39.毒に倒れた王子
短めです。
その日、朝から王城は騒然としていた。
「誰か!宮廷医師を呼べ!早く原因を究明させろ!」
その日の朝、現王の唯一の男児である、第一王子ウィリアムが倒れたのである。
国王陛下と生母である王妃も王子の部屋に駆けつけた。
部屋のベッドに寝かされている王子の顔色は紫がかっており、特折苦しそうに腹部を抑えて縮こまる仕草をする。
その様子を見た王妃は涙を流して王子の小さな手を取り、寄り添っている。
「容態はどうなっている!」
気が焦って医師に問いつめる国王。
「は、何らかの毒に侵されているご様子です。毒消しポーションを出せ」
宮廷医師は、彼の助手に手持ちの薬の中から解毒薬を探させ、それを受け取った。
「またか……」
王は苦虫を潰したような顔で呟く。警戒はしているものの、これが一度目ではないのだ。
若い王に王妃が一人。王にその気はなくとも第二夫人を勧める貴族は煩いし、前王の子である王弟達もいる。
次の王を狙う者、娘を将来の王の生母とさせようと目論む貴族にとっては、まだ幼い第一王子は邪魔者であった。
王妃は崩れ落ちて泣いた。
自らが狙われるのはいい。だが、幼いわが子が度々苦しめられるのに耐えられず、嘆き悲しんだ。せめて弟がいれば、いくらかは、玉座の簒奪を狙うものたちの野望も挫けるだろう。そう願い、次の王子を産むことを望みながらもままならないのだった。王妃は母として自らの非力を嘆いた。
「解毒ポーションをお飲ませ致します」
国王へ一礼してから、宮廷医師は王子の側に行き、蓋を開けたポーション瓶の口を王子の口元に寄せる。それは、王子が毒に侵された時に使われる、いつもの品だった。その解毒ポーションは、然るべきところで作られた、王室で使われるにふさわしい品質のものである。
……王子はいつものように回復するはずだった。