夫婦怪人ダディ&マミィ~正義のヒロインを家族愛で怪人に再教育~
ジャベール作品初の非18禁・非TSFです。
ヒロインが洗脳や調教によって悪堕ちしても、仲間との絆や不思議なパワーのおかげで浄化され、正気を取り戻して逆転っていう展開はお約束ですね。
個人的にはそのまま悪に染まったまま、かつての仲間を倒したり連鎖堕ちする方が好きですが(笑)。
しかし、今回作者が妄想したのは、いつもの作品のように特殊能力や道具を用いた短期間でのヒロインの洗脳や調教ではなく、ヒロインを赤子に戻して一から育て直すというシチュエーションで、ハートフル(?)悪堕ちです。
私なりに『破られない悪堕ち』を書いてみました。
設定的なものと後書きを最後に載せています。
感想などありましたら是非ともお気軽にどうぞ!
- 218
- 231
- 10,155
「つ、強い・・・!!(悔しいけど、も、もう動けない・・・)」
大の字にアスファルトの上倒れ、口内に広がる血の味を噛み締めながら悔しそうに呟くのはシャイニーレッド、この街を悪から守る正義のヒロインである。
しかし、ヘルメットの前面が砕け顔の一部が露になっていたり、ボディスーツのプロテクターは破壊され所々破れて血が滲んでいたりと酷い格好だ。
「ハハハ、俺とハニーのデートを邪魔するからそうなるのさ!」
愉快でたまらないといった感じで笑っているのは怪人ダディ・ファミリア。
二メートルはあろうかという逞しい肉体と黒い鎧のようなスーツから繰り出される攻撃は鉄筋コンクリートの建物や地面を容易く砕くことができるほどのパワーを秘めている。
「まったくだわ、ダーリン。私達夫婦の愛に勝てる訳ないじゃない」
ダディに抱きつき、厚い胸板に頬擦りしながらうっとりとした表情を浮かべているのは怪人マミィ・ファミリア。
ダディとお揃いの色のスーツを着用するグラマラスな女性だが、そのスピードは身体能力と動体視力がかなり強化されているはずのシャイニーレッドですら目視できないほどである。
二人は夫婦で、ボロボロな姿で転がっているシャイニーレッドとは対照的に無傷でまだまだ余裕があるとこれから相当な実力を有していることが分かる。
「う、うるさいっ!!アンタらふざけた夫婦になんてブルーと一緒なら負けたりなんかしないわよ!!」
何とか少しだけ上半身を起こして、自身を嘲笑っている憎き怪人を睨み付ける。
高校生であるシャイニーレッド・赤原ヒカリとその親友のシャイニーブルー・青山聖は正義の戦士として目覚めて以来、街に襲来する悪の怪人と戦ってきた。
最初は不慣れだったものの、二人一緒に力を合わせて奮闘し勝利を重ねてきたのだが、この日は事情があった。
女子カルタ部の主将を務める光子が競技のため遠征することとなり、一時的に街を離れていたのだ。
そんな中で新たな怪人が出現し街を破壊し始め、黙って見てはいられなかったヒカリは光子に連絡を入れると単身で怪人に挑んだのだが、結果は惨敗。
夫婦だという二人一組の怪人の完璧な連携攻撃の前には全く歯が立たなかった。
「な、何だと!?お、俺達がふざけた夫婦だと!?聞いたかい、ハニー!!」
「慌てないでダーリン。誰が何と言おうと私達の愛は本物よ!!愛しているわ、ダーリン!!」
「あぁ、ハニー。もちろん俺も愛しているとも!!」
「ダーリン!!」
「ハニー!!」
シャイニーレッドが見ている前だというのに、それに構わず熱く抱き合って愛を確かめ合うダディとマミィ。
俗に言うバカップルであり、相当なものらしい。
「あ、アンタ達、さっきから人前で恥じらいもなくイチャイチャして、馬鹿じゃないの!?」
それを見たシャイニーレッドが呆れをまじえながら言う。
本人としてはバカップルに惨敗したというのを認めたくないというの思いもあったのだが、イチャつくならTPOをわきまえるべきだと注意したい思いもあった。
しかし、言い方が悪かったのもあり後者の思いは夫婦には通用しなかった。
「・・・ねぇ、ダーリン。さっきからこの娘、失礼だと思わない?」
