美少女カナチの物語
『石狩川のほとりにあるタナセに住むカナチは、さえわたる如月の星空のように美しく冷やかな、美少女でしたが、決して家を出ることがなかったのでカナチのうわさは神秘のヴェールに包まれていました。ある日、カナチは病気になった父のかわりに石狩川へ、アキヤンチ(鮭)を捕りに出かけました。ところがカナチが外に出るのを一日千秋の思いで待ちうけていた悪魔は、大きな沼貝(ピプウシ)に姿をかえて彼女を一呑みにしてしまったのです。美しいカナチが死んだ川岸には、それ以来可憐な忘れな草が咲き乱れるようになり、コタンの人々はこれをピプウシと呼ぶようになりました』元は比布町史ですが原型が変わっている様です。アキヤンチは日本語、ピプウシの意味も不明、一番の問題は「わすれな草」でしょう。「わすれな草」は明治年代に外国から移入された園芸植物で、在来種は「エゾムラサキ」の一種のみ、従ってアイヌ伝説に「わすれな草」が出てくることはあり得ないことになる。更に北海道のデジタル絵本館の美少女カナチの物語になると基本ストリーは保たれてはいるが脚色がされているのでアイヌ民話の雰囲気は無くなっている。かつて棚瀬山傍を流れる石狩川の下流にはピップ民話『屯田兵の恋』の舞台になったという豪快なピリカの飛瀑(比布大滝)は既に崩壊し、滝の面影が残る淵となって残っている。
- 2010.12.20 Monday
- 伝説・上川&宗谷
- 10:00
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- by hiro