着かない気持ちになりました。
電話だけでなく、英語で接客することがある人にも知っておいていただきたい「少々お待ちください」の使い方についてです。
英語で電話対応や接客するときの「少々お待ちください」を表すフレーズを見てみましょう。
まずは、電話口で言う表現からです。
・Hold on, please.
・Please hold.
・Just a moment, please.
・One moment, please.
対面で接客するときには次のような表現を使います。
・Can you wait a moment, please?
・Pease wait a moment.
・One moment, please.
英語で応対する際に、こうした表現を知っておくのはとても大事だと思いますが、実はもっと大切なことがあります。
冒頭での歯科の予約の電話に話を戻しましょう。
この会話は英語ではなく日本語だったのですが、私が落ち着かなく感じた理由は「お待ちください」という応答そのものにありました。
具体的に何を「待つ」のかを知らされないまま「お待ちください」とだけ言われたからです。
私も日本で生活していたときには、ただ「お待ちください」と言われて待つことに慣れていました。
しかし、海外生活をしていると、電話でも対面の接客でも、待たせるときには「~するから待ってください」「これから~します」と、待たせる理由、何のために待つかを説明することが圧倒的に多いのです。
例えば、病院に電話をして診察予約をとるとします。
I’d like to make an appointment with Dr… tomorrow.(明日に~医師の予約をお願いします)と言うと上で紹介した「お待ちください」のフレーズに続けて、I’ll see when he’s available tomorrow.(明日の何時に予約がとれるかをお調べします)のように理由を説明されます。
また、誰かに電話をつないでほしいときにもIs Brian available?(ブライアンをお願いします)などと言うと、One moment, please.などに続いて、I’ll put you through.(おつなぎします)と言われます。
ただ「お待ちください」というのではなく、待ってもらう間に自分が何をするのか、何をするから待ってほしいのかを言葉で伝えることが当然と考えられているわけです。
単に「待ってください」とだけ言ってその場を離れてしまったり、電話を保留にしたりすると、相手は何を待たされているのか、待っている間に何が起きているのかがわからず、不安になることがあります。
電話をつなぐ場合には、I’ll put you through.はぜひ覚えておきましょう。
何かを調べたり、確認するために相手を待たせるなら、
・Let me check.(お調べします)
・I’ll check…(~をお調べします)
・I’ll see if…(~かどうかをお調べします)
なども使えると思います。
そのうえでOne moment, please.と言えば、相手は待つ理由がわかります。
接客中ですぐにお客の用件を聞けないときにもPlease wait a moment.だけでなく、
・I’ll be right back.(すぐに戻ります)
・I’ll be back in a minute.(すぐに戻ります)
・I’ll be right with you.(すぐにご用件をうかがいます)
などの言葉を添えます。
「待ってください」ではなく、「すぐにうかがいますから、お待ちください」というニュアンスですね。
英語がわかる人を呼んでくるまで待ってほしいのなら、
I’ll get someone who speaks English.(英語を話すものを呼んでまいります)
と伝えるとよいと思います。
英語では、これから自分が何をするのか(しようとしているのか)を言葉で伝えます。
「今日は7時までに必ず帰ってきてね」「あの本、必ず明日持ってきてね」というように「必ず~してね」という表現は日本語でもよく使います。
これを英語で言うと、どのようになるでしょうか。
Be home by seven tonight.(今夜は7時までに帰ってきなさい)やPlease bring the book tomorrow.(あの本を明日持ってきて)のようにも表現できますが、「必ず」というニュアンスをうまく加えて表現したいところです。
そんなときによく使う表現を紹介します。
この表現は、毎日耳にすると言ってもよいほど、ネイティブはよく使います。
「必ず~してね」という場面で必ず出てくるフレーズはmake sure(確かめる、確認する)です。
定義を英英辞典で見てみると、
ensure that something is done or happens(物事が確実に行われたり、起こるようにする)
となっています。
en-という接頭辞は形容詞の前につくと「~にする」という意味の動詞を作ることが多く(enlarge「~を拡大する」、enrich「~を豊かにする」など)、ensureは「~を確実にする」という意味です。
つまり、上の定義によると、make sureは「何かが起こることを確実にする」ということです。
これが日本語では「必ず~する」に相当します。
場面によっては「忘れずに~する」がしっくりくるときもあると思います。
make sureの後ろには「that+文」が続くのが一般的ですが、口語ではこのthatは省略することが多くなります。
・Make sure you’re home by seven tonight.(今日は7時までに必ず帰ってきてね)
・Make sure you bring the book tomorrow.(あの本、明日必ず持ってきてね)
・Can you make sure he/she gets the message?(彼/彼女に必ず伝言してもらえますか?)
