山口容疑者という男 70年代からマルチ商法を展開 逮捕時は“自社製品”を着て…

[ 2020年9月19日 05:30 ]

詐欺の容疑で逮捕されたジャパンライフ元会長の山口隆祥容疑者=18日午前7時29分、東京都文京区
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 山口容疑者は71年に都内で健康商品販売会社「ジェッカーチェーン」を創業した。販売員が別の販売員を獲得すると手数料が入るシステムで、75年にはマルチ商法として社会問題になり倒産。だが、同じタイミングでジャパンライフを設立し、代理店を通じた羽毛布団の販売で利益を上げた。

 非難を避けるため一時韓国を拠点に移し、2000年代に再び日本へ。長年の主力商品は、磁石を埋め込んだ数百万円のベルトやベスト。購入した顧客が会社に預け、第三者に貸し出す「レンタルオーナー」になれば、年6%の配当を得られるという販売預託商法を展開した。さらに「カウンセラー制度」と称して一部の顧客に報酬を支払い、知人らを勧誘させて集金を加速させた。捜査関係者は「カウンセラーの時給は約1000円。“仕事ができて生きがい”が見つかると言って主に高齢者の女性が任命された」と説明。地域に通じる同年代が勧誘者となり被害拡大の一因になったという。

 元社員によると、社内で山口容疑者は「カリスマ」。激情型で、客の前で涙を流しながら身内を早くに亡くした話で感情をあおり「磁気治療器」での血流促進を勧めた。仕事熱心で休日はほとんどない様子だったという。

 マルチ商法で1万人の顧客から約2100億円の資金を吸い尽くした山口容疑者。この日、自社製品とみられる磁気ベストを着込んで2階建てアパートから出てきたが、足取りも重く哀れな転落ぶりがうかがえた。

 《被害者女性「真実明らかに」》山口容疑者らの逮捕に、被害者は憤るとともに、安倍晋三前首相が「桜を見る会」に山口容疑者を推薦していた疑惑についての徹底解明も求めた。約1000万円をつぎこみ、今も約800万円が返金されていない愛知県豊田市の70代の無職女性は「会長が前首相に誘われる会社なら大丈夫だろうと信用した人は大勢いたはず。首相が代わったからといってうやむやにしてほしくない。真実を明らかにしてもらわないと、気持ちは晴れない」。約2700万円の被害に遭った山形県河北町の農家の男性(78)は「とりあえず一区切りだが、逮捕されてもお金は戻らない」とため息をついた。

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