新立憲民主発足 埋没している暇はない

2020年9月16日 08時04分
 もう一つの政権選択肢となるか。野党の立憲民主党と国民民主党が合流し、新しい「立憲民主党」が発足した。首相交代の陰に埋没していられない。与党に代わる政権構想を早急に示すべきだ。
 野党第一党と二党が解散、合流してできた新党だが、党名も代表も変わらない。何が違うのか分かりにくく、国民の期待を広く集めての船出とも言い難い。何より、国民民主党所属議員の約三分の一が離反した事実は重い。合流の成果を示すには、枝野幸男代表が言う通り「これからが本当の戦い」となるだろう。
 新党の所属議員は衆参合わせて百五十人。うち衆院の百七人は二〇〇九年の政権交代前の民主党の百十五人に迫る。ただ、当時の民主党は、参院で自民党を上回る議席を持ち与野党のねじれを作っていた。次期衆院選で政権交代が実現できる位置にあると考えるのは早計だ。その先の先までにらんで地道に支持を広げるしかない。
 年内にも想定される衆院選で、新党の候補者が決まっている小選挙区は七割ほど。候補者が競合する選挙区も残る。離反組の一部が旗揚げした新・国民民主党や共産党との調整も急務だ。
 きょう発足する菅政権との対立軸をどう打ち出すか。新党の綱領は「立憲主義」「国民が主役」「多様性」などのキーワードを掲げ、民主主義の徹底で国家や組織より個人を尊重する姿勢を強調した。基本政策では国際協調、公正な配分、原発ゼロなどが目玉だ。
 安倍路線を継承し、国家優先や自己責任重視の政策を進めようとしている政権与党との対決姿勢は鮮明で、枝野氏は消費税の一時的な減税や生活困窮者への給付金支給にも言及している。重要なのは、財源など具体的な肉付けと国民への効果的なアピールだ。
 新党が国民に開かれた体質を持っているかも気になる。国会議員のみで行った代表選は自民党総裁選同様に閉鎖的だと批判を招いた。新党の役員人事にも新味がなく、枝野氏の独断がなかったとはいえない。党内議論の活性化と融和の両立は、難しいが重い課題だ。
 内部抗争の末に離合集散を繰り返してきた旧民主党・民進党勢力が「選挙互助会」として元のさやに戻っただけ、と見られてはこの先も到底支持は広がるまい。民主党政権崩壊後、過渡期を経て、ようやく時代の要請に応える野党第一党が誕生したと見られるか否か。野党再編の正念場である。

関連キーワード

PR情報