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消費税減税に踏み込む枝野幸男

 その小沢氏が「絶対次の総選挙の後は我々の政権だよ。間違いない」とまで断言している。この点について、私は小沢氏に直接話を聞いたわけではないが、ロングインタビューを重ねてきたジャーナリストとして、小沢氏の考えの一端は予測がつくように思う。

 まず、次期首相となることが確実な菅義偉氏は基本的に安倍政権の路線を継承することを明言している。同政権の官房長官だから当然のことだが、ここが致命的な弱点になる可能性がある。

 先に安倍政権の失政の大略を指摘したが、はっきり言えば国民の大半は安倍政権の7年8か月に大きい失望を味わっている。コロナウイルス対策についても国民の評価は極めて低い。

 安倍首相が辞任表明した後に実施された世論調査で、消極的支持も含めて、安倍内閣の支持率が高まったという報道があったが、持病の悪化が辞任の理由という筋書きへの同情を集めただけで、ほとんど意味がない。

 これに加えて、菅官房長官の失言が目立つ。菅氏は9月10日夜、テレビ東京の番組で、「将来的なことを考えたら、行政改革は徹底して行った上で、国民にお願いをして消費税は引き上げざるを得ない」と発言した。

 菅氏は翌11日の記者会見で、「安倍首相がかつて、今後10年ぐらい上げる必要はないと発言している。私も同じ考えだ」と軌道修正したが、野党側は枝野・新立憲民主党代表も含めて「ゼロ・パーセント」も含む消費税減税に大きく傾いている。

 消費税減税をめぐっては枝野氏は当初消極的だったが、小沢氏は私のインタビューに対して「景気条項」を新たに入れることを主張していた。コロナウイルスの影響で今後、景気が極端に悪くなることが予想される現在、消費税については減税を考えざるをえない。

 枝野氏は、ここにきて政策的にかなり柔軟な考えを採るようになったようだ。小沢氏の影響かもしれないが、政権交代を目指すには非常に重要な姿勢だと思われる。

 一方の菅氏は、安倍政権7年8か月の足かせがある上に、経済政策など国の全体の施策を進める上で今一つ将来を見通す力に欠けるように見受けられる。

 景気が最悪の状態の時に消費増税を言い出すという経済常識の欠如には驚くが、コロナウイルスの第2波が高まりつつある中で、工夫のないGoToキャンペーンを繰り広げる牽引役を担ったという報道に接する時、遅かれ早かれ国民の失望を買うような失政を引き起こす恐れが強いのではないか、と思われてならない。

 「絶対次の総選挙の後は我々の政権だよ」という小沢氏の見通しは、我々の目にも徐々に明らかになってくるのではないだろうか。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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