のように使います。
私は病院に電話して診察予約をとったときに、
Please make sure you bring your passport.(必ずパスポートを持ってきてください)
と言われたことがあります。
こんなふうにPleaseを最初につけると「必ず~してください」と少し丁寧な言い方になるので、Please make sure…の形でよく使います。
また、make sure to…は正しい用法ではないという意見もありますが、使われていないわけではなく、
Please make sure to close the door behind you. Thank you.(開けたら必ず閉めてください。よろしく)
のような貼り紙が店のドアに貼られているのも見かけたりします。
「~を確実なものにする」という意味はそのままに、「~を確認する、確かめる」という意味でもmake sureよく使います。
「~かどうかをはっきり確かめる」というニュアンスですね。
例えば、旅行先のホテルの予約を確かめる電話をする場合には、
I’d like to make sure my reservation is confirmed.(予約がコンファームされているか確認したいのですが)
のように言えます。
友達や家族が地震や災害の被害にあっていないか確認したいときなどには電話やメールで、
I just wanted to make sure you are OK.(大丈夫か確認したかっただけなの)
のようにmake sureを使うことも多いです。
また、寝る前にドアに鍵をかけたか不安になったら、
I think the door’s locked, but I’ll go and make sure.(ドアの鍵がかかっていると思うけど、行って確かめてくる)
と、ここでも「確かめる」という意味で使うことができます。
日常会話、ビジネスを問わず広く使われる表現です。
基本の「~を確実なものにする」というイメージさえつかめれば、日本語訳にとらわれずに使いこなせるようになるでしょう。
イギリス英語でとてもよく使う単語についての話です。
こんな状況を想像してみてください。
一緒にコンサートに行く予定だった友達が行けなくなってしまい、チケットが1枚余りました。
別の友達を誘おうと思って「もし行きたかったら教えてね」と英語でメールするとしたら、どんな表現を使うでしょうか。
動詞wantを使わずに「(とても)~したい」「~に乗り気な」と表現できる便利な単語があります。
今回紹介する単語は、英和辞典では最初に「鋭い」という意味が示されていることが多いので、この意味で覚えている人も多いかもしれません。
見当がつきましたか?
その単語とは形容詞keenです。
普段はあまり使いそうにない単語だと思うかもしれませんね。
でも実は、イギリス英語圏では「とても~したい」「~に乗り気な」という意味で、頻繁に耳にする単語です。
例えば、冒頭に出てきたコンサートのチケットの話。
「もし行きたかったら知らせてね」は、
If you are keen, just let me know.
という表現をよく使います。
もちろん、If you want to go,…(もし行きたければ…)やIf you are interested,…(もし興味があれば…)も使えますが、形容詞interested(興味がある)よりも「行きたい!」という乗り気な感じが伝わる形容詞がkeenです。
英英辞典ではこんなふうに定義されています。
(especially BrE) wanting to do something or wanting something to happen very much((特にイギリス英語で)とても何かをしたい、あるいはとても何かが起きてほしい)
では、実際にどのように使われるのか、もう少し詳しく見てみましょう。
私が一番よく耳にしたり目にするのは、上にも登場したIf you are keen(もし~したければ)という使い方です。
押し付けがましくなく、サラッと誘いたい場合などに使います。
英和辞書には「熱望して」という意味が載っていますが、それほど大げさでなく、「もし興味があれば」よりもう少し乗り気な「もし~したければ」くらいのニュアンスで使われていると思います。
be keen to…という形で「とても~したい」という意味でも使います。
want to…より強い希望を表す表現がbe keen to…です。
日本に興味のある海外の人は、
I’m keen to learn Japanese.(ぜひ日本語を勉強して身につけたい)
というふうに使います。
また、be keen on…は「~に夢中である、~に熱中している」のように「好き」というニュアンスが含まれます。
例えば、
He’s keen on Kate.
