日本介護支援専門員協会という組織は、随分とおもしろい団体だ。会員の意見を代表するよりも、国に顔を向けた活動しかしていないように見えるからだ。その姿勢は糾弾にも値しない嗤うしかない姿である。

特に滑稽だったのは特定事業所集中減算について、2016年6月に会計検査院が、減収を避ける目的で意図的に集中割合を下げる事業所が多いとして、「集中割合を調整しようとすれば、必ずしも利用者本位のプランが作られていないことになる。ケアマネジメントのそもそもの趣旨に反する」・「(特定事業所集中減算というルールは、)合理的で有効とは言えない」と見直しを求めたことが、廃止議論につながったにもかかわらず、この協会が「利用までのプロセスに必ず主治医が関わる医療系サービスは対象から外すべきだと考える」などという訳の分からない意見書を出していることだ。最終的にはこの減算ルールは廃止されずに、前回改定前の福祉系3サービスだけ減算対象とするというルールに逆戻りしてしまった。

公正中立なケアマネジメントのために、福祉系3サービスの集中減算が必要だという理由がわからない。なぜそれを残したのか?少なくともこの協会が下らない意見書を出さずに大人しくしておれば、特定事業所集中減算というくだらないルールは廃止されていた可能性が高い。まったく何をしているのだか・・・。

居宅介護支援事業所の管理者を、「主任ケアマネジャー」に限定した基準改正について、この団体は賛成の立場をとっていることもおかしなことだ。

その理由について、ケアマネジメントの質向上のためとしているが、なぜ主任ケアマネを管理者にすればケアマネジメントの質が向上するのかという理由について、次のように理論づけしている。

1.主任ケアマネジャーになるためには、5年間の実務経験が不可欠になる。=管理者としての責務を十分に果たすには、やはり一定の経験値を積んでいることが必要になると考える。
2.主任ケアマネの研修では、個別事例の検討やスーパービジョン、後輩の育成や業務管理、リスクマネジメントに関するカリキュラムも含まれおり、これらを学んでいる人とそうでない人のどちらが相応しいか? それはやはり前者である。
3.主任ケアマネが管理者を担っている事業所の方が、他のケアマネが相談できる時間を設けていたりOJTを行っていたりする割合が高いと厚労省の調査でも裏付けらた。

以上の3点がその理由である。あほか!!

1については、もともとケアマネになるためには、様々な職種の実務5年というハードルがある。それを無視して、さらにケアマネ実務5年というキャリアを求めているということは、ケアマネの資格取得のための実務は無駄であるということに他ならない。その理由の本音部分は、その実務にはソーシャルワーク実務とは程遠い実務が含まれているとことであり、本来なら相談援助職以外の実務経験をキャリアに認めてはならないと主張すべきである。それをしないのは、協会会員に占める介護職員実務で資格取得した人たちの割合を無視できないからだろう。そもそもケアマネ資格取得後に5年ものキャリアを積まないとケアマネジメントの質が保てないのであれば、資格試験受講に必要な実務要件など失くしてしまえばよいし、それに加えて試験内容の見直しを行って、ケアマネ資格取得のハードルを高くした方がまだましである。なぜそれをせずして、国の提言に迎合することしかしないのだろうか。そもそも一定の経験値が必要だというなら、ケアマネ実務経験でよいだけの話で、主任ケママネでなけれなならないという根拠にはならない。屁理屈にもなっていないわ。

2についていえば、主任ケアマネの研修という短い時間で、経営から教育、ケアマネ実務まで広く学んでも、そんなものは付け焼刃に過ぎないということをまるで分っていない。それより大学4年間で、ケアマネジメントをはじめとしたソーシャルワークを専門に学び、なおかつ介護経営論や、社会教育論を学んでいる社会福祉士の方がよっほど知識は広く深い。そうした人材も5年の実務を経ないと介護支援専門員になれないことの方が問題で、それ以下の知識しかない人間が何に相応しいのか大いに疑問である。そもそもあの研修は、寝ていてもスクリーニングされずに資格が与えられるというハードルが低いどころか、ハードルのない研修である。そんなものでスキルが担保されるわけがない。どうせなら主任ケアマネも試験制にすれば?そういう提言もしないで、管理者要件を認めちゃうって意味わからん。突っ込みどころ満載の論理としか言いようがない。

3はまったくお笑いの世界である。データは読み取り方で、平気で嘘をつくことがわかっていないのか。というかどこから引っ張り出したデータかわからんが、全国的にそのような調査をしたのであれば、サンプル数や調査結果を具体的に示せと言いたい。そもそもOJTをはじめとした職場の教育・指導というのは、管理者がどういう資格を持っているかに左右されるのではなく、母体法人等のシステム上の問題だろう。スーパービジョンも試験のいらない資格者にできるとは限らず、個人のスキルという問題だろう。現にスーパービジョンのできない主任ケアマネなんて、そこいらにごじゃごじゃいるわ。そんな常識さえわかっていない連中が執行部として国の言うがままに同調意見を挙げるだけの団体に陥っていることに気が付かないのだろうか。それにしてもOJTやスーパービジョンが一管理者の資格(しかも眠って受講していても取得できる資格)で左右されると考える脳みその構造はいったいどうなっているんだ。わけわからん。

うがった見方をすれば、主任ケアマネ資格取得のための研修と更新研修を受講する人が増えれば、協会会員(特に執行部)にとっては、その講師役を務める機会が増えるなどの旨味があるのだろうと思ってしまう。そんなことはないだろうとは思うが、ここまでナンセンスな意見はそうでも考えないと理解不能である。

ところで特定事業所集中減算を元のルールに戻すことや、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネに限定することに賛成する意見は、全国各地の介護の場で活躍する介護支援専門員の声を代弁しているのだろうか。会員の声を代表しているのだろうか?

僕の講演を受講する介護支援専門員の方々に意見を聞くと、ほとんどが協会の姿勢に疑問を抱いている人々だ。つまり現場の声を代表していないのが、日本介護支援専門員協会の執行部の意見ではないのだろうか。

この協会の運営費は、国の補助金事業で賄われている部分があるので、それによってひも付き団体の域を出ず、会員より国に顔を向けざるを得ないということではないのか?

何より問題なのは、このような重要事項に関する組織の姿勢表明に際して、会員の意見を聴く機会をまったくもたずに、執行部の意見だけで「俺についてこい」方式ですべてを決めていることだ。これが民主的な組織といえるだろうか?

そのような団体に決して安くない会費を払い続けている会員のみなさんはお気の毒である。

どうせお金を使うならば、もっと現場の声を代表する別の団体を立ち上げて、そっちにお金を回したいものだ。


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