・サウスダコタ州ラシュモア山の4人の大統領の彫像。Wikipedia
世界各地で「再ロックダウン化」が進行中
イスラエルで、春に続いて二度目のロックダウン(国土封鎖)がおこなわれていることを記事「イスラエルが世界で初めて「二度目の全土のロックダウン」を実施…」で取り上げたことがありました。
オーストラリアやニュージーランドも、地域的に非常に厳しいロックダウンを繰り返していることを、こちらの記事などいくつかでご紹介しました。
その後、他の国でも、政府や保健当局者などが、
「今のままだと、再度のロックダウンを課さなければならない可能性がある」
と述べ始めています。
9月20日現在、再度のロックダウンを伺わせている国
・ベルギー → ウイルス学者のトップが再ロックダウンの必要性を強調。地域的には、すでに夜間外出禁止令が発令(politico.eu)。
・イギリス → 5月以来の感染確認数が最大数に達したため、政府が再度のロックダウンをおこなう可能性が高まっている(aljazeera.com)。
・アメリカ → ユタ州保健当局が「感染数が減少しない場合は、完全なロックダウンを行う」と警告(sltrib.com)。アメリカでは、他にもテキサス州、ペンシルベニア州、イリノイ州、ニューヨーク州、ミシガン州でも、知事が再度のロックダウンを警告。
などですが、アメリカの場合、実際には、全 50州のほとんどが、「再度のロックダウンはあり得る」としています。
しかし、そんな中で、
「今後のロックダウンは絶対にしない」
と知事が宣言している州が、2つだけあります。
それは、
・フロリダ州
・サウスダコタ州
の 2州です。
しかし、フロリダ州は、春にロックダウンをおこなっていて、「二度目のロックダウンは決しておこなわない」という意味で述べたことが報じられています。
そして、もうひとつのサウスダコタ州。
この州は、春にアメリカの多くの州でロックダウンが行われた際にもロックダウンをおこなっておらず、そして……実は、私は数日前まで知らなかったのですが、
「このサウスダコタ州だけが、アメリカで唯一、新型コロナウイルスに対して何の対策もおこなっていない州」
だったのでした。
つまり、サウスダコタ州はアメリカのスウェーデンだったのです。
なお、前回の春の時点のアメリカで、ロックダウンをしなかった州は、
・サウスダコタ州
・ノースダコタ州
・サウスカロライナ州
・ワイオミング州
・ユタ州
・アーカンソー州
・アイオワ州
・ネブラスカ州
の 8州だけでした。
ロックダウンをした州としなかった州の「感染率」と「死亡率」の推移は、以下の記事で取りあげていますが、「ロックダウンをしないほうが圧倒的に感染拡大と死亡の拡大を抑止できていた」ことが示されています。
アメリカの「ロックダウンと致死率の関係」を見て思う「一日に十万、人が死にだしたら神の世が…」の世界に現実に生きていること
投稿日:2020年7月1日
しかし、ほとんどの州で、移動の制限などを含む「何らかの制限」の対策はおこなっていたようですが、サウスダコタ州は当初だけ少し制限をおこないましたが、すぐに知事はそれを撤回し、それ以降、「何もしなかった」のです。
移動の制限もなく、飲食店の閉鎖もなく、学校の閉鎖もなく、集会の禁止もなく、イベントの禁止もなく、マスクも必須とされていない。
サウスダコタ州の知事は、4月以降は一貫して、それを貫いていたのでした。
私はそんな決断をして、それを続けている州がアメリカにあることを知りませんでした。
そして、その知事のことも今回はじめて知りました。
クリスティ・ノエムさんの闘争
サウスダコタ州といいましても、私にはよくわからない州であり、その場所も曖昧ですが、以下の場所にある州でした。このサウスダコタは、ラシュモア山というアメリカの歴史に名を残す 4人の大統領(ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーン)の彫像がある山がある州として有名です。
「アメリカにも何もしない州があったのかあ…」と感じ入り、そのサウスダコタ州の知事を調べてみますと、以下のようなとてもお美しい方でした。
しかし、同時に非常に意志の強さも感じさせるタイプの人でした。
サウスダコタ州のクリスティ・ノエム知事
・Kristi Noem
ノエム知事は共和党員の方ですが、アメリカの州の知事の約半数が共和党員で、それでも他にノエム知事のように「完全な非ロックダウン政策」を貫き通した知事はいません。
今回は、そのサウスダコタ州の非ロックダウン政策について、米国経済研究所(AIER)が、「アメリカの中のスウェーデン」というタイトルの記事を書いていましたので、それをご紹介させていただこうと思います。
この記事においては、ノエム知事は、人々の自由を尊重して非ロックダウンを行ったというようなことが多く書かれてますが、いろいろ他の記事などを読みますと、
「理論的な判断」
だったように思います。