だと、「彼はケイトに熱を上げている」となり、ヨガに熱中している人のことを、
She’s keen on Yoga.(彼女はヨガに夢中だ)
と表すことができます。
形容詞keenは否定形でもよく使います。
She really wanted to go out, but I wasn’t keen.
なら、「彼女はとても外出したがっていたけど、私は気乗りしなかった」という訳がしっくりくると思います。
I’m not too keen.
は「あまり気乗りしない」というニュアンスが出て、誘いなどをやわらかく断りたい場合にもよく使います。
not too keenは、控えめに「~は好きではない」を表すときにも使えて便利です。
I’m not too keen on karaoke.
なら、「カラオケは好きではない=行きたくない」ことをやわらかく表現できます。
「~したい」と言いたい場合にI want to…を多用しすぎると、子供っぽい話し方に聞こえてしまいます。
「~したい」は様々な表現があるので、ネイティブとの会話の中で新しい表現に出会ったら意識して使ってみましょう。
先日、街でYou want to…の面白い使い方を耳にしました。
その日、海の近くを歩いていたら、向こうから男性2人が歩いてきました。
何気なく見ていると、一人は途中で立ち止まり、もう一人は私とすれ違ってどんどん歩いて行ってしまいました。
そのあたりには多くの屋外アートが置かれていたのですが、立ち止まった男性の目の前には、誰かの言葉が刻まれた石のアートが。
刻まれていた言葉を呼んでいた男性は、先に行ってしまった別の男性に向かって大きな声で、
Hey Rob, you want to read this!
と言ったのです。
「ロブ、あなたはこれが読みたい!」とは、一体どういう意味なのでしょうか。
男性が言ったセリフはこうです。
You want to read this.
相手に質問しているのではありません。
この場面では、相手はもうすでに歩いて行ってしまったので、相手が読みたいかどうかに関係はなく、一方的に声をかけているわけです。
このYou want to…はどう意味なのか、見当はつきましたか?
とっさにうまい日本語訳が出てこないYou want to read this.ですが、実はこのYou want to…は意外によく使います。
英英辞典のwant to…を見ると、下の方にこんな意味が出てきます。
(informal) should or need to do something((インフォーマル)何かをするのがよい、何かをする必要がある)
want to…には、実はこんな意味もあったのです。
You want to…は「~するのがよい」「~したらどう?」とカジュアルに言うときに使う、とても英語らしい言い回しです。
これでYou want to read this.の謎が解けました。
アートに刻まれていた言葉を読みながら「これ、読んでみたら?」と呼びかけていたわけです。
ニュアンスとしては「ちょっとちょっと、これ読んでみて」のような感じです。
この「~するのがよい」という意味のYou want to…は否定形You don’t want to…でもよく使います。
例えば、女性2人が「~さんの彼ってイマイチだよね」と話しているとします。
そこに突然、話題の女性本人が現れて、2人にHey, what are you guys talking about?(2人で何を話しているの?)と声をかけてきました。
2人はびっくりして、
You don’t want to know.
