ファイナルファンタジーのデザイナーとバイオハザードの漫画家がコラボしたら、一体どんな作品になるのかーー。そんな童心を胸に秘め、日本の文化を世界に発信するプロジェクト「GIBIATE PROJECT(ジビエートプロジェクト)」を立ち上げた脚本家の青木良氏。同氏はこれまでも、アニメの事業企画を数多く手がけてきた。
今回のジビエートプロジェクトには、ファイナルファンタジーのキャラクターをデザインした天野喜孝氏や、バイオハザード公式漫画の作画を担当した芹沢直樹氏など、日本を代表するクリエーターが集結した。アニメ以外にもゲームや漫画などのコンテンツを世界展開していく予定で、津軽三味線奏者の吉田兄弟や書道家の紫舟氏、刀鍛冶の石田四郎國壽氏、日本人形職人の金林真多呂氏、三味線職人の小松英雄氏などを迎える。
米ロサンゼルスで開かれたアニメ・エキスポ2019で、7月8日にアニメ作品「ジビエート」を発表し、本格始動した同プロジェクト。発起人の青木氏と、ジビエートのキャラクターデザインを担当した天野氏に話を聞いた。
問 今回のアニメプロジェクトの「ジビエート」には多くのクリエーターが名を連ねている。そもそも、どのような経緯でこのプロジェクトが始まったのか。
脚本家の青木良氏(以下、青木氏):日本のアニメでグローバルを狙おうと思ったことが始まりです。
現在の日本のアニメビジネスは、まず日本市場向けに作って、ある程度の収益を確保したら海外に持っていくのが主流です。だから企画の段階では海外をそこまで意識しておらず、日本独特のアニメ文化になっているんですね。日本のアニメファンが喜ぶ表現を積極的に採用しています。
それはそれでビジネスとして成立しているのですが、やはり世界で受け入れられるコンテンツを作るべきだと思い、このジビエートプロジェクトを開始しました。日本だけでなく、中国、台湾、北米、欧州などでアニメ「ジビエート」を来年7月から放送していきます。
ただ、原作のない、オリジナルのアニメでは「フック」が課題になります。海外のアニメファンに興味を持ってもらえる“何か”が必要でした。そこで考えたのが、世界で高く評価されている国内のアーティストや漫画家さんとタッグを組むというアイデアです。
イラストレーターの天野喜孝氏(以下、天野氏):そこで、私にお声がかかったというわけです。今回のプロジェクトには漫画家の芹沢直樹さん、音楽家の古代祐三さんなど、業界の人からすれば「ここまでやるのか」と思うほど著名なクリエーターが集っています。この中の一員として入れて光栄です。
日本のアニメ産業、実はガラパゴス化
問 最初からグローバルを見据えたアニメの作り方は、国内向けアニメとどこが異なるのか。
青木氏:最も参考になるのはハリウッド映画です。私はこれまで、とにかく数多くの映画を見て、何が面白いのか、何が面白くないのかという研究を重ねてきました。
そこで見えてきたのが、日本のアニメがガラパゴス化しつつある現状です。日本のファンの期待に応えるためなのでしょうが、外国人には理解しづらい部分が多くなってきているのです。
例えば、「キャラ変」。好意的な態度と敵対的な態度を行き来するツンデレなどは典型的ですが、ハリウッド映画の場合はキャラクターに一貫性を求めます。
天野氏:シンプルなんですね。それは見る人が。例えば米国の場合、ハリウッド映画は都会から田舎まで何千カ所もの映画館で上映されます。だから、高い教育を受けていない人が見ても分かるように、ストーリーは単純にしなければいけません。
あんまり複雑にしちゃいけないんです。米国に住んでいるスタッフも「老若男女を問わず色々な人が映画を見ている。難しいストーリーを伝えようとしても、全員には伝わらない」と話しています。だからハリウッド映画は話をシンプルにしているんですね。
青木氏:国内向けのコンテンツであればいいのですが、私たちが目指しているのはあくまでグローバル市場です。日本のアニメでよくみられる記号的な要素はできるだけ取り払って、エンターテインメントの基本を踏んだストーリーを組み立てています。
日本の漫画やアニメは長い歴史があります。そのため、ある意味で「お決まりのパターン」が飽きられていて、セオリーを裏切る工夫を凝らす必要があります。これが、グローバルで受け入れられにくくなっている原因ではないでしょうか。
コメント15件
延長被雇用のおじさん
機械系設計者
ハリウッド映画ですか・・・。
底の浅い薄っぺらいものしか無いように感じます。
一時期話題になった、脚本家を冷遇した件。
その結果、良い脚本は全部映画から逃げていってしまい、ケーブルTVの連続ドラマに移ってしまったのではないかなぁ。
そこで演
じられる、奥行きの感じられる作品は、日本でも受けていると思うのです。...続きを読む誰にでも判りやすい最大公約数的の作品に魅力を持たせることが出来るのでしょうかね???
