38.強力解毒ポーションを作ろう①
ある日、畑に行くとマンドラゴラさんに声をかけられた。
「デイジー、デイジー」
ん?と思って、マンドラゴラたちの前にしゃがみこむ。
「もう根っこあげる準備できたよ!いる?」
青い花の子が聞いてきた。
「ありがとう、マンドラゴラさん。分けてくれると嬉しいな」
私はこくこくと頷く。
すると、土の中から立派な太い根っこが三本顔を出す。マンドラゴラさんが顔をしかめたと思ったら、スポーン、スポーン、スポーン!と抜け飛び、地面に落ちた!
え、何?根っこって切るとか折るとかじゃないの!?
「……ふう、気合い入れると疲れるよ!あ、抜いたの遠慮せず持っていってね!」
私の疑問とは関係なく、マンドラゴラさんは、ひと仕事したぜーって顔してる。
「う、うん、ありがとう!使わせてもらうね」
動揺しながらも、あちこちに飛び散った根っこを拾い集め、お礼を言う。
そしてあと必要な毒消し草の葉を数枚ちぎって、一緒に製作をしようと思ってマーカスを探す。
……あれ。どこにもいない。
マーカスを探していると、ケイトに出会った。
「ねえケイト、マーカス知らない?」
私が尋ねると、ケイトは頬に手を添えて、困ったような顔をして答える。
「マーカスは、お嬢様のことを『お嬢』と呼んでいるところをセバスチャンに聞き咎められまして……罰として今屋敷中のトイレ掃除を命じられていますよ」
そう言って、彼女はほらそこ、と、指を指す。
その先には、廊下を走って次のトイレに移動しようとしたマーカスが、セバスチャンに叱られていた。
「廊下は走らない!背筋を伸ばす!プレスラリア家の使用人として、騒がしく見苦しいですよ」
そう指摘しているセバスチャンのもとに私は歩み寄る。
「お疲れ様、セバスチャン。マーカスはしばらくあなたの元で教育することになるの?」
そうであれば、定期的にお願いしている仕事もある。予定が変わるので確認しないといけない。
「はい、ちょうどそのお話をさせて頂こうと思っておりまして……」
セバスチャンが私に一礼して答える。
「マーカスは、お嬢様が定例の作業としてお命じなっている作業をする時間以外は、礼儀作法を含めて一度教育し直そうと思っております。また、将来独立なさるお嬢様のお側にお仕えすることを考えますと、彼には読み書き計算をもう少々強くした方が良いと思います。一度で使用人としての教育を終わらせられず、お手数おかけして申し訳ありません」
少し可哀想な気もしたけれど、長い目で見たらやはり必要な事なのだろう。将来私が独立する時に、彼がマナーも身につけられていない、金銭の計算を誤るような状態であれば、国も含め色々な立場の人たちを顧客にする予定の私の側に置くことは出来ない。
優しくありたいけれど、ケジメはケジメ。そう考えることにした。きっと私の心の中に、歳の近い子供同士、という甘さもあったのだろう。
「いいえ、セバスチャンありがとう。色々考えてくれてありがとう。マーカスのこと、よろしくお願いね」
素直に感謝の意を伝え、私は一人で実験室に向かうことにした。
◆
実験室に入って、必要なビーカーなどの準備をする。蒸留水は朝のうちにおそらくマーカスが準備してくれたものがあった。
……頑張ってね、マーカス。
少し目を瞑って、心の中で彼を応援する。
「……うん!私も久々の新作頑張ろう!」
私は気合を入れて調合に入るのだった。
まず、毒消し草の苦味を確認するために、葉の端っこを少し齧ってみる。
「……この葉は苦味がないのね」
じゃあ、塩とお湯での下処理はしないでこのまま使ってみようかな。
私は、毒消し草の葉っぱとマンドラゴラの根っこ一本を、そのままみじん切りにした。
そして、蒸留水を入れ、魔石も入れて、加熱を始める。
【強力解毒ポーション???】
分類:薬品
品質:低品質ーーー
詳細:有効成分はほとんど抽出されていない。
もう少したつと、気泡が大きくなってきた。
【強力解毒ポーション】
分類:薬品
品質:低品質ーー
詳細:有効成分は薄い。
さらに経つと、時々ポコポコし始めた。
【強力解毒ポーション】
分類:薬品
品質:低品質ー
詳細:根の有効成分の抽出が出来ていない。これじゃ普通の毒消しポーションの劣化版。
あれ?うーん、この表現だと、葉の成分は抽出できているんだよね……。
おそらく沸騰させたら葉っぱの成分は……と思いながらも、加熱を進めてみた。
水が沸騰を始める……と。
みじん切りにしていた毒消し草がどろりと溶け始め、えも言われぬ毒々しい緑のとろみのある液体になってしまった……。
うわあ、と思いながら加熱をストップする。
【産業廃棄物】
分類:ごみ
品質:役立たず
詳細:捨てるしかない。見た目に気持ちの悪い一品。
……私は早速失敗した(とほほ)。
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