州の経済減退の阻止、そして、ロックダウンによる感染拡大の科学的根拠が明確ではないことや、マスクの着用義務による感染拡大の科学的根拠が明確ではないことなどによって、非ロックダウン政策を選択し、他の州に非難されながらも現在も貫いているようです。
実際、彼女は現在も繰り返し他の州知事や政治家、あるいは科学者たちから攻撃を受けていることが報じられていますが、すべてを理論的に打破し続けているようです。
彼女は彼女なりに闘争、あるいは「戦争」をしていると感じられます。頭を使った戦争です。
自分の州の住民を守るための戦い。
しかし、戦争というのは勝つために行うものであり、彼女が当初に「理論的に」導き出した通りの結果になっていない場合、理論は美しくても、彼女は「負け」です。
さて、ノエム知事の戦争は勝利に結びついているのか。
ここから記事のご紹介です。
サウスダコタ : アメリカのスウェーデン
South Dakota: America’s Sweden
AIER (米国経済研究所) 2020/09/17
現在のサウスダコタ州を見ていると、サウスダコタにあるラシュモア山の、この国に自由と希望の価値を植え付けた 4人のアメリカ大統領の顔を思い起こさせる。
現在、アメリカは激動するコロナウイルスの時代に攻撃されている。
アメリカで行われたロックダウンは、私たちアメリカ人が神聖であると信じていた中心的な価値観、それは集会と移動の自由、旅行、仕事、消費、娯楽などの権利といった、要するに私たちが幸福を追求する権利を破壊してしまったのだ。
しかし、その中で、サウスダコタ州知事のクリスティ・ノエムの指揮のもと、この州だけは、自由主義の要塞を保ち、地元の政治家たちからも圧倒的な理解と保護を得られている。
そして興味深いことに、サウスダコタ州の政策はスウェーデンと同じ価値観とアプローチの多くを反映しており、どちらも偶然にしても、新型コロナウイルス感染症の結果に対して「肯定的な結果」を経験しているのだ。
ノエム知事は、カリフォルニアやイギリスのような場所で見られる厳格なコロナウイルス対策指示を拒否し、ほとんど何もしないアプローチを支持している。
同様の意味で、スウェーデンの国家疫学者であるアンダース・テグネル氏は、EUからの強い圧力にもかかわらず、ロックダウン状態に陥ることのない、社会がリラックスした状態での新型コロナウイルス対応を打ち出した。
スウェーデンの憲法は、専門家機関への政治家の介入を禁止しており、専門家機関は政治家に代わり、非侵襲的な勧告を公衆に提供することを担当している。
サウスダコタ州とスウェーデンでのコロナウイルス反応は、本質的に一貫して「何にも介入しない」ものであり、個人の信頼と常識を市民の選択に向けさせている。
パンデミックの発生時に、ノエム知事は 3月16日に一時、学校を閉鎖するなど、最初はいくつかの制限を要求し、また、一時は、社会的距離を奨励し、ノエム知事は他の州の一般的な政策理念に同調したが、彼女がそれに不快を感じていたことは、想像に難くない。
4月になり、すぐにノエム知事は、最初の勧告を撤回した。
また、早い時期には、65歳以上の高齢者の強制在宅計画を導入したが、すぐに廃止した。それ以降、彼女は、外出自粛や移動の制限を命令したことは一度もなく、マスクの着用、集会、教会の集まり、保育所、仕事、または旅行の禁止を命じたこともない。
ノエム知事は次のように述べている。
「このウイルスへの私のアプローチは、サウスダコタの住人の方々に、私が持ち得るすべての情報を提供し、自身とその家族のために最善の決定をする自由を行使することを、住民の方々の信頼に任せるということでした」
ノエム知事は、必要に応じての適切な衛生観念と、ある程度の社会的距離など常識的な行動を促し、あとは市民の信頼に任せた。
ノエム知事はまた、子どもたちにはマスクは必要はないと考えている。というより、「子どものマスクは危険だ」として、マスクが子どもたちにより多くの問題を引き起こすことを心配している。
マスクについての考え方も、スウェーデンと似ている。スウェーデンの保健当局者は、マスクの有効性を支持する科学的証拠が不足していることなどから、「マスクは着用べきではない」という立場を取っている。
それにも関わらず、サウスダコタ州とスウェーデンでは、新型コロナウイルスのパンデミックに対する一般的に見れば「自由放任すぎる」主義の対応にもかかわらず、近隣の州や国と比べて、それぞれ低い感染率と死亡率が観察されている。
症例数は増加傾向にあるが、死亡率は依然として低く、そして両国の経済は好調なままだ。
経済と GDP
より多くの経済的および財務的データが明らかになるにつれて、サウスダコタ州とスウェーデンの両方の経済的勝利が明らかになりつつある。
この時点で決定的な結論を出すことはできないにしても、今でも厳格な規制を課している国や地域が、そうしなかった国や地域より大きな経済的困難に直面していることはかなり明白となっている。
アメリカ経済分析局は、第 1四半期に、サウスダコタ州の GDP が他の州と比較して、その減少率が、アメリカで 2番目に低い 2.2%だっことを見出した。このパーセンテージは、米国の第1四半期の GDP 低下である 5%、あるいは第 2四半期の推定値よりも低い。