OHTA
運営部長
何でもかんでもグローバルって、バカのひとつ覚えのように唱えてどうする?
海外で名作と呼ばれ、その後の映画(アニメではない)に大きな影響を与えた作品は、どれひとつ取っても海外市場向けに作られたものではない。
また、日本の学園アニメも海外の
アニメファンには人気で、それをきっかけに留学する人は多い。
...続きを読む単純にメガヒットを飛ばしたいのであれば、世界中のマーケットを調べて、日本製である必要の一切無い作品を作ればいい。
日本のアニメ業界がやらなければならないのは、海外市場向けの作品を作ることではなく、日本市場向けの作品を、どういう販路で、どういうターゲット向けに展開し、売り上げるかを考えることであって、監督や脚本が「これは、日本人にしか理解出来ない表現だからダメですね」等と言ってカットすることじゃない。
liatris
コンセプトがちょっと何周かくらい遅れているような気がします。現在のアニメ産業の方向性はオタクを世界中に増やしまくってその人達に売っていくやり方に変わっています。
以前は「それでは大ヒットは狙えない、もっとオタク以外に売るべきでないか」という
意見がまま出ていたんです。
...続きを読むしかし、結局そういった作品群は失敗し、日本人オタク向けに作って日本人オタクが好きなアニメが残っていくようになったのです。
そして近年になって、そのような日本人向けに作った作品が徐々に向こうでも受け入れられるようになり、現在の第三次海外アニメブームのようなものが生まれるようになりました。
現在ではそのように向こうで受け入れられたアニメを日本と世界中のオタク同士とのコミュニケーションを通して、作品にフィードバックして作品を作っているのです。
つまり、日本のためでもなく、アメリカのためでもなく、中国のためでもない。ましてやヨーロッパのためでもない。
世界中の"アニメオタク"のために作品を作る時代に入り始めています。
かつてこれほど日本のアニメで儲けていた時代はないと思います。鉄腕アトム以降のTVアニメは海外に二束三文で売りさばいていましたし、2000年前後のブームも一過性で終わってしまい、金額的にもさほどではありませんでした。
このような歴史的文脈をきちんと認識していれば、記事のような発言は生まれない気がします。
ogasawara
日本国内で売れなくていいならどうぞやってくれって感じですね。
EKCMaster
日本のアニメは、すでに大きなファン層が、世界中にできています。人気のある作品は、YouTubeでも日本で放送されたらすぐにリアクションビデオが1日で出回ったりしますし、英語のアニメ情報サイト、ブログがどれだけたくさんあるか…。私にも何人か海
外のアニメファンの友人いますが、本当にこの日本独特のコンテンツの面白さ、彼らは理解していますよ。もちろん、グローバルの万人受けアニメも作ったらいいかもしれないけど、そんなモチベーションで作ったアニメが面白くなるとは、私は思いません……ハリウッドの映画、ディズニーの映画の薄っぺらいコンテンツに比べ、本当に日本のアニメは独自の世界を作っていて他種多様な作品があり、このガラパゴス化はありだと思います…日本のアニメが、中途半端なハリウッド化を目指して、それが主流になってしまったら衰退しそうな気がします。...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
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