日本のアニメは海外でヒットしていない?
問 日本の漫画やアニメは海外市場で既に支持されているようにも見えるが。
青木氏:確かに、海外で大ヒットを記録した作品は少なくありません。ただ、改めて考えてみると、実は2000年代以前に始まった作品がほとんどで、最近のアニメはそこまで大きなヒットにはなっていないのです。
一方で、ハリウッド映画は近年も世界的なヒットを記録する作品が出ています。私には、日本が世界に誇っていたはずのコンテンツ産業が米国に侵食されているようにも見えます。
天野氏:今のアニメ業界では初めからグローバルな視点でコンテンツを作っている人はとても限られています。青木さんとは今回のプロジェクトが初対面だったのですが、熱意を感じ、参加を決めました。私自身はやりたいことをやっているだけで、あまりグローバルを意識しているわけではないんですが(笑)。今日の青木さんの話を聞くだけでも「自分はそんなこと考えたこともなかったな」と思うようなことがいくつもあります。
「お決まりのポーズ」こそ重要
問 日本のコンテンツ業界の未来を考えるうえで重要視している点は。
青木氏:日本のコンテンツ産業は先人が偉大なので、どうしてもそれに影響されてしまうのでしょう。
コンテンツは、技術革新が起こらない世界です。自動車のように自動運転技術が登場するわけでもない。もちろん視聴するデバイスは変わりますが、中身は基本的に変わらない。どこまでいっても、ストーリーとキャラクターで勝負する必要があります。
そういった環境で、気がつけば米国のコンテンツが勢いを増しています。もう一度日本が強い存在感を取り戻すには、コンテンツ作りの原点に戻らなくてはいけません。
天野氏:ハリウッド映画では、クライマックスでカッコイイポーズを取るということが「お決まり」になっていますよね。でも、お決まりでいいんです。タイミングよくカッコつければ、きちんとカッコイイ。水戸黄門が印籠を出すのだって、それと同じです。そういうカッコ良さに関して、日本の文化は十分良いものを持っていると思います。忍者や刀などは、特に見た目が映えますよね。そういった日本の文化を「ジビエート」は伝えていけるのではないでしょうか。
青木氏:そうです。ただ、日本の最先端のアニメでは、「お決まり」を避けるようになってきています。お決まりを重ねた結果、「オチを予想できる」というのが逆に日本のアニメファンにおいてはネックになってしまったのです。しかし、お決まりを否定しすぎると、最先端についてこられる一部のファンだけが産業を支える形になりかねません。
新しくて古い、という言葉は使い古された感がありますが、日本のアニメの未来を考えたとき、「ジビエート」はそこを目指すべきなんじゃないかと私は思っています。
コメント15件
延長被雇用のおじさん
機械系設計者
ハリウッド映画ですか・・・。
底の浅い薄っぺらいものしか無いように感じます。
一時期話題になった、脚本家を冷遇した件。
その結果、良い脚本は全部映画から逃げていってしまい、ケーブルTVの連続ドラマに移ってしまったのではないかなぁ。
そこで演
じられる、奥行きの感じられる作品は、日本でも受けていると思うのです。...続きを読む誰にでも判りやすい最大公約数的の作品に魅力を持たせることが出来るのでしょうかね???
OHTA
運営部長
何でもかんでもグローバルって、バカのひとつ覚えのように唱えてどうする?
海外で名作と呼ばれ、その後の映画(アニメではない)に大きな影響を与えた作品は、どれひとつ取っても海外市場向けに作られたものではない。
また、日本の学園アニメも海外の
アニメファンには人気で、それをきっかけに留学する人は多い。
...続きを読む単純にメガヒットを飛ばしたいのであれば、世界中のマーケットを調べて、日本製である必要の一切無い作品を作ればいい。
日本のアニメ業界がやらなければならないのは、海外市場向けの作品を作ることではなく、日本市場向けの作品を、どういう販路で、どういうターゲット向けに展開し、売り上げるかを考えることであって、監督や脚本が「これは、日本人にしか理解出来ない表現だからダメですね」等と言ってカットすることじゃない。
liatris
コンセプトがちょっと何周かくらい遅れているような気がします。現在のアニメ産業の方向性はオタクを世界中に増やしまくってその人達に売っていくやり方に変わっています。
以前は「それでは大ヒットは狙えない、もっとオタク以外に売るべきでないか」という
意見がまま出ていたんです。
...続きを読むしかし、結局そういった作品群は失敗し、日本人オタク向けに作って日本人オタクが好きなアニメが残っていくようになったのです。
そして近年になって、そのような日本人向けに作った作品が徐々に向こうでも受け入れられるようになり、現在の第三次海外アニメブームのようなものが生まれるようになりました。
現在ではそのように向こうで受け入れられたアニメを日本と世界中のオタク同士とのコミュニケーションを通して、作品にフィードバックして作品を作っているのです。
つまり、日本のためでもなく、アメリカのためでもなく、中国のためでもない。ましてやヨーロッパのためでもない。
世界中の"アニメオタク"のために作品を作る時代に入り始めています。
かつてこれほど日本のアニメで儲けていた時代はないと思います。鉄腕アトム以降のTVアニメは海外に二束三文で売りさばいていましたし、2000年前後のブームも一過性で終わってしまい、金額的にもさほどではありませんでした。
このような歴史的文脈をきちんと認識していれば、記事のような発言は生まれない気がします。
ogasawara
日本国内で売れなくていいならどうぞやってくれって感じですね。
EKCMaster
日本のアニメは、すでに大きなファン層が、世界中にできています。人気のある作品は、YouTubeでも日本で放送されたらすぐにリアクションビデオが1日で出回ったりしますし、英語のアニメ情報サイト、ブログがどれだけたくさんあるか…。私にも何人か海
外のアニメファンの友人いますが、本当にこの日本独特のコンテンツの面白さ、彼らは理解していますよ。もちろん、グローバルの万人受けアニメも作ったらいいかもしれないけど、そんなモチベーションで作ったアニメが面白くなるとは、私は思いません……ハリウッドの映画、ディズニーの映画の薄っぺらいコンテンツに比べ、本当に日本のアニメは独自の世界を作っていて他種多様な作品があり、このガラパゴス化はありだと思います…日本のアニメが、中途半端なハリウッド化を目指して、それが主流になってしまったら衰退しそうな気がします。...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
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