挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営致します~ 作者:yocco

第五章 開店準備と錬金術師

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
51/69

49.ギルド長からの依頼

 商業ギルドのギルド長だという男性と共に、私とお父様も、見知った顔に驚いて目を見張る。


「あの時助けていただいた……!わたくし、この国の商業ギルドのギルド長を務めております、オリバーと申します。いやいや、またお会いするとは、ご縁がありますな!ささ、お掛けください!」

 私とお父様は勧められた席へ腰をかける。

「全く、偶然とはいえ驚きました。私はヘンリー・フォン・プレスラリア、この子は娘のデイジーと申します。本日は、娘が二年後に錬金術のアトリエを開業しようとしておりまして、その件で事前にご挨拶に伺いました」

 そう言って、お父様が挨拶をしながら、国王陛下からいただいた紹介状をオリバーさんに差し出す。


「失礼致します」

 オリバーさんは、そう一言ことわってから紹介状を受け取りナイフで封を切る。その中の書面を読んで、ふむふむと頷いている。

「……なるほど。デイジーお嬢様は既に優れた錬金術師としての腕前をお持ちで、国に対してポーション類を販売されていた実績があると。それを誰もが購入できるように、街にアトリエをお持ちになりたいと考えておられるのですね」


 オリバーさんに問われ、私が答える。

「はい、主にポーション類を売りながら、錬金術によって出来る、ふんわりと膨らんだ柔らかくて美味しいパンも販売する予定です」


 柔らかいパン、という単語にオリバーさんは不思議そうな顔をする。

「パンと言うと各家庭で作る平べったくて、あまり美味くもないものという印象しかありませんが、錬金術で美味しいパンまで作れるのですな。そういうものを置くのであれば、既存の錬金術のアトリエと比べると目新しさがあって差別化ができますな」


 そう言いながら、オリバーさんは、『規約』と書かれた一冊の本と、『仮登録申請書』と書かれた一枚の紙をテーブルの上へのせた。

「お嬢様の場合、まだお年が下限の十歳に達しておられませんから、今は本登録はできません。ですが、『仮登録』という形で、事前に商業ギルドに開店許可を取り付けておくことが可能です。こちらでしたら仮登録の手続き料は必要になりますが、今でも登録可能ですし、安心して開業準備も進められるかと思います」


 そう説明を受けて、私はお父様と顔を見合わす。

 登録料の前に事前に仮登録料を支払っておくことで、開業準備を安心して行えることと商業ギルドとの関係を構築できるなら上々でしょう。

 よく聞いた、お父様のお言葉的にいえば、投資?大人っぽく考えてみたけれど、使い方あってるかな。


 そういう訳で私は、『仮登録申請書』に名前や住まい、保証人(お父様)などの必要事項を記入し、料金を支払って手続きをした。


『仮登録』についての手続きは終わった。すると、オリバーさんが、おもむろに、身を乗り出して別の話題を持ち出した。

「ところで……、国王陛下からの推薦状には、お嬢様は『優れた錬金術師』と紹介されておいでです。それにすがる思いで、ひとつ、私からご相談させていただけないでしょうか」

 オリバーさんの目は真剣だ。


 私はお父様と目を合わせ、目線で確認をしてから、「どのような件でしょう?」と、相談を聞くことにした。


「娘の足についてです」

 オリバーさんが言うには、オリバーさんの娘さんのカチュアさんは、数年前、草むらに潜んでいた『ストーンバイパー』(石化蛇)の子供に左足首を噛まれ、左足首から下が石化したまま治らないのだという。王都内の錬金術師や医師に問い合わせても、石化を治すための方法は見つからず、娘さんは不自由な生活を強いられているのだそうだ。


「不自由な足のままでは、商売人になりたいと言っている娘の行動も制限されます。何より、女の子なのにあの足では嫁入りにあたって障害にしかならないでしょう。私はあの子が不憫でならないのです」

 そう言ってオリバーさんは、両手で顔を覆ってしまった。


「今の段階で必ずできるとはお約束は出来ませんが、家に帰って調べてみます」

 ひとまず私は、治せる可能性について探りたかった。歳の近い女の子がそんな不自由をしているなんて可哀想だと思ったから、力になってあげられればと思ったのだ。


「ひとまず調べていただくのに銀貨三枚、もし薬を作っていただくということになったら、作成費用は必要な材料にもよるでしょうから、あらためてご相談させていただくということでいかがでしょうか」


 私は、お父様の顔を見る。特段ダメという反応もなかった。


「わかりました、それでお引き受け致します」

 私は、こくりと頷いた。


「ありがとうございます!よろしくお願いいたします!」

 そういうと、オリバーさんは立ち上がって私の両手を自分の両手で取りがっしりと握った。後で、貴族の女性相手に馴れ馴れしいと気づいたのか謝られたけれど。


 私は、銀貨三枚を受け取り、石化を解除するための方法を探ることになった。

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。