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S−アリルシステインの製造方法

Abstract

【課題】短時間で簡便にS−アリルシステインを製造する方法を提供する。
【解決手段】
アリインと、グルタチオンとを溶媒中で共存させる工程を備える、S−アリルシステインの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、S−アリルシステインの製造方法に関する。

従来、ニンニク、タマネギなどのアリウム属の植物には、種々の含硫アミノ酸が含まれることが知られているが、近年、含硫アミノ酸の一種であるS−アリルシステインの有する様々な生理学的作用が注目されている。S−アリルシステインの生理学的作用を利用したものとしては、例えば、腫瘍発生予防剤(例えば、特許文献1を参照)、肝疾患治療剤(例えば、特許文献2を参照)、臓器繊維化抑制剤(例えば、特許文献3を参照)、精子機能低下抑制剤(例えば、特許文献4を参照)などが知られている。

しかしながら、例えば、ニンニクなどに含まれるS−アリルシステインの含有量は、ごく僅かであり、また、その含有量を高める方法についてはほとんど報告がない。具体的には、ニンニクに含まれるS−アリルシステインの含有量を高める方法としては、例えば、生ニンニクをエタノール水溶液に2年間程度浸漬して熟成させることによりS−アリルシステインに代表される含硫アミノ酸を蓄積させる方法や、低温貯蔵した生ニンニクを45℃から65℃に温蔵して含硫アミノ酸を蓄積させる方法(例えば、特許文献5を参照)が挙げられる程度である。

S−アリルシステインの含有量を高める前者の方法は、大きな設備を用い、非常に長期間をかけて行う必要がある。また、後者の方法では、2週間程度で製造することが可能ではあるが、黒ニンニクのように完全熟成状態にはならないため、S−アリルシステインの含有量が高められたニンニク中には、ニンニク特有の臭いが残る。従って、これを飲食品、飼料、医薬品、医薬部外品、健康食品などへ配合する場合には、使用が制限される問題がある。

特許第2828471号公報 特公平5−60447号公報 特開2007−77116号公報 特開2012−17295号公報 特開2005−278635号公報

本発明は、短時間で簡便にS−アリルシステインを製造する方法を提供することを主な目的とする。

本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、意外なことに、アリインとグルタチオンとを溶媒中で共存させるという極めて簡便な方法により、短時間でS−アリルシステインを製造できることを見出した。さらに、本発明者は、アリインを含むアリウム属の植物をアリインの供給源として、アリインとグルタチオンとを溶媒中で共存させることによっても、S−アリルシステインを非常に短時間で簡便に製造できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。

すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. アリインと、グルタチオンとを溶媒中で共存させる工程を備える、S−アリルシステインの製造方法。
項2. 前記工程において、前記アリイン100モルに対して、前記グルタチオンを10モル以上共存させる、項1に記載のS−アリルシステインの製造方法。
項3. 前記アリインとして、内在するアリイナーゼを失活処理した、アリウム属の植物、前記植物の搾汁、及び前記植物の抽出物からなる群から選択された少なくとも1種を用いる、項1または2に記載のS−アリルシステインの製造方法。
項4. 前記失活処理が、熱水加熱処理、蒸気加熱処理、及びマイクロ波加熱処理の少なくとも1種である、項3に記載のS−アリルシステインの製造方法。
項5. 前記アリウム属の植物が、ニンニク、タマネギ、ラッキョウ、ギョウジャニンニク、及びアサツキからなる群から選択された少なくとも1種である、項3または4のいずれかに記載のS−アリルシステインの製造方法。
項6. 前記グルタチオンとして、酵母または酵母エキスを用いる、項1〜5のいずれかに記載のS−アリルシステインの製造方法。
項7. 前記グルタチオンが、還元型である、項1〜6のいずれかに記載のS−アリルシステインの製造方法。

本発明によれば、短時間で簡便にS−アリルシステインを製造する方法を提供することができる。

本発明のS−アリルシステインの製造方法は、アリインと、グルタチオンとを溶媒中で共存させる工程(以下、「反応工程」という表記することがある)を備えることを特徴とする。本発明においては、アリインとグルタチオンとを溶媒中で共存させることにより、アリインとグルタチオンとが反応し、S−アリルシステインが生成する。なお、S−アリルシステインの天然物は、一般に、下記一般式で示される構造を有する。

本発明において、生成物であるS−アリルシステインは、上記構造を有するS−アリルシステインの他、これの光学異性体であってもよいし、各光学異性体の混合物であってもよい。

