三浦春馬氏の不自然死と報道の闇

報道のタブー

三浦春馬氏の不審死に関する以下の3つの記事においては、社会の問題を考えるための一つの具体例として扱いました。

  1. 三浦春馬氏は自殺か他殺か
  2. 三浦春馬氏の死因が究明される可能性
  3. 三浦春馬氏の遺憾

この記事では、三浦春馬氏の自殺報道を整理し、証拠を評価し、ささやかな推理を加えることにした。なお、この手順に、推理の裏付け捜査を加えれば、警察の捜査手順と同じだ。つまりこの記事は、告発への繋ぎとして機能するように作成しました。ただし、告発は、恐ろしく敷居の高い制度、あるいは、上辺を取り繕うための制度なので、安易に期待はしないほうがいい。

上辺だけの告発制度

告発は、刑事訴訟法239条1項に「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」と規定されている。ただし、その条文を読んで一般の人がイメージするものと、現実は大きく異なる。

犯罪の疑いがあるものに対し、第三者がするのが告発、被害者や告訴権等がするのが告訴である。しかしながら、告訴も告発も、検察に提出しようとすると「警察に行け」と言われる。仕方なく、警察に提出しようとしても、決して警察は受理しようとしない。刑訴法第239条に「告発をすることができる」という規定はあるが、告発を受理する義務は規定されていない、というのが警察が受理をしない理由だ。

それゆえ、警察に告訴・告発を受け取ってもらうには、弁護士を頼らざるを得ないこととなる。弁護士に頼んで受理されたとしても、公訴が実現するとは限らない。それゆえ、告訴・告発の合計件数は、全国で年間10,341件にすぎない。

告訴・告発は、基本データさえ、ぞんざいに扱われている
  1. 1.法務省webサイトからドリルダウンすると…

    ※犯罪白書の下書きのような分けのわからないpdf。そこに告訴・告発の件数は記されていない。

    ちなみに犯罪白書には、告訴・告発の件数は記されていない。書いてあるのはwikipedia告訴・告発の頭書き程度の内容だけだ。

  2. 2.検察 統計で検索すると、次のページが筆頭に表示される。

    そこにあるのは、時代おくれのxmlファイル。まるでバイトの事務員が自分用にまとめた程度の貧相な体裁だ。

  3. 3.さんざん調べてやっと見つけた告訴・告発の統計は、e-Stat(政府統計の総合窓口)に格納された2017年の調査結果であった。

    エクセルをダウンロードすると、これまた体裁がひどい。PCのできない上司の顔色を窺うあまり、ネットでデータとしてダウンロードした後のことを考えないで作成されたファイルだ。上司は、印刷したときの体裁ばかり指摘するから、項目のタイトルの文字間がスペースで帳尻あわせされている。

民主主義の体裁を取り繕うための虚構システム

なお、検察審査会も、告訴・告発と同様に、検察官が独占する公訴権(起訴をする権利)を民主的に補うための制度である。警察を管理していることになっている公安委員会よりはマシだ。しかしながら、検察審査会は、民主主義の上辺を取り繕うためのものである。

虚構システムの罪

立派な大義を掲げる〇×委員会や※#△委員会は、多くが形骸化しており、存在目的のための効果など殆どない。それをひとつひとつ説明しながら進めると、恐ろしく冗長になってしまう。そして、その道を究めようとする人以外にとって、つまらない内容となってしまう。かといって、説明しないと、〇×委員会の存在自体が、大義のために有効であるかのように錯覚してしまう。そうした虚構のシステムに惑わされないために、断定的な言い回しに留める場合があります。

犯罪死の見逃しを防止するための基本

三浦春馬氏の不審死を個別具体例として扱う前に、殺人事件一般の統計に基づく傾向を確認しよう。

殺人の被害者と被疑者の面識率は、およそ9割

ここで、犯罪死の見逃しを防止するために、殺人事件の傾向を整理したい。

知人による殺人

上の図は、2017年の警察統計から作成した。殺人の被害者と被疑者との面識率がおよそ9割であることを示している。つまり、殺人事件のほとんどが、顔見知りによる犯行なのである。

このことは、殺人事件において、家族や勤務先が、真っ先に捜査対象とされるべきであることを示している。

三浦氏のマンションに入った警察官は、本来、何をすべきで、実際、何をしたのか?