スウェーデンは、完全なロックダウンをしないと発表した後、第 1四半期の GDP は 0.1%増加した。
2020年 1年間のスウェーデンの GDP 成長率は、推計値として -5.3%から -7.8%の間になると予測されており、スウェーデンもまた経済的影響を受けている。しかし、これらの予測は、Covid の制限が厳しい他の国の予測よりも懸念が少ない。
米国の GDP は約 7.3〜 8.5%減少し、英国は悲惨な数値といえる 11〜 14%減少すると予測されている。4月から 6月の間に、スウェーデンの経済は 8.6%縮小したが、これは、欧州連合の 11.6%、スペインの 18.5%、フランスの 13.8%を下回っている。
雇用
サウスダコタ州では、労働市場も回復し、失業率は一貫してアメリカの全国平均を下回っている。パンデミック前の求人のピーク以来、求人は 4.7%増加した。特に、サウスダコタ州は、どの地域でも最も低所得である人々の層の失業がなかった。
サウスダコタ州の失業率は、4月に 10.9%で最高に達したが、7月には 6%に低下した。米国の失業率のピークである 14.7%やカリフォルニア州の失業率 16.4%とはかけ離れた数値だ。
観光
他の州では観光業が大幅に減速しているが、サウスダコタ州では、モンタナ州とワイオミング州に次ぐ国内予約の減少が 3番目に少なくなっている。ノエム知事は、都市生活は完璧ではないと述べ、世界中の人々にサウスダコタ州を訪問するように呼びかけた。
サウスダコタ州と異なり、ワシントン州、オレゴン州、メイン州、ニューヨーク州、カリフォルニア州、アイダホ州などは、州全体でのステイ・アット・ホーム命令や屋内でのマスク着用など、多くのコロナウイルス対策の制限ポリシーを実装することを選択したが、それでも、1人あたりの症例数と死亡数は高くなっている。
サウスダコタ州は人口密度が低いために、感染の数字が低いという可能性もあるにしても、人口密度が低い他の州、たとえばオレゴン州、メイン州、アイダホ州では、経済的状況が悪化し続けている。
オレゴン州とアイダホ州は、サウスダコタ州と比較して、Covid-19 症例率がほぼ 2倍で、死亡率もほぼ 2倍以上となっている。オレゴン州の第1四半期の GDP は4.4%減少し、アイダホ州は 4.1%減少した。
これらの結果を見ても、個人のリスク評価を促進するために、地域情報の収集と普及を奨励すること、そして本当に自分自身を守るために本当に脆弱な人々の保護を奨励することは、他の米国の州と比較して、サウスダコタおよびスウェーデンでは、より良い経済的および社会的結果を生み出している。
ロックダウンは、莫大な経済的および社会的コストを招いたことが認識されており、それは時間の経過と共にますます明らかになりつつある。大量の長期の失業者を作り出し、資本と企業の取り返しのつかない破壊をもたらし、離婚率は上昇し、 子どもと配偶者への虐待が増加し、 アルコール中毒や薬物乱用を増加させ、そして自殺率を増加させている。
経済分析局は、アメリカの 2020年第 2四半期の GDP が驚異的な数値である 32.9%の減少になると推定している。
ここまでです。
私は基本的に、どの国のものにおいても、政治等に興味がない人ですが、同じ管理されるのなら、勇気があって頭の良い指導者が上にいたほうが、個人の幸福の破壊の度合いは少なくて済むということが示されているのかもしれません。
また、以前も以下の記事に書いたことがありましたが、私がスウェーデンを讃えていたのは、「新型コロナウイルス対策に成功したから」ではないです。
おめでとう、スウェーデン。そして、ありがとう。その中で我々のほうはただ退化していく
投稿日:2020年7月28日
この記事に書いてもいましたけれど、
「人間は、どんな理由の下でも、強制的に束縛されるべきではない」
というスウェーデンの考え方に感銘したのです。
そして、科学的にも、つまり免疫の問題やメンタルへの悪影響を最小限に抑えるなどの意味からも、サウスダコタやスウェーデンの方法は、今後においても、あらゆる感染症対策として優れているはずです。ロックダウンは無意味に流行時期を長引かせる上に、経済を破壊し、人の精神を破壊し、身体そのものも破壊します。
さまざまな国が現在、日本も含めて、「全員がマスクをつけた、表情のわからない、まるで亡霊のような人々の集団」に毎日囲まれて生活するようになっています。
誰一人として「社会はそうなってはいけない」と、当局者が言えなかった国々は、少なくとも表面上は十分に地獄化しているのが現実です。
もちろん、今のこの状態が楽しいと感じられている方が多いのなら、私が間違っているということなのでしょうが、私個人はこの光景を楽しく感じられることはあまりありません。
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