と答えたとします。
これはもちろん「あなたは知りたくない」ではありません。
「あなたは知らないほうがいい(話よ)」というニュアンスになるのです。
You want to…は会話でよく使いますが、英英辞典にもあるようにあくまでもインフォーマルなので、改まった場面では使わないほうがよいでしょう。
「~するほうがいい」と助言や提案をする表現が英語にたくさんありますが、その中から使う表現を選ぶときに「相手にどう聞こえるか」が気になることがあります。
「きつい感じで受け取られたらいやだ」とか「できるだけやわらかく言いたい」と思うときです。
そんな場合に使うことが多い表現が、
You may/might want to…
です。
You want to…に助動詞may/mightを加えて、「~するほうがいいのでは」「~したらどうですか」という遠回しな響きになるので、丁寧でやわらかい印象を与えます。
例えば、すごく良い英語教材を見つけたとします。
一緒に英語を勉強している友達に、
You might want to try this.(これ、試してみたら)
と声をかければ、「これ、良いから使ってみたらどう?」のように、押し付けがましくなく勧める感じが出ます。
慣れないとなかなかスッと出てこないYou want to…ですが、ネイティブは口語でよく使うので、頭の片隅に入れておくと役に立つと思います。
何か大きな挑戦や大事な計画を控えている人に励ましの声をかけるとき、日本語でよく使うフレーズは「頑張って」ですね。
試験や面接の前などに限らず、「頑張って」は何かと出番の多い表現です。
「頑張る」は英語でdo one’s bestと覚えた人も多いと思います。
では、「頑張ってね」はDo your best!でよいのでしょうか。
英語では、人に「頑張って」という場合にDo your best!は使いません。
では、「頑張る=do one’s best」という学校で学んだ知識は間違いだったのでしょうか。
そうではありません。
英英辞典のdo one’s bestの説明にも、
do all one can(できることをすべてやる)
と書いてあります。
「最善を尽くす」ということですね。
・I did my best.(私は頑張りました。最善を尽くしました)
・He did his best not to laugh.(彼はなんとかして笑わないように頑張った)
などはナチュラルな表現だと思います。
でも、これから新天地で生活する人に「新しい場所でも頑張って」と励ましたり、これから何かに挑戦したり、新たな課題に取り組もうとしている人に対して、Do your best in your new place!のようには言いません。
do one’s bestは基本的に自分について「頑張る、頑張った」という意味で使う表現です。
人を励ます目的ではほとんど使いません。
では、日本語の「頑張ってね」に相当する英語のフレーズは何でしょうか。
Good luck!(うまくいきますように、頑張って)
です。
この表現は本当によく使います。
「幸運を祈ります」というよりも「うまくいきますように」という願いを込めた言葉です。
したがって、これから大切なことを控えた人に対して幅広く使えるわけです。
例えば、試験を控えた人には、
Good luck on your exam.(試験がうまくいきますように)
と言葉をかけます。
新天地で新たな生活を始める人には、
Good luck in Tokyo.(東京での成功を祈ります)
のように声をかけます。
「試験、頑張って」「東京でも頑張って」という日本語には「うまくいくように」という思いが込められていますから、Good luck!がしっくりきます。
Good luck!は励ましの言葉として使うこともできますが、別れのあいさつとしてもよく使います。
日本語でも「じゃあ、明日の面接を頑張ってね」と言って別れることがあります。
そんなときに、
Bye. Good luck with your interview!
と言って去っていくわけです。
妊娠中のときにも別れ際に、
Good luck with your baby!((妊娠/出産/育児が)うまくいきますように)
とよく言われます。
同じようなニュアンスで、
All the best.(すべてうまくいきますように)
という表現もあります。
Good luck!は、これから何かに挑戦したり、大きな計画を控えている人に対して言う「頑張ってね」です。
マラソン大会の沿道で応援するときの「頑張って」のように、現在進行形で何かを頑張っている人に対する応援には使いません。
日本語の「頑張る」「頑張って」はとても便利な言葉だけに、英語にするのが難しい表現でもあります。
OKという単語はみなさんもよく使っていると思います。
日本語としても浸透しているので、英語で使うときも特に難しいとは思わずに、サラッと口から出るのではないでしょうか。
でも、実は英語のOKは日本語の「了解」「いいよ」というだけでなく、それほどポジティブではない意味で使われることも多いのです。
英語でOKを使う場面を思い浮かべてみましょう。
例えば、Call me tonight.(今夜電話して)と言われてOK.(わかった)と答えたりします。
Yesという意味でOKを使うわけですね。
これは「了解」というニュアンスです。
他に「~しても許される、~してもよい」という意味でもOKを使います。
英英辞典には、
permissible; allowable(許される、差し支えない)
と定義されています。
例えば、
・Would it be OK if I take tomorrow off?(明日休みを取ってもいいですか?)
