多様性
多様性(たようせい)とは、人間社会を弱肉強食の世界に導く概念である。
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[非表示]概要[編集]
19世紀から21世紀初頭にかけて、人類は様々なイノベーションを行い、文化を急速に発展させた。移動手段は動物から高速鉄道や飛行機になり、連絡手段は紙文書の郵送から電子媒体によるメッセージになり、表現方法が限られていた音楽は非常に多くのジャンルが生まれ、漫画も様々なメガヒット作品が毎年出るようになった。現地鑑賞しか出来なかった演劇はテレビや映画を通じて見られるようになり、近年はタブレットやスマートフォンでも観覧できるように技術革新が行われた。
つまり産業革命以降は世界中でいつもどこかでイノベーションが起きている状況だったが、イノベーションの中には一部「行き過ぎた表現」が含まれているものがあった。
その行き過ぎた表現を是正する動きは1960年頃から発生し始めた。「ちびくろサンボ」が黒人差別としてアフリカ系米国人を中心に抗議の声が上がり、その影響で1970年代には同書が世界中の書店や図書館から消えた事例である。この後しばらくは表現是正の動きは沈静化していたが、2000年代後半頃から「世の中には様々な嗜好や属性を持つ人が居るから、その人達の気分を害さないように表現方法や実現手段などを工夫すべきであり、それが出来ない場合は世の中から排除すべき」という考え方が台頭。この考え方は「多様性の尊重」という名がつけられ、ポリコレ棒という武器にもなぞらえて行き過ぎたイノベーションにブレーキをかける存在となった。
多様性の尊重が求められた事例[編集]
トランスジェンダー[編集]
従前からゲイやレズといった同性愛者でも組織から仲間外れにしないように尊重せよという考え方が存在していたが、それが発展した結果、生物学上男性であるトランスジェンダーの人が女子更衣室の使用を求めるようになり、2017年にはコナミスポーツがトランスジェンダーである会員が裁判を起こして最終的に和解する事案が発生している。[1]
巨乳モデルが問題になった事例[編集]
2019年、日本赤十字社が献血を呼び掛けたポスターに漫画「宇崎ちゃんは遊びたい!」のヒロインが活用された件について、フェミニストから「献血を盾にした性的表現」であると批判が集中した。さらに、翌2020年にはフリー素材向けフォト素材を主な活動軸としていたグラビアアイドルの茜さやが転職サイトの広告に出てきた件にも同様の批判が波及した。後者については「胸を小さくする手術をしないのが悪い」など、巨乳ではない女性に対する配慮が足りないという内容であった[2]。その結果、巨乳のモデルは広告の場から退場せざるを得なくなり、茜さやはグラビアの世界から離脱。フリー素材向けフォトも胸のボリュームがないものに限定されるようになった。
絵文字の事例[編集]
携帯電話の絵文字は日本独自の文化であったが、ソフトバンクの孫正義氏がApple社に売り込んでiPhoneに搭載させたことをきっかけに世界中で使われるようになり、2010年にはUnicode規格にも搭載された。しかしUnicodeの絵文字に黒人が定義されていなかったことから、「黒人も入れてください」という声が世界中で上がるようになり、2015年以降のスマートフォンでは黒人を表す絵文字が使えるようになった[3]。しかしそれからわずか2年後の2017年には「黒人の絵文字やGIFを使うと差別になる」という理論が台頭するようになり、人の肌色が分かる形での絵文字の使用ははばかられることになった。[4]
飲食店の事例[編集]
2010年代からイスラム教のハラール認証やベジタリアンが過激化したヴィーガンなど、食の多様性が喧騒を起こし続けている。ハラール認証は統一的な基準がなく認証団体も日本だけで15団体以上あり[5]、飲食店側が全ての認証を得るのは物理的に困難である。その結果、日本にある大半の飲食店はイスラム教徒からのクレームに怯えざるを得なくなっている。
ヴィーガンはその過激ともいえる発信力の強さに負けてヴィーガン向けメニューを出す飲食店も出始めたが、そのメニューに対して「どことなく感じる動物の苦しみ」とクレームを受けてしまう[6]など、飲食店側がヴィーガンの扱いにかなり手を焼いている状況である。
多様性の尊重が導く世界[編集]
多様性の尊重を重ねると、何か新しいことをやろうとしても「気分を害する人が1人でも居たらアウト」ということになり、ほぼお蔵入りになってしまう。例えば新サービスを世の中に出した場合、10万人が購入・利用すればヒット商品となり、その外側で気分を害する人が10名程度であっても以前は許容されていたが、多様性の尊重が求められる世界ではこのようなサービスは存在を許されない。
誰も気分を害さない画期的な新サービスを出すことは現実的には不可能である。イノベーションは側面的には何らかの社会的タブーを犯しているのが常であり、例えば自動車は排気ガスによる大気汚染と言うタブーを犯していたし、鉄道も騒音・振動が社会問題化するまでになったが、その後の技術的な改善によって世の中に受け入れられ、人類の移動手段のスタンダードとなった。しかし、多様性の尊重が求められる世界ではタブーを犯している改善前の状態のものを世に出すことが許されないため、イノベーションを起こす難易度が跳ね上がる。
また、チキンラーメンの開発秘話に見られるように、古来からイノベーションは大企業よりも中小企業や一個人が起こすのが一般的であった。しかし中小企業や一個人は「多様性の尊重に配慮せよ」と言う声に対して耐性を有さず、その声が一切出ない新サービスを開発するにするには莫大な資本を要するため、イノベーションに繋がる新サービスを開発できなくなり、大企業の下請けや孫請けとして食い扶持を稼ぐようにならざるを得ない。
その結果、人間社会は何の特筆性もない凡庸的なサービス・商品であふれかえるようになり、稀に大企業がその資本力を生かして新サービスを提供するようになっていく。新サービスは「不良品以外のクレームゼロ」が目標となり、長い期間をかけて開発され、世に出されていく。それでもわずかにクレームが出てしまった場合は、大企業の資本力を使って抑え込んでいく。万が一大きなクレームが出てしまった場合は、開発者にすべての責任を押し付けてなかったことにもできる。
つまり、多様性の尊重が導く世界は、凡庸的な商品・サービスでも大々的に売り込め、大きな体力とクレーム耐性も有している大企業が大手を振って歩くという弱肉強食の世界なのである。
脚注[編集]
- 元の位置に戻る ^ トランスジェンダー更衣室訴訟が和解、ネットで起きた当事者批判をどう考えるべき?(弁護士ドットコム)
- 元の位置に戻る ^ 転職サイトの“ただの私服姿写真”の女性モデルが「胸を強調」と猛バッシング浴びている件(ビジネスジャーナル)
- 元の位置に戻る ^ 「絵文字に平等をサポートしてください」人種差別の指摘にゆれるUnicode(Internet Watch)
- 元の位置に戻る ^ 黒人の絵文字やGIFアニメ うかつに使うと人種差別?(BBC)
- 元の位置に戻る ^ ハラル認証の実態(日本フードバリアフリー協会)
- 元の位置に戻る ^ 日本でもヴィーガンがついに飲食店にクレームをつける(togetter)
関連項目[編集]
- フェミニスト - 多様性の尊重を求める圧力団体の一つ。
- 最大多数の最大幸福 - これは「最大多数側に回る」ことで幸せを掴めるという考え方である。
- 新自由主義 - 実は目指すゴールは一緒である。
- ポリティカルコレクトネス