本発明の製造方法において、原料となるアリインとは、含硫アミノ酸の一種であり、例えば、ニンニク、タマネギなどのアリウム属の植物に広く含まれている。アリインの天然物は、一般に、下記一般式で示される構造を有する。

本発明の製造方法において、原料となるアリインは、上記構造を有するアリインの他、これの光学異性体であってもよいし、各光学異性体の混合物であってもよい。また、本発明においては、化学合成されたアリインを原料として用いてもよいし、アリインを含む素材からのアリインの抽出物、精製物などを原料として用いてもよい。さらに、本発明においては、アリインを含む素材をアリインとして用い、当該素材とグルタチオンとを共存させることによって、当該素材中に含まれるアリインと、グルタチオンとを共存させて反応工程を行ってもよい。

アリインを含む素材としては、特に制限されないが、アリインの含有量が多いことから、好ましくはアリウム属の植物、アリウム属の植物の搾汁、及びアリウム属の植物の抽出物などが挙げられる。なお、アリウム属の植物、アリウム属の植物の搾汁、及びアリウム属の植物の抽出物は、後述の通り、内在するアリイナーゼを失活処理してから用いることが必要である。すなわち、本発明の製造方法において、アリインを含む素材を用いる場合、アリインとして、内在するアリイナーゼを失活処理した、アリウム属の植物、アリウム属の植物の搾汁、アリウム属の植物の抽出物などを用いることが好ましい。アリウム属の植物としては、700種類以上が知られており、アリインを含むものであればいずれを素材として用いてもよい。アリウム属の植物の具体例としては、ニンニク、タマネギ、ギョウジャニンニク、ヒメニラ、ニラ、カンケイニラ、イトラッキョウ、キイイトラッキョウ、ミヤマラッキョウ、ノビル、ヤマラッキョウ、アサツキ、エゾネギ、ヒメエゾネギ、シブツアサツキ、シロウマアサツキ、イズアサツキ、ツリーオニオン、ネギ、ワケギ、 リーキ、ラッキョウ、シマラッキョウ、シャロット、エシャロット、青ネギ、チャイブ、ヤグラネギ、白ネギなどが挙げられる。これらの中でも、アリインなどの含硫アミノ酸を高濃度に含む観点から、ニンニク(Allium sativum L.)、タマネギ(Allium cepa L.)、アサツキ(Allium schoenoprasum L.)、ラッキョウ(Allium chinense G.Don)、ギョウジャニンニク(Allium victorialis subsp. platyphyllum)などが好ましく、ニンニク(Allium sativum L.)がより好ましい。

内在するアリイナーゼを失活処理したアリウム属の植物は、そのまま用いてもよいし、アリインとグルタチオンとを反応させやすくすることなどを目的として、当該植物の切断物、破砕物、磨砕物、粉末などを用いてもよい。アリウム属の植物の切断物、破砕物、磨砕物、粉末は、例えば、当該植物をクラッシャー、ミキサー、フードプロセッサー、パルパーフィッシャーなどを用いて切断、破砕、磨砕、粉末化することによって得られる。また、アリウム属の植物の搾汁は、例えばフィルタープレス、ジューサーミキサーなどを用いて調製することができる。搾汁は、上記磨砕物を、濾布などを用いて濾過することによっても調製することができる。アリウム属の植物の切断物、破砕物、磨砕物、及び搾汁は、希釈物または濃縮物であってもよい。希釈物としては、例えば、当該植物の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁などを水で1〜50倍程度に希釈したものが挙げられる。また、濃縮物としては、例えば、当該植物の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁などを凍結濃縮、減圧濃縮などの手段によって1〜100倍に濃縮したものなどが挙げられる。アリウム属の植物の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁は、冷凍したものであってもよい。アリウム属の植物の抽出物は、前述のアリウム属の植物や当該切断物等を、例えば水などの溶媒により抽出することにより得ることができる。本発明において、アリインを含む素材は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。

上記のとおり、本発明の製造方法において、アリインを含む素材は、内在するアリイナーゼを失活処理してから用いる必要がある。アリウム属の植物などの素材中には、アリインと共に、アリインをアリシン(臭気成分)に変換する酵素(アリナーゼ)が含まれているものがある。アリインを含む素材をアリインとして用いる場合において、アリインがアリシンに変換されると、原料となるアリインの量が減少するため、目的とするS−アリルシステインの生成量が少なくなってしまう。このため、本発明においては、内在するアリイナーゼに失活処理を施した素材をアリインの供給源として用いることにより、素材中に含まれる酵素を失活させ、アリインの減少を抑制することが可能となる。また、アリシンの生成を抑制することにより、S−アリルシステインを含む反応混合物等におけるアリシン由来の臭いの発生を抑制することが可能となる。