・It‘s not OK to use violence.(暴力を振るうのは許されない)
といった感じです。
ここまでは日本語の「オッケー」からもイメージできる意味の範囲内だと思います。
では次に、日本語のイメージとは少し異なるOKの使い方を見てみます。
「OK=good」ではありません。
実はOKは、それほどポジティブではない意味で使われることも多いのです。
例えば、How are you?(どう、元気?)と聞かれて、「調子いいよ」というつもりでI’m OK.と答えると、「どうかしたの?」と再度質問が返ってくるかもしれません。
あるいは、道を歩いていて目の前で人が転んだとします。
その人にAre you all right?(大丈夫ですか?)と声をかけると、Yeah, I’m OK.と返されるかもしれません。
これは「大丈夫です」ということですが、実はそれほどポジティブな意味ではありません。
また、試験を受けた後に友達に「どうだった?」と聞かれてIt was OK.と答えると、友達は「うまくいかなかったのかな…」という印象を持つでしょう。
実は、これらの場合のOKは「悪くはない」というニュアンスで伝わります。
OKにはこんな意味があるからです。
satisfactory but not especially good(満足のいくものではあるが、特に良いわけではない)
後半のnot especially good(特に良いわけではない)がポイントです。
OKは「悪くはないけど、特別良くもない」という意味でよく使うということです。
日本語で言うなら「まあいいか」というところでしょうか。
夕食を作ってくれたホストマザーからHow do you like it?(どう?)と聞かれてIt’s OK.(まあまあです)と答えてしまうと、失礼になってしまいます。
OKはgoodという評価を前面に出したいときの褒め言葉としては使えないのです。
このギャップを頭に入れておくことは大切です。
私には、初めて耳にしたときに意味がわからなかったOKもありました。
それはカフェで働いていたときに、Would you like a plastic bag?(レジ袋はいりますか?)とお客に尋ねるとIt’s OK.と返されたり、持ち帰りコーヒーを買った人にWould you like sugar?(砂糖はいりますか?)と聞いたときにもIt’s OK.と言われることがありました。
OKはYesの意味でも使うのでややこしいのですが、このような場合のIt’s OK.はNo, thank you.(いいえ、ありがとう)の意味です。
「(私が)~しましょうか?」と申し出る表現を英語ではどう言うでしょうか。
学校で学んだのはShall I…?という表現ではなかったかと思います。
実はShall I…?は日常会話ではそれほど耳にしません。
では、どんな表現をよく使うのでしょうか?
まず、どんなときに「~しましょうか?」と言うかを考えてみましょう。
例えば、観光地でカップルや家族連れが一緒に写真を撮ろうとしています。
誰かがカメラのシャッターを押さないといけないので、全員が写真に入ることはできません。
そんな光景を見かけたらこう声をかけます。
「写真、撮りましょうか?」と。
あるいは、家族や友達が海外旅行から帰ってくる日になりました。
重いスーツケースを引きながら電車で帰宅するのは大変です。
自分の予定が空いていれば「車で空港まで迎えに行こうか?」と言うかもしれません。
「~してあげましょう」と言うと、一方的に響いて、押し付けがましく思われるかもしれません。
自分から~してあげると申し出ると同時に、「それはいかがですか?」と相手の意向も尊重したい場合に「(私が)~しましょうか?」となります。
「写真を撮りましょうか??」と英語で声をかけるときには、学校で学んだShall I…?を使って、
・Shall I take a photo?
・Shall I take a picture?
という表現を思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
残念ながら、このような場面でネイティブはShall I…?とはほとんど言いません。
その代わりによく使うのが、相手の希望を丁寧に尋ねるWould you like to…?(~なさりたいですか?)を応用した表現です。
「写真を撮りましょうか?」と尋ねる場合に私がよく耳にするフレーズは、
・Would you like me to take your photo/picture?
・Would you like me to take a photo/picture for you?
・Would you like me to press the button for you?