現場に来た警察官に犯罪死の見逃し防止に関する意識がある場合

もし、現場警察官に犯罪死の見逃し防止に関する意識があったなら、第一発見者でもある勤務先の関係者、つまり三浦氏のマネージャーを筆頭とするアミューズのスタッフらに対し、詳細な状況確認をしているはずだ。

とりわけ確認が大事な状況は「マネージャーが鍵を開けて室内に入室した時間」である。基本中の基本の情報なので、警察官がこれを聞いて書類に記録しないことはあり得ない。あり得ないことがもしもあったとしたなら、よほど仕事ができない警察官であったか、あるいは、“特別な理由”を想像するしかない。

現場に来た警察官に犯罪死の見逃し防止に関する意識がない場合

自殺(事件性の疑いのある変死体)の現場において、警察官は机の引き出しを開いて遺書を探すような、ものものしい作業はしない。三浦氏のマンションにいたアミューズの関係者に「自殺の動機に心当たりはありますか?」といった程度の質問を行ったはずだ。もし、アミューズの関係者が自殺を伺わせる何かを示せば、警察官は、それを自殺を裏付ける物証として扱う。

初期に報道された「遺書」「遺書のようなもの」「遺書とみられるもの」のうち、少なくとも「警視庁関係者」をネタ元とするものは、この時にアミューズの関係者が警察官に示した内容である可能性が高い。

その警察官でなければ、メディアが「遺書」「遺書のようなもの」「遺書とみられるもの」と記した速報の取材源になり得ないからだ。

三浦春馬氏の不自然死を自殺として配信した記事

次に、各メディア自殺報道の推移を評価するため、報道の一部を時系列にリスト化した。

配信日時 記事作成者 記事タイトル アーカイブ
7/18 15:04 日テレNEWS 【抹消済】速報:俳優の三浦春馬さんが死亡 自殺か WAYBACK
7/18 15:34 デイリースポーツ 三浦春馬 4日前のインスタでドラマ「楽しみにしていてください!」 WAYBACK
7/18 15:54 デイリースポーツ 三浦春馬さん死亡、自殺か 朝から連絡つかず…ドラマ撮影中止に WAYBACK
7/18 16:22 テレビ朝日 俳優の三浦春馬さん(30)が死亡 自殺か WAYBACK
7/18 17:45 週刊新潮WEB取材班 「三浦春馬さん」一昨日まで収録していた…将来を嘱望の俳優に突然の訃報 WAYBACK
7/18 18:30 デイリースポーツ 三浦春馬さん死去 事務所が公式サイトで発表…詳細は「現在確認中」 WAYBACK
7/18 18:47 ANNニュース 「詳細は現在確認中」三浦春馬さん死亡で所属事務所アミューズ WAYBACK
7/18 19:10 デイリースポーツ 三浦春馬さん 前日までドラマ撮影、朝連絡取れず…分け隔てない人柄、信頼厚く WAYBACK
7/18 19:39 中日スポーツ 同じマンションの住人は絶句、管理人は「話せません」三浦春馬さん訃報受け報道陣続々 WAYBACK
7/19 デイリースポーツ 三浦春馬さん自殺 自宅で首つり、遺書残し トップ俳優が…列島に衝撃  WAYBACK
7/19 文春オンライン 三浦春馬さんは日記に「死にたい」と捜査関係者 堀越学園同級生保護者は「自殺するような子じゃなかった」 WAYBACK
7/20 デイリースポーツ 三浦春馬さん急逝の衝撃いまだ…ファン自宅に花「今までありがとう、安らかに」 WAYBACK
7/20 中日スポーツ 「なぜ?」「何が原因…」”兆候”がなかった人気俳優・三浦春馬さん突然の死…謎はいっそう深まるばかり WAYBACK
9/5 アミューズ 三浦春馬に関するお知らせ(2020年9月4日) WAYBACK
9/14 アミューズ 当社所属アーティストや関係者への誹謗中傷、デマ情報、憶測記事、なりすまし等について WAYBACK