アリインを含む素材に内在するアリイナーゼを失活処理する方法は、上記の酵素を失活させることができれば特に限定されないが、例えば、当該素材の内部温度を60℃以上に高められる方法が挙げられる。失活処理方法の具体例としては、熱水加熱処理、蒸気加熱処理、マイクロ波加熱処理などが挙げられる。また、酸処理やアルカリ処理により内在するアリイナーゼを失活処理する方法も挙げられる。

本発明の製造方法において、原料となるグルタチオンとは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からなるトリペプチドである。グルタチオンは、高い抗酸化性を有することが知られる成分であり、食品や生体内に多量に存在する。グルタチオンには還元型と、酸化型(還元型グルタチオン2分子がジスルフィド結合したもの)とがある。グルタチオンは、生体内では専ら還元型として存在し、過酸化物や活性酸素種の還元、細胞の解毒などの役割を担っている。

本発明においては、化学合成されたグルタチオンを原料として用いてもよいし、グルタチオンを含む素材からのグルタチオンの抽出物、精製物などを原料として用いてもよい。さらに、本発明においては、グルタチオンを含む素材をグルタチオンとして用い、当該素材とアリインとを共存させることによって、当該素材中に含まれるグルタチオンと、アリインとを共存させて反応工程を行ってもよい。原料として用いるグルタチオンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。

グルタチオンの抽出物、精製物としては、例えば、一般的に試薬または医薬成分として販売されているグルタチオンを用いることができる。また、食品として市販されているグルタチオン含有食品素材を用いることもできる。市販されているグルタチオン含有食品素材の具体例としては、興人ライフサイエンス製の酵母エキス「ハイチオンエキスYH−8」、「ハイチオンエキスYH−15」、「ハイチオンエキスYH−D12」、「ハイチオンエキスYH−D18」、「酵母エキス ヌクレアミン」、「アロマイルド」、「アジトップ」、「アジレックス」、「アジパルスBF」、「アジパルスSS」、「アジパルスKF」、協和発酵バイオ「グルタイーストエキスN」などが挙げられる。これらの市販されたグルタチオン含有食品素材の中でも、興人ライフサイエンス製の酵母エキス「ハイチオンエキスYH−15」がグルタチオン(還元型)の含有量が高く、アリインをS−アリルシステインに変換する能力が高いため好ましい。

グルタチオンを含む素材としては、特に制限されないが、グルタチオンの含有量が多いことから、好ましくは牛レバー、豚バラ肉、牛乳、カキ、イワシ、マダラ、シャケ、赤貝、トマト、ホウレンソウ、ブロッコリー、エンドウマメ、芽キャベツ、生キャベツ、キウイフルーツ、アボカド、米胚芽、小麦粉、パン酵母、酵母、酵母エキスなどが挙げられる。これらの中でも、グルタチオンを高濃度に含むという観点から、酵母または酵母エキスが好ましい。

グルタチオンを含む素材は、そのまま用いてもよいし、グルタチオンとアリインとを反応させやすくすることなどを目的として、当該素材の切断物、破砕物、磨砕物、粉末などを用いてもよい。グルタチオンを含む素材の切断物、破砕物、磨砕物、粉末は、例えば、当該素材をクラッシャー、ミキサー、フードプロセッサー、パルパーフィッシャーなどを用いて切断、破砕、磨砕、粉末化することによって得られる。また、グルタチオンを含む素材の搾汁は、例えばフィルタープレス、ジューサーミキサーなどを用いて調製することができる。搾汁は、上記磨砕物を、濾布などを用いて濾過することによっても調製することができる。グルタチオンを含む素材の切断物、破砕物、磨砕物、及び搾汁は、希釈物または濃縮物であってもよい。希釈物としては、例えば、当該植物の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁などを水で1〜50倍程度に希釈したものが挙げられる。また、濃縮物としては、例えば、当該素材の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁などを凍結濃縮、減圧濃縮などの手段によって1〜100倍に濃縮したものなどが挙げられる。グルタチオンを含む素材の切断物、破砕物、磨砕物、搾汁は、冷凍したものであってもよい。