「同感だよ、ハニー。俺達の仲が羨ましいのか妬ましいのか知らないが、それを侮辱するなんて言語道断だ!」
むしろ逆効果だったらしい。
夫婦の顔から夫婦愛に満ちた笑みが消え、一転してあわれむような眼差しでシャイニーレッドを見ている。
「え?いや、私は、そのーー」
「悲しいことに、この娘は愛を理解しないどころか知らないみたいだね、ハニー」
「何てかわいそうな娘なの・・・。ねえ、だったら私達が愛を教えてあげましょうよ、ダーリン!」
「それは名案だ、ハニー!!俺達がこの娘に愛を教え、与えてあげよう!!家族愛という形で!!」
「それじゃあダーリン、アレをやるわよ!!」
「ああ、やろう、ハニー!!」
夫婦は頷き合ってそれぞれ手を出し指を合わせてハートマークを作り、それを負傷して動けないシャイニーレッドに向ける。
「ちょ、ちょっと待って!!何か分からないけど、勘違いしてーー」
何やら話が勝手に進み、シャイニーレッドが戸惑いながら話しかけるも、夫婦は全く耳を貸さない。
何より、シャイニーレッドには嫌な予感がしていた。
「「『ラヴィンニュー・アゲイン』!!!」」
「きゃ、きゃああああぁぁぁ!!」
夫婦が技名を叫ぶと、合わさった指の形と同じであるハートマーク状をしたピンク色の光線が発射され、動けないシャイニーレッドに直撃する。
「いやぁぁ!!何よこれ!?私、小さくなってるの!?」
光線が直撃するもダメージはないが、ピンク色の光に包まれたシャイニーレッドの身体に異変が起き始める。
ダディとマミィに負わされた全身の傷が癒えたかと思えば、彼女自身の時間が巻き戻るように若返っていき、それに合わせて身体が小さくなっていき、ボロボロになったスーツのサイズが合わなくなってしまう。
「や、やだー!!ひかり、こんなのいやだよーー!!」
口から出る言葉、思考も幼い子供のように退行してしまい、それだけではなく今までの記憶や思い出が消えていく。
「うぅ、うわぁぁぁん!!」
感情のコントロールができなくなり、不安と恐怖から泣き出してしまう。
しかし、やがて何で泣いているかも分からなくなっていく。
「おぎゃあ、おぎゃああぁぁ!!」
全てが終わりピンクの光が霧散して消えたころにはサイズが合わないスーツの中にくるまって泣くだけの赤ん坊になってしまった。
「あぁ!ごめんなさいね、赤ちゃん」
変化が終わったのを見届けたマミィが急いで駆け寄り、シャイニーレッドだった赤ん坊を優しく抱き上げる。
「おぎゃあぁ、おぎゃあっ!!」
「よしよし、いい子、いい子」
「ふえっ・・・・ひっく・・・」
手のひらで優しく背中をさすりながらゆっくりと揺らすと、赤ん坊はやがて泣き止んだ。
「おお、ハニー!さっそくママの仕事を仕事を果たした見たいだね!流石俺の愛するーー」
「ふぇっ、ふえぇぇ・・・」
「ちょっとダーリン!いきなり大きな声を出さないで!赤ちゃんが驚いちゃったじゃないの!」
マミィが赤ん坊をあやすのを見たダディがその手際を誉めようとするものの、大声に驚いた赤ん坊が泣きそうになり、マミィが注意をする。
それはもう先ほどまでの妻としての振る舞いではなく母親としてのものだった。
「す、すまないハニー・・・。気をつけるよ・・・」
「これからダーリンはこの子のパパになるんだからしっかりしてよね!」
「あ、ああ・・・」
「きゃっ、きゃっ」
落胆したダディの顔が面白かったのか赤ん坊が笑う。
「おお、笑ったぞ!よしよーし、パパだよー」
「じゃあ、パパ。この子を私達で立派な怪人に育て上げるましょうね。たーっぷり愛して、ね」
「ああ、ママ。それじゃあ行こうか。俺達家族のマイホームへ!『ファミリー・ワールド』!」
ダディが右手をかざして技名を口にすると、夫婦と赤ん坊の目の前に黒く大きなドアが出現する。
そしてドアを開けると、ドアは違う場所へ通じているようで、今ドアの向こうに広がっているのは大きな屋敷と見られる立派な玄関の前だった。
そのままダディと赤ん坊を抱えたマミィが通ってドアを閉めると、黒いドアは消え去り、そこにはただただ戦いの跡が残っているだけであった。