記事の内容は次のとおり。

午前中の状況に関する報道内容遺書の有無に関する報道内容
配信日時 作成者 記事の主語 午前中の状況に関する報道内容
7/18(土)
15:04
日テレニュース24 関係者によりますと、 18日午後1時頃、東京・港区の自宅で、俳優の三浦春馬さんが、首をつっているのが見つかり、搬送先の病院で、死亡が確認されました。自殺とみられています。
三浦さんは18日、仕事の予定でしたが、仕事場に現れず、関係者が自宅を訪れたところ、死亡しているのを発見したということです。
7/18(土)
15:54
デイリースポーツ 関係者への取材 三浦さんは17日までドラマ「おカネ-」の撮影に参加。この日朝から連絡がつかなくなっており、行方不明状態だった。このため、18日の撮影は中止となっていた
7/18(土)
17:45
週刊新潮WEB取材班 警視庁関係者によると 「18日午後、東京・港区のマンションの1室で、クローゼットの取っ手にヒモのようなものを結び、そこに首を引っかけた状態で亡くなっていたそうです。仕事現場に現れず、連絡が取れないことを不審に思った三浦さんのマネージャーが部屋を訪れて発見。部屋の中からは遺書のようなものも見つかっていると聞いています
7/18(土) 18:30 デイリースポーツ 不明 18日もロケの予定だったが、朝から連絡がつかず、スタッフらが心配していた。ロケは中止となっていた。
7/18(土) 18:47 ANNニュース 関係者によると、 三浦春馬さんは午後0時半ごろ、港区の自宅マンションで首を吊った状態で見つかった。三浦さんは意識不明のまま病院に搬送されたが、その後、死亡が確認された。現場からは遺書も見つかっていて状況などから自殺を図ったとみられている。
7/18(土) 19:34 デイリースポーツ 関係者への取材によると、 三浦さんは17日までドラマ「おカネ-」の撮影に参加。18日朝から連絡がつかなくなっており、18日のロケは急きょ中止となっていた。
7/18(土) 19:39 中日スポーツ 捜査関係者によると、 三浦さんが仕事に来なかったためマネジャーが自宅を訪ね、クローゼットの中で首をつっている三浦さんを発見。室内から遺書とみられるものが見つかっており、警視庁が慎重に内容を確認している。
7/19(日) 5:00 デイリースポーツ 不明 三浦さんは18日朝から都内で撮影に参加予定だったが、現場に現れず、不審に思ったマネジャーが港区内の自宅マンションを訪れたという。
  デイリースポーツ 不明 三浦さんは18日朝から都内で撮影に参加予定だったが、現場に現れず、不審に思ったマネジャーが港区内の自宅マンションを訪れたという。
7/19(日) 12:48 文集オンライン 捜査関係者によると、 (午前中の状況の記述はない)
9月4日 アミューズ   午後から予定されていた仕事に向かうため、約束の時間に担当マネージャーが自宅へ迎えに行きましたが、メール・電話等に返事がなかったので、部屋へ向かいました。インターフォンを鳴らしましたが応答がなかったため、管理会社の方に連絡し、部屋の鍵を開けていただき入室したところ、すでに意識のない状態でした。応急手当をするとともに、すぐに警察と救急に連絡を入れ、病院に搬送されましたが、懸命な救命処置も及ばず14時10分に永眠いたしました。
その後、警察による現場及び時間経過の検証の結果、事件性は確認されず、検視の結果から死因は自死であるとの報告を受けました。
一部報道で「撮影現場に本人が現れないため、マネージャーが不審に思い自宅に確認に行った」と報じられておりますが、仕事の際にはマネージャーが送迎しておりますので、そのような事実はございません。
配信日時 作成者 記事の主語 遺書の有無に関する報道内容
7/18(土)
15:04
日テレニュース24   遺書の有無には触れていないが、タイトルは「速報:俳優の三浦春馬さんが死亡 自殺か」
7/18(土)
15:54
デイリースポーツ 警視庁三田署は 遺書があったかなどについては、「お答えできません」と回答した。
7/18(土)
17:45
週刊新潮WEB取材班 警視庁関係者によると 18日午後、東京・港区のマンションの1室で、クローゼットの取っ手にヒモのようなものを結び、そこに首を引っかけた状態で亡くなっていたそうです。仕事現場に現れず、連絡が取れないことを不審に思った三浦さんのマネージャーが部屋を訪れて発見。部屋の中からは遺書のようなものも見つかっていると聞いています」
7/18(土) 18:30 デイリースポーツ 不明 遺書とみられるものがあったと伝えられている。
7/18(土) 18:47 ANNニュース 不明 現場からは遺書も見つかっていて状況などから自殺を図ったとみられている。
7/18(土) 19:34 デイリースポーツ   自宅からは遺書のようなものが見つかったと報じられているが、所属事務所は同日夜、「詳細に関しましては、現在確認中」(公式サイト)と説明した。
7/18(土) 19:39 中日スポーツ 捜査関係者によると、 室内から遺書とみられるものが見つかっており、警視庁が慎重に内容を確認している。
7/19(日) 5:00 デイリースポーツ 捜査関係者によると、 室内からは遺書のようなものが見つかったといい、警視庁は自殺を図ったものとみて調べている。
  デイリースポーツ フジテレビは 同日、自宅から見つかった手帳に「死にたい」などと書かれていたと報じた。
7/19(日) 12:48 文集オンライン 捜査関係者によると、 「自宅からは『死にたい』と書かれた日記が見つかっている。自殺とみて捜査を進めている」という。
9月4日 アミューズ   警察の現場検証の結果、本人が日頃から役作りなど様々な思いを綴ったノートは自宅から発見されましたが、遺書はありませんでした。
そのノートにも、自死の動機や原因と直接結びつくような内容はなく、また、ファンの皆さま、スタッフ、アーティスト仲間などへ遺した文章や、遺書なども結果として見つかっておりません。

