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町人Aは悪役令嬢をどうしても救いたい【完結保証】 作者:一色孝太郎
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第9話 町人Aは冒険者ランクをあげる

2020/08//14 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました

俺は 12 才の誕生日を迎え、F ランク冒険者となった。


────

名前:アレン

ランク:F

年齢: 12

加護:

スキル:【隠密】【鑑定】【錬金】

居住地:ルールデン

所持金: 2,901,534

レベル: 1

体力:E

魔力:F

────


12 才になったことでレベルとステータスが表示されるようになった。なぜ俺のステータスやレベルが表示されていないのか今まで謎だったのだが、G ランクの子供には表示されない仕様なのだそうだ。


なお、ステータスがやたらと簡素なのは乙女ゲームの仕様だ。乙女ゲームということで簡略化したつもりだったのだろうが、このせいで余計にやりづらかったのは言うまでもない。


「アレン坊もついに F ランクか。これでどぶさらいの人手が足りなくなるな」

「お! アレン坊、おめでとう!」

「やったな、アレン坊!」


師匠が大きな声で言うので周りの冒険者たちにも祝われてしまった。この 4 年で師匠だけじゃなくこのギルドの冒険者たちともかなり仲良くなった。


「あ、アレン君もついに F ランクなのね。おめでとう」

「モニカさん、ありがとうございまうわっぷ」


横からギルド併設酒場でウェイトレスをしているモニカさんがお祝いしてくれた。いつも通りぎゅっとハグされている。モニカさん、そこそこ美人で胸も大きいのだが俺にはいつもスキンシップが過剰なのだ。今もハグされながら胸にぎゅっと顔を押し付けられて苦しいやら嬉しいやらで困る。


俺も一応男なわけで……


「わはは。アレン坊はいつでもモニカのお気に入りの弟くんだな」


そんな俺たちを師匠や先輩たちが揶揄(からか)う。いつもの光景だ。


そしてモニカさんのハグ攻撃から何とか逃れた俺は師匠たちに反論を試みる。


「師匠、それにみんなも坊はやめてよ。俺はもう 12 才だよ!」

「ははは。怪我で戦えない俺に勝てない奴はまだまだアレン坊で十分だ」


どっと笑いが起きる。


「うー、くそぅ」


そう、まだ俺は師匠に勝てていないのだ。


「だが、剣士や騎士の加護を持っていないのにそれだけできる奴はそうそういねぇぞ」


そう言って師匠は慰めてくれるが、やはり加護を持っているかどうかの差はかなり大きかった。


加護というのは神様から与えられる祝福のようなもので、特定の分野の内容の習熟が早まったり特殊な能力が使えたりするというものだ。


ゲームだと、ヒロインのエイミーは【癒し】という加護を持っていて回復魔法をどんどん覚えたし、王太子なんて【炎魔法】と【英雄】という二つの加護を持っていて炎を操る魔法と剣技、さらに仲間を鼓舞したりピンチに強くなったりと主人公的な強さも発揮していた。


師匠は【剣士】の加護を受けているので、剣に関してはかなりレベルが高いのだ。


その一方で、俺は何の加護も持っていない。


これは俺だけが冷遇されているのではなく、ほとんど全ての平民は加護を持っていないのだ。


なので、これから高等学園に入学するまでに加護のハンデを埋める必要がある。


そのためにはいくつか攻略しなければならない場所がある。


その中でも一番重要度が高いのが、飛竜の谷だ。ここには『風神の書』というアイテムがあり、これを使うとなんと【風魔法】の加護を後天的に取得できるのだ。


ゲームで出てきたアイテムの中で加護が得られるものはこれだけなので、必ず手に入れておきたい。


これがないと魔法の実技試験で落とされて高等学園に入学できない可能性が出てくる。そのためにも、まずは他の都市へ移動できるようランクを E に上げる。


ちなみに、俺はこれまで 4 年間続けてきたどぶさらいのポイントが貯まっているので、F ランクの依頼、常設の薬草採取かホーンラビットの討伐を完了すればすぐに E ランクに上がれるそうだ。