です。
自分が~することを相手が望むかどうか、つまり相手の意向を丁寧に尋ねるWould you like me to…?(~しましょうか?)、あるいは同じ意味でもっとカジュアルなDo you want me to…?(~してほしいですか?)が助力を申し出るときの定番です。
私もこれを知るまではShall I…?を使っていました。
ところが、ある日友達と写真を撮ろうとしていたときに近くの人にこう聞かれて以来、注意して聞いているとWould you like me to…?/Do you want me to…?がとてもよく使われていうことに気付きました。
日本語では「私に~してほしいですか?」という意味になります。
なんだか直接的な質問だと感じるかもしれませんが、英語ではこれが自然に聞こえるようです。
海外と日本では生活習慣の違いを感じることがしばしばあります。
もちろん文化も言葉も違うので当然で鵜が、日本で長く暮らしていた私にとっては、Would you like me to…?/Do you want me to…?と聞かれるのはけっこう衝撃でした。
日本では多くのスーパーで買い物をしたらレジ袋に入れてくれます。
デパートでは、雨の日には紙袋に雨除けのビニールまで被せてくれたりもします。
それも、わざわざお願いしなくても当たり前のようにやってくれます。
しかし、海外では、買い物をしたときに聞かれるWould you like a bag?(袋はご利用ですか?)をはじめとして、お客のために何かをする前には必ずWould you like me to…?/Do you want me to…?と尋ねてきます。
何も聞かずに気を利かせて「~しておきました」ということはほとんどありません。
逆に、こちらが気を遣って何かしてあげると「そんなことしなくてよかったのに」と言われることもあったりして、私もだんだん「事前に尋ねる」ためにWould you like me to…?を使う習慣がついてきました。
美術館の中で写真を撮りたいけれど、撮影してよいのかわからない。
喫煙したいけれど、吸ってもよい場所かわからない。
日本では当たり前のことでも、文化や習慣が違う外国ではルールが異なることはよくあります。
さて、こんな場合にはどのように尋ねればよいのでしょうか。
「~してよいですか?」と尋ねる表現としてまず思いつくのはCan I…?ではないでしょうか。
・Can I take photos in the museum?(美術館の中で写真を撮ってもいいですか?)
・Can I smoke here?(ここで喫煙してもいいですか?)
みたいな感じですね。
もちろんこれでちゃんと伝わります。
でも、美術館で写真を撮る、喫煙する、のようにルールとして「~してもよいですか?」と尋ねるときには、違う表現を使うことも多いのです。
~してようかどうかというルールを尋ねる場合にCan I…?の代わりによく使われるのがbe allowed to…(~することを許される)という表現です。
動詞allowは人に「~することを許す」という意味です。
受動態のbe allowed to…は「~することを許される」になり、これが「(ルールとして)~してもよい」と言うときによく使われます。
・Am I allowed to take photos in the museum?(美術館の中で写真を撮ってもいいですか?)
・You’re allowed to take photos in the museum.(美術館の中で写真を撮ることを許されています)
・You’re not allowed to take photos in here.(ここでは写真撮影は禁止です)
・Photos are not allowed.(写真撮影は禁止です)
こんなふうに使われるallowのポイントは、be allowedのように受動態になることです。
私が以前働いていたカフェでは、お客からこんな質問をよく受けました。
Are you allowed to smoke outside? ― Sure.(外で喫煙できますか?―どうぞ)
建物が全面禁煙の場合、お客はカフェの屋外で喫煙できるかどうかを確認してきます。
ここで、少し気になることがあります。
喫煙したいのは自分(=お客)なのに、店のスタッフにAre you allowed to…?((あなたは)~してもよいですか?)と尋ねるのです。
Am I allowed to…?の間違いではないでしょうか。
実は、このような場合にはAre you allowed to…?をとてもよく使います。
youには「あなた」という意味の他に「(一般に)人、誰でも」という意味があるからです。
Are you allowed to…?のyouは会話の相手を指しているのではなく、一般的にできるかどうかというルールを尋ねているのです。
喫煙したいのは自分でも、喫煙のルールとしてAre you allowed…?と尋ねるわけです。
美術館内でCan I take photos in here?と尋ねてNo, you’re not allowed.(いいえ、禁止されています)と答えが返ってきた場合も、あなただけが撮影を許されないのではなく、誰であってもルールで撮影禁止だということです。
日本を一歩出るとルールが異なることはよくあります。
何も知らずにルール違反をしないように、迷ったときにはまずAre you allowed to…?を使って周囲の人に尋ねてみることです。