不自然な自殺報道/警察情報の垂れ流し/アミューズの変遷

死亡後わずか54分後の速報

緊急搬送先での死亡時刻は14時10分と発表され。そのわずか後の15時4分には、日テレニュースでは「速報:俳優の三浦春馬さんが死亡 自殺か」という見出しの速報が流れた。

消された速報
消された速報

三浦氏の死亡が確認されたのは14時10分。そのわずか54分後の速報は、死を待ち構えて、それを聞くや否やメディアにタレ込むほどのスピード感だ。もちろん、顔が効く者でなければ、メディアに取り合ってはもらえない。それゆえ、誰がタレ込んだのかを絞り込むことは、それほど難しい作業ではない。死亡をリアルタイムで確認でき、現場の状況を知り得る者は、数えるほどしかいないからだ。自殺を匂わせるように仕込んだのも、そのタレコミを密告した者の仕業と断言してよいだろう。

なお、この最初のニュースは抹消されている。報道する側か、たれ込んだ側、あるいは双方にとって、このニュースが不都合になったのだろう。

警察情報の垂れ流し

17時45分の週間新潮WEB取材班のニュースでは、ネタ元を警視庁関係者と明記してある。”関係者”と警察官が個人として強調されていることから、一警察官が情報を流出した可能性が高い。16-18時台に、同程度の情報量のニュースが、一斉に配信されたことから、その警察官が複数のメディアにタレ込んだか、メディア間でネタをシェアする仕組みがあるか、あるいは、記者クラブが発表したのか、特定はできない。

