月刊「根本宗子」の前回公演『紛れもなく、私が真ん中の日』を観て、衝撃と言っていいほどの驚きと感動を体験したという三浦春馬さん。根本さんの話を訊いてみたいと強く感じたという。この対談も前回の公演についての話から始まった。
- 三浦春馬
- 根本さんは脚本を書く時、自分の体験はどのくらい入れるんですか?
- 根本宗子
- 私はこれまでほとんど体験をもとに書いてきたんですけど、近年少しずつフィクションも増えてきてます。
- 三浦
- 前回の『紛れもなく〜』の時は?
- 根本
- あれは体験をもとに膨らませたものです。小学生の頃、親友にすごいお金持ちの家のコがいて。彼女のお誕生会にはクラス全員がお呼ばれして、とにかくすごい豪華なパーティだったんです。
- 三浦
- じゃあその記憶をベースに?
- 根本
- 出演者21人全員から幼い頃の話を根掘り葉掘り訊いて、一人ずつアテ書きした感じです。
- 三浦
- それはすごい。たしか全員オーディションでしたよね。
- 根本
- そうなんです。初めての試みだったので、とにかくまず応募者全員に会おうと思って。
- 三浦
- それってすごい数でしょ。
- 根本
- 400人くらい。
- 三浦
- それはどうして?
- 根本
- それまでは書類選考してたんですけど、もしかするとそこでいい人を落としてたんじゃないかって気持ちがあって。今回は事前に「興味ある・普通・興味ない」の3段階に分けてたんですけど、結果、「興味ない」
だった人をけっこう取っていて。やっぱり会ってよかったですね。
- 三浦
- オーディションでは何をやってもらうの?
- 根本
- まず好きな食べ物の話をしてもらって、次に嫌いな食べ物のことを好きな態で1分間話してもらうんです。好きなもののことは素でしゃべるけど、嫌いなものを好きな態でしゃべるにはお芝居をするわけです。その時に素に近い状態でかつ聞く人を愉しませられる人が、私の芝居には合ってると気がついたことがあって。私の芝居は台詞がすごい多くて、しゃべるのも速いので。
- 三浦
- なるほどねぇ。
- 根本
- 主役のコを演ってもらった山中(志保)さんはそれがものすごく自然にできていて、私の中では早い段階から彼女を中心に座組みをしていった感じでした。
- 三浦
- その山中さんを守ろうとする正義感の強いコの役の彼女が気になったなぁ。子供時代の叫びが自然と胸に響いた。
- 根本
- (藤松)祥子ちゃん。彼女は400人の中でも抜群にうまくて、それに声がすごくよかった。こういうコがいてくれるといいなと思ってご一緒しました。プレ稽古とかで話を訊くうちに、「自分の親友は誰にも盗られたくない」みたいなとても女の子っぽい一面を勝手に感じて。それであの役をアテ書きしたんです。
- 三浦
- でもそのオーディション、ヤバい。オレ、落ちちゃうかも(笑)。
- 根本
- そんな『キンキーブーツ』を拝見して、ホントに素晴らしすぎて思わず声を上げちゃったくらいですから。
- 三浦
- えっ、観てくださったんですか?
- 根本
- 実は私、ミュージカルが大好きで、いつかやりたくて。ただ予算が桁違いなので、何か違うアプローチでできないかなと考えているんです。「根本の芝居を観に来たはずなのに、終わってみたらミュージカル観てた」みたいに、芝居のはずがこっそりミュージカルになるとか。
- 三浦
- それ、超面白い でも、来年あたり月刊「根本宗子」を観に行ったら、今話してくれたような仕掛けをサラッとやってくれちゃいそうな気がする。
- 根本
- その時はお客さんじゃなくて、三浦さんも舞台の上にいてください。
- 三浦
- やったー、ありがとうございます。オーディションに通れば、ぜひ(笑)。
HARUMA MIURA
- photo/
- Megumi Seki
- styling/
- Naoki Ikeda
- hair&make/
- Akemi Kurata
- edit&text/
- Kaz Yuzawa
- 三浦春馬/
- ニット32,000円、パンツ30,000円(共にオーラリー☎03・6427・7141)、その他スタイリスト私物
本記事は雑誌BRUTUS884号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は884号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。