新型コロナウイルスに感染し、現在は社会復帰している青森県内の女性が、現在もめまいや嗅覚障害、抜け毛といった感染症の後遺症とみられる症状が続いていると、20日までの東奥日報の取材に語った。女性は「コロナに感染しても軽症で済むから大丈夫-と考えている人もいるようだが、甘く考えないでほしい。後遺症の可能性があることも知ってほしい」と語る。
女性は数カ月前、PCR検査で新型コロナ陽性と判定され、入院。症状は比較的軽く、経過観察を経て退院から約1カ月後に日常生活に戻った。
しかし退院後、味やにおいを感じない、歩行中にめまいがしてふらつく、抜け毛がひどい-といった症状が気になり始めた。ただ生活に支障が出るほどではなく、通院はしていないという。現在、味覚は元に戻り、最近になってにおいが分かるようになった。
コロナ後遺症の実態調査・研究を進めている日本呼吸器学会の横山彰仁理事長(高知大医学部呼吸器・アレルギー内科学教授)は取材に対し、女性の症状について「全てが新型コロナウイルスによるものかは検査をしてみないと分からないが、特に別の原因がなければ、退院後に症状が長期残存しており、後遺症と考えられる」と指摘する。
女性は「感染しないに越したことはない。予防に努めてほしい」と話した。
▼日本呼吸器学会・横山理事長に聞く/精神的ストレスも要因か 実態調査進める
新型コロナウイルス感染者の後遺症の実態について、日本呼吸器学会の横山彰仁理事長に聞いた。
米医師会雑誌(JAMA)電子版に掲載された論文によると、ローマにある大学病院で、入院後回復した143人を発症から約2カ月後に調べると、無症状は約13%で、約87%が何らかの症状を訴えていた。倦怠感(けんたいかん)と呼吸苦の頻度が高く、他に関節痛、胸痛、せき、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、たん、食欲不振、咽頭痛、めまいなどが報告されている。
しかしながら、日本国内ではこれまで後遺症状・障害について調査がなされておらず、どのような症状がどのくらいの頻度で起こっているのかなど分かっていない。このため日本呼吸器学会が現在進めている調査・研究に協力してほしい。
後遺症には二つの要因があるとみられる。一つは環境的因子で、病院や施設で人に会えず長期に閉じ込められた精神的ストレスや長期臥床(がしょう)による筋力低下など。もう一つはウイルスによる直接的あるいは体内物質サイトカインによる間接的な影響で、肺障害・肺炎や血管内皮細胞障害、心筋障害などに起因すると考えられる。重症の肺炎が、肺が繊維化し硬くなった状態で治癒することもあり、これが呼吸不全や息切れ、不整脈の原因になっているとも考えられる。このような因子が複合的に症状を引き起こしているとみられる。
青森県民の皆さんに呼び掛けたいのは、糖尿病など持病のある人や高齢者は特に感染しないよう注意が必要。「3密」を避ける、相手と適切な距離を取ってお互いにマスクを着用する、適切な手洗いする-などを励行してほしい。
とはいっても、特に高齢者は家に閉じこもってばかりではいけない。家の周りや人が密集していない場所を散歩するなど、身体活動を高めることも重要だ。