いずれにしろ、17時45分のニュース以外のニュースが「自殺か」「自殺とみられる」という言葉を含むことから、その警視庁関係者が報道機関に流したネタに「自殺の推定」が含まれていたのだろう。

警視庁関係者によると「18日午後、東京・港区のマンションの1室で、クローゼットの取っ手にヒモのようなものを結び、そこに首を引っかけた状態で亡くなっていたそうです。仕事現場に現れず、連絡が取れないことを不審に思った三浦さんのマネージャーが部屋を訪れて発見。部屋の中からは遺書のようなものも見つかっていると聞いています」

17時45分の週間新潮WEB取材班のニュース

病院で死亡が確認されてから、わずか1-2時間後、しかも、検視前、それどころか、事情聴取と現場検証さえ書類にまとまらない時間帯に、警察が「首吊り」による「自殺」で「遺書(のようなもの)」があった、とメディアにリークすることは、犯罪死の見逃し防止の観点から言えば、暴挙といってよいだろう。

問題の根源はテレビと警察の癒着

大メディアの記者は、警察と「良い関係」を築き、いち早く情報をもらうことを重んじてきた。また、警察をネタ元とする情報は、社内で信頼され、社外で信用される。そして、芸能人関連ニュースは、メディアにとって、楽して視聴率のとれるネタの筆頭だ。芸能人ネタを欲しがるメディアに、タレコミのアルバイトをする警察官もいることだろう。

事実上の報道統制

「ビッグニュースですよ!」
タレ込む警察官とタレコミ電話を受ける記者との興奮したやり取りが目に浮かぶようだ。

警察官は、”首つり+遺書=自殺”の単純処理ばかりを目にしているので、そのタレコミが、勇み足であることに気付かなかったのだろう。また、報道後にどんな疑惑を受けるか、想像できなかったに違いない。

タレコミを受ける記者も、警察情報という安心感から、”首つり&遺書=(推定)自殺”を安易に消化したのだろう。

警察と報道の蜜月関係はさておき、死者の尊厳を鑑みれば、安易な情報提供は慎まなければならない。それなのに、警察官が、状況把握さえ不十分な段階で、「首つり」「遺書」「(推定)自殺」をリークしたのだとしたら、それは問題だ。

警察は、いつもの情報提供ではなく、情報漏洩として、誰がリークしたのかを捜査し、しかるべき処分をすべきだろう。誰が情報を漏洩したのかは、メディアに「警視庁関係者(捜査関係者)とは誰か?」と聞けば、すぐわかることだ。

安易な報道をしたメディア側の問題も大きい。
「警視庁関係者(捜査関係者)によれば」と但し書きを添えれば、そのまま報道してよいわけがない。

16-18時台に配信されたニュースのうち、警察を取材源(ネタ元)とすることが明記され、「首つり」「遺書」「(推定)自殺」を含むものについては、メディアは取材源を明らかにすべきだろう。

「取材源の秘匿」という報道の哲学がある。しかし、メディアは、取材源が「警視庁関係者」あるいは「捜査関係者」であることが明かにしているどころか、記事の信用性確保と、報道する側の責任転嫁に利用していることが明らかなので、「取材源の秘匿」を盾にする理由ない。

情報が不十分な段階であるにもかかわず、各メディアによる自殺を決め付けた報道は、死者の尊厳を踏みにじるものである。松本サリン事件の反省をまったく顧みない報道被害だといえる。

松本サリン事件
警察の杜撰な捜査と、それら警察発表を情報源とする偏見を含んだ報道により、無実の人間が半ば公然と犯人として扱われてしまった冤罪未遂事件。

初期の報道をアミューズが訂正

7月20日のニュースは、それまで「仕事現場に現れず、連絡が取れないことを不審に思った三浦さんのマネージャーが部屋を訪れて発見」と報道されていたことを、アミューズの担当者が否定したと、報じた。

