4連休の初日の19日、マスクを着用して羽田空港国内線のカウンターで手続きをする人たち=共同
航空機内でのマスク着用の拒否を巡り、トラブルが相次ぐ。新型コロナウイルスの感染症対策として欧米では着用の義務化が進むが、国内では「要請」にとどまる。着用を強制できないなか、航空各社でつくる協会は業界共通の案内を作成。運航の遅延などを防ぐため、空港や機内での着用を改めて呼びかけている。
7日、北海道の釧路空港から関西空港に向かうピーチ・アビエーション機。離陸前にマスク着用を求められた男性の乗客が「書面を出すべきだ」と拒否し、出発が遅れた。離陸後も大声を出すなどの態度が続いたため、機長の判断で新潟空港に臨時着陸し、男性は降ろされた。関空へは2時間以上遅れて到着した。
12日にも、北海道の奥尻空港発の北海道エアシステム(HAC)機で乗客の男性がマスク着用を拒否し、離陸前に降ろされる事態が起きた。
機内でのマスク着用は義務ではなく、あくまで「お願い」だ。乗客を降ろしたのは、拒否する理由を説明しなかったり、威圧的な態度を取ったりと航空法の「安全阻害行為」にあたると判断したためだ。
スイスや英国などでは感染対策を徹底するため、機内での着用が義務化されている。米航空業界団体「エアラインズ・フォー・アメリカ(A4A)」によると、会員企業のアメリカン航空やデルタ航空などの主要各社も義務付けている。
一方、日本では「他の公共の場でも着用を義務化していないのに、航空機だけ義務付けするのは可能なのか」(大手航空会社の担当者)との声もあり、強制には至っていない。
政府の観光支援事業「Go To トラベル」の対象に10月1日から東京発着分が追加される予定で、空の便の利用は増える。航空アナリストの鳥海高太朗氏は「需要回復には安心して旅行できる環境が必要。感染収束まで時限的でも義務化を検討してもいいのでは」と話す。
相次ぐトラブルを受け、国内の航空会社19社でつくる定期航空協会は4連休を前にした18日、マスク着用に関する乗客向けの案内をホームページで公表した。機内や空港での着用を呼びかけ、できない理由がある場合は事前に係員に申し出るよう呼びかけた。
「素材が原因の場合はフェースシールドを用意するなど、事情に即した対応もできる」と同協会担当者。案内では係員を無視するなど指示に従わなければ「搭乗を断る場合がある」としている。