12.畑を作ろう
「できたわ!これを混ぜればいい畑ができるわ!」
私は喜んで、ダンに報告しに行った。
「じゃあ、畑作りですかな」
そういうと、鍬とスコップを持ってダンは畑予定地の私の実験室横まで来た。
「まずは、こうやってざっくりとスコップで土を掘り起こします。はい、やってみて」
畑予定地を、一列程度掘り起こしてから、私にスコップが手渡される。
「よい、しょっと」
なかなか硬い。五歳児にはなかなかの労働だ。でも、自分でやらなきゃやり方覚えないよね。
何とか私は一列やりきった。
「よく頑張りましたね、あとは私がやっておきますね」
そう言って、ダンは手馴れた様子で土を掘り起こして行った。
「次に、掘り起こした土を鍬で細かくほぐしていきますよ」
そう言って、またダンが一列お手本を見せてくれる。
「さあ、やってみて」
うん、と頷いて、重たい鍬を持ち、私はコツコツと土を細かくしていく。
一列終わったところで交代して、残りをダンが解していってくれた。
そして、少し残った、まだほぐし足りないところを、二人で手で解していく。
「ダン、これを土の栄養の元にして混ぜたいの!」
そう言って私は、出来上がったばかりの『豊かな土』が入った木桶を披露する。
「ほほう、それがお嬢様の作られた肥料ですな」
ダンは興味深そうに木桶の中身を覗いていた。
そして、よいしょ、と掛け声をかけて木桶を持ち上げると、今細かくした土の上にざっくりと満遍なく放り出した。
「さて、混ぜますよ」
満遍なくね、と言って土と『豊かな土』を混ぜてくれた。
そして、周囲に畝を作って整形して……という部分はダンがやってくれた。
私の実験室の横に、大人一人分ぐらいの大きさの畑ができたのだった!
「草ってどうやって増やしたらいいのかしら?私はここを薬草畑にしたいのだけれど……」
首をかしげてダンに問う。
「うーん、小麦の種なんかだと取り扱っているところはあるでしょうが、草じゃあねえ」
そう、ポーションの材料になるような草は、自生しているものを自分で採取するか、危険な地域であれば冒険者ギルドに採取依頼を出して手に入れるのが普通だ。
ちなみに私が最初に手に入れた癒し草の葉っぱは、『薬草屋』がそうやって手に入れて販売しているものだ。
草の種というものはなんでも売っているというものではないのである。
「ちなみにお嬢様はなんの種が欲しいんで?」
「癒し草と魔力草は、裏の森にあったから良いんだけど、新しいポーションを作るのに、『薬草』と『魔導師のハーブ』が欲しいの」
「それでしたら、王都の北の小川沿いに生えているはずですね。私でよければ付き添いますが、ご両親の許可はいるでしょうな」
そっちはお父さまとお母さまに相談かなあ……。
「じゃあ、まずは魔力草と癒し草を取りに行きましょうか」
……ん?裏の森なら自分で行けるよ?
「根っこごと引っこ抜いて持って帰ってきて植えればいいんじゃないの?」
そういうと、ダンはやっぱりといった様子で笑ってダメダメジェスチャーをする。
「草花の植え替えは、優しくやってやらんと根っこが切れて枯れてしまいます。一緒に行ってやり方を教えましょう」
私はその日のうちに、ダンと一緒に株を採取に行き、癒し草と魔力草を二株ずつ畑に植えた。
◆
その日の夕方、お父様がお仕事から帰ってきたあと、畑が出来上がったことを報告した。そして、今後品質の良いマナポーションを作るために『魔導師のハーブ』、ハイポーションを作るために『薬草』の株が欲しいと相談した。
「品質の良いマナポーションなんて、手に入るならうちの師団で買いたいぐらいだ」
魔法師団の副師団長のお父様が食いついた。
「そうなんです。良いマナポーションがあればお父様のお役に立てるんじゃないかと思って……でも、それの株は王都の北の小川沿いを探さないといけないそうなんです。ダンと一緒に行ってきても良いですか?」
お父様とお母様は顔を見合わせる。
「あそこなら、出てもモンスターはスライムくらいだろう。行っていいよ。ただし、念の為にポーションも持っていくようにね」
私は、うん、と頷く。
「あと、マナポーションを作るのに魔石がいるのですが、一個頂けませんか?」
魔石とは、魔物が体内に持っている石で、その名の通り魔力を含んだ石である。
「一つだけでいいのかい?」
マナポーション制作には興味があるらしく、確認を取ってくる。
「『錬金術初級』によれば、魔石は一回の作成で一個消費するのではなく、ポーションへの変化を促すために必要なのだそうで、溶けてなくなったりはしないので使い回しが可能なのだそうです。だから魔石は一個でいいですが、なるべく品質が良いものが欲しいです」
「我が子ながら、あまりに理解ができている上に、理論的に話すから、五歳の言うこととは思えなくなって来るな」
そう言ってお母様に笑いかけてから、お父様は魔石を取りに倉庫へ行くため中座した。
私は、お父様が持ってきてくださった魔石の中から、鑑定で一番品質が良かったものをひとつ頂いた。
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