これに対し、三浦さんの所属事務所アミューズは「弊社マネジャーは当日朝、三浦の自宅に直接向かいました。報道されている事実の中には誤りもあります」(担当者)と否定する。

日刊ゲンダイDEGITAL「三浦春馬さんとマネジャー “現場待ち合わせ報道”の違和感」

しかしながら、「仕事現場に現れず、連絡が取れないことを不審に思った三浦さんのマネージャーが部屋を訪れて発見」との報道は、警視庁関係者をネタ元としている。

警察官が、午前中の経緯を、そこまで詳しく事情聴取していたのなら、マネージャーが入室した時間のほか、それまでの経緯についても、時間を記録したはずだ。

だから、もし警察に、犯罪死の見逃しを防止する意識があるのなら、死亡当日に聴取したはずの記録を使えば、多くの人が疑っている本当の死亡理由に近づくことができるはずだ。

四十九日にアミューズは時間をあいまいに訂正

アミューズは、四十九日を迎えた9月4日になって、「三浦春馬に関するお知らせ」に追記した。そこには当日の状況が綴られているが、警察あるいは報道機関がアミューズをネタ元して報道された内容と比べると、事件当日午前中の状況があいまいにされている。

午後から予定されていた仕事に向かうため、約束の時間に担当マネージャーが自宅へ迎えに行きましたが、メール・電話等に返事がなかったので、部屋へ向かいました。インターフォンを鳴らしましたが応答がなかったため、管理会社の方に連絡し、部屋の鍵を開けていただき入室したところ、すでに意識のない状態でした。応急手当をするとともに、すぐに警察と救急に連絡を入れ、病院に搬送されましたが、懸命な救命処置も及ばず14時10分に永眠いたしました。

三浦春馬に関するお知らせ(2020年9月4日)

多くの人たちが指摘する通り、7月20日の報道で、アミューズに向けられた疑惑に対し、何ら具体的な説明が加えらえていない。それどころか、あえて時間を曖昧した文章校正となっている。言葉の選択の仕方は、つまびらかに明らかにするのではなく、可能な限り抽象的に留める書き方だ。とくに、当初発表や関係者の証言とされる情報で、午前中とされた撮影の開始時間を明記せず、「約束の時間に担当マネージャーが自宅へ迎えに行き〜」で濁しているように見える。

衰退するテレビと報道タブーの闇

報道タブー

テレビ局が使う『衝撃映像』のほとんどは、YouTubeなどの動画投稿サイトから借用されている。『衝撃映像』に限らず、『おもしろ映像』や『かわいい動物映像』などなど、やらせや演出のない映像に関し、テレビ局は、クリエイターの裾野が広い動画投稿サイトに、勝ち目はない。そしてテレビ局は、動画投稿サイトの作品に芸能人がコメントを重ねるだけの『2次利用番組』を多数制作している。

テレビ局の収益面をみると、広告収入は下落する一方で、2009年にインターネットに追い越された。これはネットの広告特性が支持された結果だといえる。この傾向が逆転する可能性はない。

テレビ局にとって、広告費の減少は、とうぜん製作費の減少となる。そして、『2次利用番組』のほか、芸能人頼みの無難でコストの安いバラエティ番組が乱立することとなっている。

そうした昨今のテレビ事情をかんがみれば、芸能プロダクションの立場が強くなることは容易に予想できる。

芸能プロダクションの立場が強くなる一方、ある程度の知名度を獲得した芸能人の流出は、芸能プロダクションにとって、頭の痛い問題だろう。その流出が好調期であるなら、芸能プロダクションが何とか阻止したい、と欲するのは当然だ。

警察がまともな死因究明に背を向ける理由

三浦春馬氏の死因が究明される可能性に示したとおり、日本の死因究明制度には欠陥があり、警察が死体の表面を視ただけ(検視)しただけで安易に自殺や事故を判断してきた。そうして警察は、殺人事件の分母を減らし、検挙率100%をアピールしてきた。一方、分母に取り込まれた殺人事件においては、数々の冤罪事件が発覚している。