グルタチオンとしては、還元型及び酸化型のいずれを用いてもよいが、アリインとの反応性が高いため、還元型が好ましい。なお、アリインをS−アリルシステインに変換する能力を高めるために、グルタチオン(酸化型)を還元すること、酸化されたグルタチオンを再び還元してグルタチオン(還元型)とすることなどを目的として、還元剤を併用してもよい。還元剤としては、特に制限されないが、例えばメルカプトエタノール、ナトリウムボロハイドライド、グルタチオンレダクターゼなどが挙げられる。

本発明の製造方法において、アリインとグルタチオンとの割合は、S−アリルシステインが生成すれば特に制限されないが、短時間で簡便にS−アリルシステインを生成する観点からは、アリイン100モルに対して、グルタチオンを好ましくは10モル以上、より好ましくは50〜1000モル程度、さらに好ましくは100〜1000モル程度とする。また、本発明において、上記のアリインを含む素材や、グルタチオンを含む素材などを用いる場合には、これらの使用量は、アリイン及びグルタチオンの割合が好ましくはこのような範囲となるようにして、適宜設定すればよい。

本発明の製造方法においては、アリインと、グルタチオンとを溶媒中で共存させる反応工程を備えることにより、アリインとグルタチオンとが反応して、S−アリルシステインが生成する。本発明においては、アリインと、グルタチオンとが反応できるように溶媒中で共存させることができればよい。例えば、アリインとグルタチオンとを溶媒中で均一に混合した後、これらの反応を攪拌させながら反応させてもよいし、静置させて反応させてもよい。攪拌方法としては、特に制限されず、例えば、攪拌羽、ミキサー、スターラーなどを用いて攪拌する方法が挙げられる。

溶媒としては、アリインとグルタチオンとの反応を阻害しなければ、特に制限されないが、好ましくは水、エタノールなどを使用することができる。

アリインとグルタチオンとを反応に供する際の溶媒中におけるアリインの濃度としては、アリインとグルタチオンとの反応が進行すれば特に制限されないが、好ましくは0.01〜25,000mg/L程度、より好ましくは0.1〜2,500mg/L程度が挙げられる。同様の観点から、反応に供する際の溶媒中におけるグルタチオンの濃度としては、好ましくは0.0017〜87,000mg/L程度、より好ましくは0.017〜43,000mg/L程度が挙げられる。また、本発明において、上記のアリインを含む素材、グルタチオンを含む素材などを用いる場合には、これらの使用量は、アリイン及びグルタチオンの濃度が好ましくはこのような範囲となるようにして、適宜設定すればよい。

本発明において、反応工程の温度としては、アリインとグルタチオンとが反応すれば特に制限されないが、より短時間で簡便にS−アリルシステインを製造する観点からは、好ましくは0℃〜150℃程度、より好ましくは30℃〜100℃程度、さらに好ましくは50℃〜90℃程度が挙げられる。また、反応工程における反応液のpHとしては、好ましくはpH2〜12程度、より好ましくはpH2〜8が挙げられる。反応工程における反応時間は、使用する原料の種類、量などによっても異なるが、通常1〜48時間程度の範囲に設定することが好ましい。

反応工程の後、反応混合物から、濾過、遠心分離、濃縮、抽出等の通常の単離操作によってS−アリルシステインを分離する単離工程を行うことができる。さらに、S−アリルシステインの純度を高めるために、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作によって、S−アリルシステインを精製する精製工程を行うことができる。また、反応混合物を、フリーズドライ、スプレードライなどの方法によって乾燥させて固形物(粉末、顆粒など)とすることもできる。本発明の製造方法によって得られるS−アリルシステインの精製物や、S−アリルシステインを含む反応混合物は、医薬品、医薬部外品、飲食品、化粧品、飼料、健康食品などとして好適に使用することができる。

以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、実施例及び比較例中の測定方法は次の通りである。

(HPLC分析条件)
カラム:CapcellPakSCXUGcolumn(φ4.6×250mm、資生堂製)
カラム温度:45℃
移動相:10mM KH2PO4水溶液(pH2.5)
流速:1mL/min
測定波長:210nm