「じゃあ、とりあえずは薬草採取とホーンラビット狩りに行ってきます」

「おう、行ってこい。町の外に出るのは初めてだろ? 気を付けて行ってこいよ」

「はい。行ってきます」


師匠はそう言って送り出してくれるが、もちろん外に出るのは初めてではない。


まさか俺が 8 才の時にこっそりと抜け出して、ゴブリンの住処から『鑑定のスクロール』を盗み出していたなんて流石の師匠も想像の埒外だろう。


****


さて、町の外の森に出てきたわけだがやはり近くに薬草は生えていない。どうやら既に採りつくされたようだ。そこで俺は前にゴブリンが住んでいた北東の遺跡方面に行ってみることにした。そちら方面に行けばホーンラビットもいることだろう。


そうして俺はいつも通りに【隠密】スキルで気配を殺して森の中を歩いていく。


たまにホーンラビットは見かけるのだが肝心の薬草はどこにも見当たらない。このまま狩ってしまっても良いのだが、ホーンラビットを狩ると血が垂れたりして色々と不都合がある。できることなら薬草の採取を先にやってしまいたい。


俺は森の中を更に歩いていき、そしてあの遺跡の前まで辿りついた。


討伐されたので当然だが、あれだけいたゴブリンたちの姿は見当たらない。


確かゲームだとブルースライムの住処になっていて、奥のほうには希少な薬草が生えていたはずだ。


よし、行ってみよう。


俺は遺跡の中を歩いていく。やはりアカリゴケのおかげで中は十分明るく、松明が必要ないのがありがたい。


壁に突き当たったのでなんとなく左の小部屋を確認してみる。この部屋には当時、ゴブリンが集めたお宝が集められていたのだが、やはりそんな痕跡は全くない。


ゲームで『鑑定のスクロール』が落ちているはずの場所にはもちろん何もない。やはり俺の行動のせいでここにあった『鑑定のスクロール』がなくなっているのだ。


俺はこの部屋の反対側の隅を調べてみる。すると、そこには銀貨が 1 枚、つまり 1 万セントが落ちていた。


ゲームではモードによって落ちている金額が変わり、イージーモードだと 10 万セント、ノーマルモードだと 1 万セント、ハードモードだと何も落ちていない。


つまり、この世界はノーマルモードで回っているということのようだ。俺は銀貨を拾うとそのまま遺跡の奥を目指す。


二階層目にやってきた。たまにブルースライムがいるが、相手にはしない。剣だけで倒すにはしっかりと核を潰さなければいけないので俺とは相性が悪いのだ。


というわけで、俺は【隠密】スキルを頼りに遺跡の二階層目を進んでいく。そしてゲームの記憶を思い出して薬草を回収していく。


もうこの遺跡は探索しつくされていて宝箱などは何もない。そのため最深部まで行く必要はないし、ゴブリンの忘れ物も俺が全て回収したので薬草以外に価値はない。ちなみにブルースライムは暗くてじめじめしているところなら大抵生息しているのでこれまた別に希少でもなんでもない。


というわけで、覚えている限りの薬草を回収して俺は遺跡を出ると町へと戻る道を歩き始める。


道中、ホーンラビットが一匹で草を食べていたので【隠密】スキルでこっそりと近づき、そのまま持っていた剣で一突きにして仕留めた。


想定通りではあるが、やはり簡単だった。やる気はないが、俺はかなり有能な暗殺者になれそうな気がする。


ホーンラビットは角と肉、それに毛皮も売れるので手早く血抜きして解体を済ませる。俺は長い G ランクの下積み時代に持ち込み素材の解体も手伝っていたのだ。そのおかげで、この辺りで狩れる獲物は全て解体できる。


魔石だけは回収して、残りの素材はギルドに引き取ってもらうことにする。魔石は今後使い道がたくさんあるのでいくらあっても困ることはないからな。


そのまま町に戻る途中で二匹のホーンラビットを暗殺した俺はギルドに戻り、回収してきた素材を納品した。


「ようし、アレン坊。よくやったな。これでお前も E ランクだ。史上最速タイだな」

「ありがとうございます!」


こうして、俺は即日で E ランク冒険者へとランクアップしたのだった。


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