警察は殺人事件の検挙数を100パーセントと発表し続けている

こうした死因究明制度の欠陥は、10年以上にわたって、厚生労働省の所管分野である医師らが中心となって議論を行い、ようやく改善されたのである。2013年に制度化された『調査法解剖』は、事件性の疑いのある死体に対し、科学的な死因究明を実施する手段として導入された。ただし、『調査法解剖』は、警察官が直前の『検視』で「事件性なし」と判断したら行われることはない。

死因究明の流れ

警察の『検視』の段階における「事件性なし」の乱発は、死因究明制度の改善を、水泡に帰すのである。

三浦春馬氏の不自然死において、警察官が『検視』で「事件性なし」と判断したのは、自殺の定番イメージのある「首つり」という手法と、近親者への事情聴取において、遺書の存在をそそのかされたからだろう。

だから、後に近親者が「遺書はなかった」と声明を発表することは、警察にとって「梯子を外された」ことになる。

ただし、梯子を外されようが、外されまいが、警察は、一度、自殺を判断したことを撤回することはない。なぜなら、これまで自殺で済ませてきた多くに対し、殺人を認定し、分母を増やすわけにはいかないからだ。

認知数が増えると検挙率は下がる

分母の増加を容認すると、これまでの検挙率100%が崩れ、「警察の自画自賛はいったい何だったんだ!?」という、警察にとって好ましくない批判が発生してしまう。

警察が真実を隠す理由

上の表のうち、黄色の棒グラフと赤色の折れ線グラフは、徐々に現実に近づける為政者的の細工を想定したうえで作成した。誇張されているように感じる人がいるかもしれないが、右端の棒グラフの示す殺人事件の件数6000件は、かなり控え目に書いた。殺人天国に示した通り、殺人事件の件数は、1万件を超えても不思議はない。

死の重さvs警察組織のメンツ

疎遠な親族の死より、関係の深い他人の死のほうが重いものだ。それが芸能人とファンという一方通行的なものであっても、思いを寄せる者たちにとって、その重さに変わりはない。

違和感だらけの自殺速報、つづく自殺の刷り込み報道、証拠隠滅を疑わせる異例の早期密葬(火葬)、ネット上から消される記録、あえて時系列を曖昧にしたように見えるアミューズのお知らせ(9/4)と、続く恫喝声明(9/14)

人がどう死んだかよりも組織のメンツが大事な警察は、これを自殺のままで終わらせるかもしれない。もし警察がそちらを選択したなら、「偽装殺人って、簡単なんだ」と、犯罪の裾野はもっと広がることになるだろう。

事後検証のための証拠を何ら残さぬまま遺体が焼かれた結果、もはや死因を科学的に解明することはできない。しかしながら、「殺人の被害者と被疑者の面識率は、およそ9割」に示した統計的傾向、相手(警察/メディア/広報)と時間で変遷するアミューズの説明を鑑みれば、アミューズの関与を疑うのは当然である。

そして、科学的な死因究明なしでも、次の点の証拠能力を補えば、立証は可能であると思われる。

死亡当日の予定、撮影は午前だったのか、アミューズが訂正したとおり午後からだったのか。
関係者の聞き取りを行い、それが午前中からなのであれば、アミューズ供述のほころびが明らかとなる
遺体に傷があったという病院関係者の証言に証拠能力を与え得るか
匿名のタレコミに証拠能力はない。
「他殺を疑わない」という誓約書なるものが本当に存在するのか。それに証拠能力を与え得るか
匿名のタレコミに証拠能力はない。
三浦氏の契約更新拒絶に関する事実
誰もが納得する殺害動機は、公判となった際、冒頭陳述に説得力を与えることができる。

証拠不十分で法の制裁を与えるに至らないとしても、他殺が自殺として扱われるよりは、はるかにましだ。

アンナチュラル

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三浦春馬氏の不自然死と報道の闇” に対して2件のコメントがあります。

  1. webpbi より:

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