(実施例1)
アリイン(フナコシ株式会社製)3.5mgと還元型グルタチオン(和光純薬工業株式会社)61.5mgを水10mLに溶解してプラスチック容器に入れ、密封して80℃に保温して24時間反応させた。反応終了後、この溶液を、LC/TOF−MS(ブルカー・ダルトニクス製microTOF2−kp)を用いて、測定したところ、[M+H]+として162.0583の質量が検出され、S−アリルシステインが生成していることが確認された。また、水溶液中のS−アリルシステインの含有量をHPLCで分析したところ、0.25mg/mlであった。さらに、この水溶液から、分取HPLCを用いて、S−アリルシステインを精製したところ、白い粉末が2.0mg得られ、その純度をHPLCで分析したところ、98%であった。

(実施例2)
ニンニク(品種名:福地ホワイト)1kgの芯を除去した後、約2〜3cmの鱗片に分け、マイクロ波加熱装置にて加熱処理(周波数:2.45GHz、出力:2000W、照射時間:2分間)を施し、内在するアリイナーゼを失活させた。その後、純水1Lを添加して石臼式粉砕機(増幸産業製、商品名:スーパーマスコロイダー)にて摩砕し、ニンニクペーストを得た。そのペーストに対して、500gの酵母エキス(興人ライフサイエンス製、商品名:ハイチオンエキスYH−15)を添加して撹拌した後、65℃に保温して48時間反応させた。反応終了後、そのまま凍結乾燥・粉砕して粉末を得た。粉末中のS−アリルシステインの含有量をHPLCで分析したところ、0.80g/100gであった。

(比較例1)
マイクロ波加熱装置によるアリイナーゼの失活処理を行わなかったこと以外は、実施例3と同様の操作にて粉末を得た。粉末中のS−アリルシステインの含有量をHPLCで分析したところ、S−アリルシステイン含有量は0.005g/100gであった。

(比較例2)
酵母エキス(興人ライフサイエンス製、商品名:ハイチオンエキスYH−15)を添加しなかったこと以外は、実施例2と同様の操作にて粉末を得た。粉末中のS−アリルシステインの含有量をHPLCで分析したところ、S−アリルシステイン含有量は0.02g/100gであった。

(実施例3)
ギョウジャニンニク1kgを、マイクロ波加熱装置にて加熱処理(周波数:2.45GHz、出力:2000W、照射時間:2分間)を施し、内在するアリイナーゼを失活させた。その後、包丁で5cm程度に切断した後、純水1Lを添加して石臼式粉砕機(増幸産業製、商品名:スーパーマスコロイダー)にて摩砕しギョウジャニンニクペーストを得た。そのペーストに対して、500gの酵母エキス(興人ライフサイエンス製、商品名:ハイチオンエキスYH−8)を添加して撹拌した後、65℃に保温して48時間反応させた。反応終了後、そのまま凍結乾燥・粉砕して粉末を得た。粉末中のS−アリルシステインの含有量をHPLCで分析したところ、0.36g/100gであった。

アリインにグルタチオンを作用させた実施例1、アリイナーゼを失活させたニンニクまたはギョウジャニンニクにグルタチオン含有食品素材を作用させた実施例2及び3においては、生成物中のS−アリルシステイン含有量が多かった。一方、アリイナーゼを失活させていないニンニクを用いた比較例1、及びグルタチオンを添加しなかった比較例2では、S−アリルシステインの含有量が実施例1〜3と比較して1/10以下と非常に少なかった。

Claims (7)
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  1. アリインと、グルタチオンとを溶媒中で共存させる工程を備える、S−アリルシステインの製造方法。
  2. 前記工程において、前記アリイン100モルに対して、前記グルタチオンを10モル以上共存させる、請求項1に記載のS−アリルシステインの製造方法。
  3. 前記アリインとして、内在するアリイナーゼを失活処理した、アリウム属の植物、前記植物の搾汁、及び前記植物の抽出物からなる群から選択された少なくとも1種を用いる、請求項1または2に記載のS−アリルシステインの製造方法。
  4. 前記失活処理が、熱水加熱処理、蒸気加熱処理、及びマイクロ波加熱処理の少なくとも1種である、請求項3に記載のS−アリルシステインの製造方法。
  5. 前記アリウム属の植物が、ニンニク、タマネギ、ラッキョウ、ギョウジャニンニク、及びアサツキからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項3または4のいずれかに記載のS−アリルシステインの製造方法。
  6. 前記グルタチオンとして、酵母または酵母エキスを用いる、請求項1〜5のいずれかに記載のS−アリルシステインの製造方法。
  7. 前記グルタチオンが、還元型である、請求項1〜6のいずれかに記載のS−アリルシステインの製造方法。