第1は、異物が侵入してきたら、皮膚や粘膜とそこに存在する殺菌物資が阻止したり、死滅させたりする「物理的・化学的バリア」だ。
そこを突破してきた異物には、白血球の一種の「マクロファージ」やリンパ球の一種の「NK(ナチュラル・キラー)細胞」が立ち向かう。これが第2のバリアで、第1と第2を合わせて「自然免疫」と呼ぶ。
自然免疫は、あらゆる異物に対して直ちに反応する。
2つのバリアを潜り抜けてきた異物を攻撃するのが、第3のバリアである「獲得免疫(適応免疫)」だ。
これには、リンパ球の一種の「B細胞」が「抗体」をつくって攻撃する「体液性免疫」と、リンパ球の一種の「キラーT細胞」が攻撃する「細胞性免疫」がある。
これらの獲得免疫は特定の病原体などに対して強い攻撃力を持つが、発動するまでに2日~1週間の時間がかかる。また1度経験した病原体は記憶しており、2度目の侵入には素早く反応する。この原理を応用したのがワクチンだ。
つまり、NK細胞・抗体・キラーT細胞などを合わせたものが「総合的な免疫力=体の抵抗力」なのだ。
そして最近の研究で、NK細胞やキラーT細胞は学習することがわかってきた。
普通の風邪の原因になるコロナウイルスに過去に感染していると、これらの細胞は新型コロナウイルスに対しても力を発揮する。これは「交差免疫」と呼ばれる。
ただ、抗体には、(1)ウイルスを不活化し、細胞への感染を防ぐ「善玉抗体」、(2)ウイルスの感染を促進する「悪玉抗体」、(3)不活化も感染促進もしない「役なし抗体」があるから注意が必要だ。
抗体が増えても、(2)の悪玉抗体が増えた場合は症状が悪化し、「抗体依存性感染増強現象(ADE)」になることもある。
免疫力の強さは人により異なり、同じ人でも体調によって異なる。新型コロナウイルスに対しても自然免疫だけで排除できる人もいるし、獲得免疫が出動しても排除できず、重篤な肺炎などになる人も、少数だがいる。
自然免疫は体調がよいとフルに働くと、宮坂教授は言う。(1)早起きして朝日を浴び、体内時計を狂わせない、(2)ラジオ体操やウオーキングで血流を上げる、(3)ストレスをできる限りなくす、などが有効だ。
スウェーデンは「達成」を発表
日本政府、自治体も調査急げ
目を世界に転ずると、アメリカ、ブラジル、イタリア、ルクセンブルク、スウェーデンなど多くの国々で、1日当たりの死者数がある時期を境に急減していることを確認できる(死者数や急減の時期は国によって異なる)。
奥村教授らの考えによれば、これらの国々では集団免疫が達成されている可能性が大きい。