13.王都北の小川への採取
今日は、ダンと一緒に王都の北の小川へ行くことになった。
私はお母様から与えられたリュックサックにポーションやハンカチを入れて、そして、手には持ち手の小さなスコップを入れたカゴを持っていった。
……うーん、採取用のスタイル考えた方がいいかも。かさばるなあ。
そんなこんなで二人でてくてく歩いていく。
門番とのやり取りは、私にまだ身分証がないので、お父様に一筆書いてもらった手紙を見てもらったら、すんなり通して貰えた。
王都の城下町を出て、門をくぐると、そこには一面の青々とした平原が広がっていた。そして、平原の上には雲ひとつない空が広がっている。
「すっごぉい!」
私は大きく深呼吸をする。空気も町中とは違って、青青している気がする。
「お嬢様、小川はこっちですよ」
ダンが私の手を取って歩いていく。
私が、森とは違う植物が沢山あることに目を奪われてフラフラしているからだ。
そんな時、ちょっと気になった植物があった。
【万年草】
分類:植物類
品質:良質
詳細:特に栄養に優れている。葉にも根にも栄養分を含む。イキイキしている。
……これ、もしかしてすごく良くないかなあ。根っこを材料にしたことは無いけれど、栄養剤とかの品質をあげられるかも……。
「ねえ、ダン」
私を引いて歩くダンの手をぎゅっと引っ張った。
「なんでしょう?」
ダンが足を止める。
「これも持って帰りたいわ。とっても栄養があるらしいの。そうね、畑に植えるようと、実験用に三株。三株全部根っこまで欲しいの」
私は上目遣いでお願いする。
「じゃあ掘り起こしましょうね」
見ててくださいね、と言って、ダンは土を少しずつ探って根っこをなるべく切らないように掘り出す。
「これはなかなか根まで立派ですな。じゃあ、お嬢様も一株掘り起こしてみましょう」
そう言われて、私も少しずつ土を掘り出す。隣でもう一株掘り出しているダンの様子を見ながら掘り出したら、一応合格点を貰うことが出来た。
その三株を私のカゴに乗せて、再び小川へ向かうことにした。
◆
小川に着いた。
サラサラと流れる小さな小川は水も綺麗で、太陽の光を反射してキラキラ輝いている。
「じゃあ、探しましょうか」
ダンに促されて、お目当ての草を探そうと思った時のことだ。
「あっ!お嬢様危ない!」
そう言って、ダンが私を背に庇う。
「運悪く、キラーラビットが居ました!」
【キラーラビット】
分類:魔獣
品質:良質
詳細:強い前歯を持つ。後ろ足の蹴りが強烈。
ダンはナイフで応戦しているが、苦戦しているようだ。
……どうしよう。
しかも、ダンは前歯で少し噛みつかれてしまったらしい。腕から血を流している。
……あれ?私って、職業判定の前に、兄様の真似して魔法の練習してたよね?あの時は出来なかったけど……
「ウインドカッター!」
その時のことを思い出して、試しに叫んでみると、なんと真空の刃がキラーラビットに向かって飛んでいった。
「ダン、避けて!」
ダンは背後からの私の声に気づき、体を横にずらす。
そして私のはなった魔法が、ちょうど運良くキラーラビットの両足の腱を切り裂いていた。
「……これは!お嬢様、ありがとうございます!」
嬉しそうに叫ぶと、ダンは動けなくなったキラーラビットの首根っこを押え、頸動脈を切った。
「お嬢様のおかげで、無事倒せましたよ。お守りできてホッとしました」
ダンはキラーラビットの足を縄でぐるぐる縛ると、逆さにして血抜きをする。それは、胴体が私の体ぐらいの大きさで、結構大きな魔獣だった。
私は、リュックの中から、ポーションを一瓶取り出して、ダンに渡す。
「腕に怪我をしているわ、使ってちょうだい」
「これはわざわざ。ありがとうございます」
そう言って、パシャっと腕の怪我にポーションをかけた。
「お嬢様のポーションは本当によく効きますなあ」
ダンはすっかり綺麗になった腕を撫でながら嬉しそうだ。
その後、落ち着いてから、草の捜索を始めた。
【薬草】
分類:植物類
品質:良質
詳細:そのまますり潰すだけでも怪我や病を治す効力がある。イキイキしている。
【魔術師のハーブ】
分類:植物類
品質:良質
詳細:空気中の
目当てのものを見つけ、私達はそれを掘り起こして、目的を達し、城下町へ帰ることにした。
【デイジー・フォン・プレスラリア】
子爵家次女
体力:20/20
魔力:175/180
職業:錬金術師
スキル:錬金術(3/10)、鑑定(4/10)、風魔法(1/10)
賞罰:なし
私は、スキルに風魔法が増えていた。
◆
その日の夕食には、私とダンで倒したキラーラビットがメインとして食卓に上がった。
育ち盛りの兄様が大喜びだ。
「今日はお肉もこんなに大きくて、豪華だね!」
キラーラビットは、脂は少ないが肉の柔らかさと甘みもあって美味しいのだ。
「今日、デイジーがダンと薬草を取りに行ったんですけど、偶然キラーラビットと出くわしてしまって。でも、デイジーの風魔法で動けなくなったところを、ダンがしとめてくれたんですって」
お母様が、ダンから受けた報告を家族に伝える。
姉様も立派なお肉でご機嫌なのか「五歳で魔獣を狩れるなんてすごいわ!」と横で手放しで褒めてくれている。
「あれ、デイジーは魔法の練習をしていたっけ?」
お父様が首を傾げる。
「お兄様の練習の横で、真似をして練習はしてました。実際にできたのは今日が初めてです」
私はお父様の問いに素直に答える。
「お父様、お母様。私も兄様や姉様のように魔法の訓練をしたいのですが、ダメでしょうか?」
両親は顔を見合わす。
「私が今後錬金術師としてやっていくには、この先、外に出ざるを得なくなることが出てくると思います。魔導師になれないとしても、魔法の才能が少しでもあるのだとしたら、私も身を守るすべが欲しいんです」
お父様は腕を組んでしばらく考えていた。
「デイジーが言うことはもっともだ。それに、才能の芽があるのに放っておくのは惜しいだろう」
その言葉で、私は魔法の練習を受けることを許可されたのだった。
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