菅政権の課題 周辺国外交 関係安定化を最優先に

2020年9月23日 08時01分
 菅政権は、新型コロナ対策や経済再生を最優先課題としているが、外交も待ったなしだ。理念先行で摩擦を起こしがちだった安倍外交とは一線を画し、周辺国との関係安定化に全力を挙げてほしい。
 外交面で菅氏が繰り返し強調しているのが安倍晋三前首相が進めた「日米同盟の深化」だ。
 自民党総裁選の討論会では、外交は「(安倍氏と)相談しながら」行っていくとも表明した。実務経験の不足とビジョンのなさが指摘されていることを意識しての発言だろうが、これでは一国のトップとして全く物足りない。
 まずは懸案の多い周辺国との関係改善へ、手腕が問われよう。
 中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張し、国内での人権侵害の批判を浴びているが、経済的な関係が深い隣国でもある。
 新型コロナウイルスの影響で延期された習近平国家主席の国賓訪日の扱いを含め、基本的な姿勢を明らかにすべきだ。
 長く携わってきた北朝鮮の拉致問題について菅氏は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との条件なき対話と、拉致被害者の一日も早い帰国を訴え、意欲を示した。
 しかし、前政権と同じことを言っていて事態が進展するだろうか。石破茂・元自民党幹事長は、交渉のため平壌に連絡事務所を開設すると提案した。意欲を具体的な「形」として提示すべきだ。
 元徴用工の問題を巡り、戦後最悪ともいわれ、冷え込んだ韓国との関係については、菅氏からは具体的な言及がなく残念だ。
 徴用工問題は一九六五年の日韓請求権協定で解決済みであり、韓国が国際法に違反しているというのが日本の主張だ。菅氏もこれを踏襲するだろう。
 しかし、裁判で差し押さえられた日本企業の資産が売却され、報復合戦となれば、両国関係は危機的状況を迎える。どちらの国の利益にもならない。日米韓の協力を重視する米国も懸念している。
 韓国でも、日本の首相交代を機会に、日韓双方に歩み寄りを求める声が出ている。
 文在寅(ムンジェイン)大統領は菅氏に首相就任を祝賀する書簡を送り、「関係発展のため共に努力を」と呼びかけた。これを関係改善への糸口として生かすべきだ。
 年末に韓国で開催される予定の「日中韓首脳会談」で日韓が首脳会談を開き、解決を図るよう求める声もある。打開策を模索するための対話を今後も重ねてほしい。

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